デッサンとデザイン
デッサンと言われると鉛筆で物を写実的に描くことを想像すると思います。
私も大学を受験するのに、予備校に毎日通い必死にデッサンを学んだのを思い出します。
当時は、絵が上手いことはクリエイターとして必要不可欠なこと、やらなくてはいけないこと、という程度の考え方でした。
美大に進学してからもデッサンの必要性は都度言われてきましたが、世の中にはデッサンが得意でなくてもデザインが上手い人は沢山いるのになぁ。、、と、デッサンの必要性や本質的な意味合いがしっくりきていませんでした。
今回は、デッサンがデザインに与えるメリットを書いていきたいと思います。
1.正確な情報を捉えるスキルが身につく
デザイナーにとって、情報はとても大事な要素です。
どんなに美しいレイアウトでも、どんなに魅力的な写真を配置しても、載せる情報が少しでも違っていたら、それは商品としては成立しません。
視覚的な情報も同じです。例えば、着物には右の衽(おくみ)を体に付けてから左の衽をそれに重ねるという日本の文化があります。死者に死に装束を着せる際は、反対に「左前」(ひだりまえ)に着せます。
もし着物の素材を使った広告を作る際に、この重ね方が正しくない素材を使ってしまったとしたら、大きな事故になってしまいますよね。
ここで大切なのは、その着物の着付けについて正しい情報なのかをしっかりと確認する作業になります。
これはデッサンをする際も同じで、今描いてるものは実物と同じように見えているのか、各モチーフの情報を正しく表現できているのか、見た人に伝わるのかという点を確認しながら進めることが求められます。
絵作りや表現の多様性は別にして、デッサンで大事な「正確な形・情報を捉えて表現する」という部分はデザインにおいてもとても大切な要素になっているのです。
2.表現方法を考える力が身につく
デッサンにおいて、正しい情報を伝えるためにはどう表現するのが最も効果的なのかを考える力が必要になります。単にたくさん描いたから上手くなるというわけではないです。
自分のクセ・物の見方・表現のスキルなどを検討し、伝えたいことを正確に・より魅力的に伝える技術を熟考することで良いデッサンが描けます。
そのために、一つのものを様々な角度から捉えて整理して画面に描いていくことが大切になります。
デザインの仕事をしている時に、アイデアを絞り出さなくてはいけない状況に立たされた際に、このどう表現すれば正しい情報を魅力的に伝えられるかの考え方の重要性に気づかされました。
単に雰囲気が良くてもダメです。単に正しい情報扱っているだけではダメです。どちらも合わせて魅力的になっていなければデザインは売れません。その難しい兼ね合いを形にできるから私たちはプロとして仕事ができていくのです。
全ての人とは言いませんが、デッサンが上手な人は、デザインが上手くなるのも早いと思います。
3.丁寧に物を見る癖がつく
1.2のポイントを確実に身につける際に、必ず必要になってくるのが物を丁寧に見ることです。
皆さんは、魚の鱗がどうなっているか知っていますか?卵のパックがどんな形か、何個入っているか、餃子の焦げ目はどうなっているのが美味しそうなのかわかりますか?
決して大袈裟ではなく、デザイナーをしているとこういった普段注力して見ない情報に対して、目を向けないといけない場面が出てくることがあります。
それらの要素は実際には使わないかもしれません、しかし、こうしたところまで意識が回る人と全く考えもしない人では、アイデアの幅にわずかに差がで出てしまうかもしれません。
たった一つの気づきでプレゼンが取れるか取れないか別れる可能性があるのであれば、そこまで考えてみた方が良いものができる確率は上がると思います。
いかがでしたか。
デッサンは描いたことがないけれど、デザインがすごく上手な人はたくさんいます。実際に私の周りにもたくさんいました。
その中でも、デッサンを学ぶことはプラスの要素が大きいと私は思います。大事なのは、デッサンが上手いかということではなく、デッサンにおいての考え方やトライの仕方がデザインにも良い効果があるということです。
ぜひ、勉強やスキルアップの一環としてデッサンにトライしてみてはいかがでしょうか。