New Album『CLUB33』壮絶解説〜Gals〜

『CLUB33』壮絶解説第7回目でございます。

まだまだ続く楽曲解説今回はラップナンバー「Gals」です。


【ルシファー教授による楽曲解説】

MCルシファー参上の、ラップをフィーチャーしたナンバーでございます。

セカンドに収録の『存在しない』は、かみむらくんのドラムをサンプリングしつつも、構築はほぼ打ち込み上でやっておりました。
続くファンティミューンに収録の『世に憚る』はまさかのアコースティックでベースもえんどうさんでしたよね。
双方フックはちゃんとあるけれど、いわゆる歌メロのある「サビ」とはまた違う雰囲気だったりもしたので、ラップがメインの曲=THE NOSTRADAMNZ的にはかなり変化球、みたいなポジションに従来はあったかと思います。
例外は、いつだかのワンマンの入場特典だった『志』というCD-R作品に『ヴィルヘイムに告ぐ』のシングルに入ってたカラオケにそのまんまラップを乗せた『神殺しラップ』という曲(そんな名前にした気が)が、ちゃんとTHE NOSTRADAMNZのデフォルト編成+ラップという構造にはなっていました。
しかし、今作の『Gals』は、初めてちゃんとサビがあるタイプの、且つラップで攻める曲になったと思います。

作曲にあたってのサウンドやフレーズ的には、もうこれは完全に最初からKORNの3rdアルバムのリードトラックである『freak on a leash』を意識しております。
さらにその3rdアルバムのタイトルが『Follow the Leader』で、たぶん"俺たちに続け!"みたいな意味なので、末裔である我々としては、はい!続きます!みたいなノリだと思ってください。
テンポやノリが結構違うのでわかりづらいかもしれませんが、展開やエッセンス、例えば不穏な響きのギターだったり、急に珍しくジャズっぽくなったり、中間部で半音階を使ったり、みたいな細かい部分で、綺麗に丁寧にオマージュしています。

MVもめちゃくちゃカッコいいですよね。

こうした、ロックとヒップホップのエッセンスが混ざった音楽は、当時「ミクスチャー」「ニューメタル」「ラップメタル」「モダンヘヴィ」などと呼ばれ、90年代後半から00年代にかけて、洋邦問わず一大ムーブメントを築きあげておりました。
立役者はKORNとレイジアゲインストザマシーンだと言われることが多いです。

が、そのへんはぼくら世代よりちょっと歳上の方々がリアルタイムで、ぼくらはやや遅れて後追いで聴いてたイメージがあります。
リアルタイム感があったのは、やや後発のリンプビズキットやリンキンパークでした。

『Gals』についても、リンプのブレークスタッフに関してはKORNと共にメンバー間でのイメージ共有でも例として名前が挙がってましたね。
ただ、ラップによるフックではなく、歌モノのサビが来る、という構成はどちらかというとリンキンパーク的だよなあとも思います。

流行していた当時は、先発のKORNやレイジアゲインストザマシーンはホンモノで、後発のリンキンやリンプはセルアウトしたニセモノ、みたいな語られ方をされていたし、古いもの=ホンモノと考えていた中高生の頃のぼくもいましたが、今から考えるとくっだらねえ話ですよね。
どれも素晴らしくかっこいいし、メロコアやヴィジュアル系と同じくらい、ぼくの青春を彩ってくれた音楽だと思います。

もちろん国内でもそうした「ミクスチャー系」のブームはあって、ライムスターやキングギドラ、雷やブッダブランドらが築き、nitro microphone under groundやOzrosaurusらに引き継がれ、主にKICK THE CAN CREWとリップスライムがJPOPシーンのど真ん中に切り込んでいった、いわゆる「日本語ラップ」の歴史と呼応・並行するように、山嵐やRIZE、そしてDragon Ashが国産バンドとしては大変な話題になっておりました。

ちなみに、Dragon Ashのベーシストであった馬場育三さんは、かつてVIRUSというバンドで、かのエックス率いるエクスタシーサミットに出られていたりして、実はV系とも歴史が繋がっていたりしたり。

当時こんなバキバキのスラップスタイルでシーンにいたと思うと、にわかに信じられない個性とセンスですよね。さらにちなむと、上記の映像でギターを弾いているのは、後にhide with spread beaverに参加するkiyoshiさんです。

そして、そのhideさんが温めていたプロジェクトでzilchというバンドがありまして、『3・2・1』というアルバムが、割と日本のロック史上最大級の非常なる惜しさで、hideさんが亡くなってから1998年にリリースされたんですが、これが録音されたのはリリースより2年も前の1996年です。
しかも録音開始は1月と言われています。

KORNのデビューが1994年で、ファーストの時点で突然変異的にミクスチャーではあるのですが、2000年代以降に繋がるような、いわゆる「モダンヘヴィ」的な音像を確立したのは冒頭で紹介した1998年の3rdアルバムであって、同じくそういう音像の立役者のひとつであるマリリンマンソンの3部作の1枚目『アンチクライストスーパースター』も1996年10月リリースです。
ロック後進国とされる我が国日本出身の人間発でこれをやってた人がいるってのは、めちゃくちゃ凄いことなんだよって知って欲しいです。

1996年の、日本のシングルチャートを見ても、当時の基準からしてzilchのアルバムのヤバさがおわかりかと思います。

この頃の邦楽、どれもとても好きだけど、zilchが世界基準レベルで先進的だったことは明白です。

『Gals』の内容に話を戻します。
まず冒頭の「many tokyo gals go round the out side〜」というくだりは、これまた有名なエミネムさんの名声を世に轟かせたこれが元ネタです。

この曲、ぼくは中学生のときにメタルばかり流れる「ROCK DRIVE」という深夜ラジオをいつも頑張って夜更かしして聴いてたんですが、その前後に偶然流れてきて初めて聴きました。
メタル少年だったので、メタルしか聴いてない時期だったけど、ラップといえば だよねー とか、ポンキッキで流れたスチャダラパーくらいしか知らなかったぼくは、こんな音楽あるんだなぁ!と思ったのを覚えています。

高校に上がると周囲はヒップホップが好きな人が多くて、池田くんやMSSサウンドシステムくんからエミネムやドクタードレーやDMX、あとはRUN DMCなどの CDを借りてとりあえず聴いてみました。
正直そんなにピンと来ず、ヒップホップではなくパンクやハードコア、たまにニューウェーブのレコードを買い集めていて、色々知っていくうちにエミネムの元ネタを発見しました。

これは、かのセックス・ピストルズの仕掛け人として、そしてヴィヴィアンウエストウッドの元旦那として有名な、マルコムマクラレンさんの曲です。
なんと彼は、パンクのあと早々にヒップホップに目をつけてレコードを出していたのです。
すごいですよね。流行を嗅ぎつけるマルコムの嗅覚の早さもすごいんですけど、自分たちの曲の解説で、ぐるっとヒップホップ、ミクスチャー、V系、パンクを巡らせて一つの文脈に収斂させてしまうTHE NOSTRADAMNZがすごいことに誰か早く気づいて。。。

置いといて、エミネムは「two trailer park girls go round the outside,round out side〜」と言ってます。
直訳すると、トレーラーガールズが2人外をぐるぐる走り回ってるぞ!みたいな意味だと思います。
これはアメリカのスラムで、トレーラーハウスといって、トラックのトレーラーに住んじゃう文化があることが背景にあります。
それこそエミネム主演の半自伝映画『8mile』で、主人公が住んでるああいう家です。

マルコムは「first baffalo gals go round the outside,round the outside〜」と言ってます。
この最初のfirstはtwo、three、fourと増えていきます。
バッファローとは、牛ではなくどうやらそういう地名があるようで、バッファローという町の女の子がどんどん外に出てぐるぐる回ってくわけです。
意味がわからないですよね。

そしてMCルシファーは、東京のギャルたちが外をたくさんぐるぐる回ってる、と言ってます。
ここでいうギャル、というのはいわゆる渋谷駅周辺にいたりするカルチャーとしてのギャルではなく、未熟な女性全般のことを指してます。

恐れずに言うと、この曲はとある女性をディスってます。
現時点では、もう会うこともないでしょうからどうでもいいんですけど、本当に嫌いだなこいつ、と思ったんです。
決して女性だから嫌い、ということでは無いんですが、自ら女性性を盾にとりつつ、あることないこと、というか百歩譲って「まあそう捉えてしまう気持ちが1ミリもわからないわけではないが、」程度としても、事実としては全くないことを触れ回っては、気に入らんことを捻じ曲げようとした方がいらしたんですよ身近に。

そして、ぼくを本当に優しい人だと勘違いしたんだと思うんですが、「ルシファーさん、どうしてもあれやりたくないんですが、なんとかなりませんかお願いします泣」とか言ってきまして、でもどう考えてもおかしな話だったので、それはあなたがやらなければ意味がないことですよ、がんばりましょうね、と説明したんですけど、「えー!やだやだやだァ〜!」とか抜かし始めたんですよ。

信じがたいことに、これはビジネスの場での話です。

そもそもそれを彼女がやろうがやるまいが、僕にはひとつもメリットもデメリットもないのでマジクソどうでも良かったんですが、その態度や物言いになんか非常にバカにされた気分がしたんです。
最近よく言う リスペクトが無えな ということを思いました。
リスペクトどころか全くぼくやご自身の立場や世の中を誤解しているというか、おそらく可愛くゴネればどうにかしてくれるとか思ったんでしょうね。
ぼくは、そんな稚拙極まりない戦術にはひとっっつも引っ掛からないです。
なんか、可愛くお願いしたら動いてくれるんじゃないかみたいに思われるのって心外オブ心外ですよ。
元々わいきゃいして酔っ払ってたりするときは別ですよ。
だがな、めちゃくちゃ真剣に向き合うべき場所で、そんな物の頼み方って、絶対おかしいですよ。
なぜ、これこれこういう事情があるので、というような説明らしなかったのでしょうかね。
おそらく理由を考えもせずになんとなくイヤだったんでしょうけど、だったら帰れば?という話です。
内心どう思おうが勝手だと思いますが、ぼくにどうにかしてくれってのは受け付けないです。

ぼくが思うリスペクトというのは、何も心底尊敬して崇め奉れ!なんて意味じゃないんです。
俺を特別に尊重しろ!!ということでは全くない。

単に、最低限のTPOを踏まえて普通に接してくださいね、というだけです。

こう書くと、そんなことで一曲作っちゃう上にこんな長文書いちゃうなんて心狭っ!!wwwwきもっwwww
と思われてしまうかもしれません。
おっしゃる通りです。
でもその心の狭さは、ぼくの才能でもあると思います。

他方で、えー!何その女サイッテー!!と共感してくださる方もいらっしゃるかもしれません。
その優しい気持ちは嬉しいのですが、ぼくは共感なんて求めていないし、悪口陰口に同調することで仲間意識を持とうとしてくる奴とは親しくしたくありません。
むしろそれって、そのサイッテーと同じことしてますよね。

つまり、普通に接することって、ぼくはめちゃくちゃ難しいことだとも思うんです。
しっかりと相手を感情のある1人の人間だと想定しながら、言葉を選んだり、言い方を選んだり、表情をつくったりって、結構な知力とカロリーを使いますよね。
だからこそ「親しき中にも礼儀あり」とはよく言ったもので、普段接してる相手には慣れてきてしまって、つまり人として扱うことに疲れてしまって、つい傷つけるような物言いをしがちなんですよね。
同居してる親子や兄弟や夫婦での喧嘩って、だいたいそんなんだと思います。
長いツアー後にバンドが解散しがちなのも、基本的に同じ現象のように思います。
相手が誰であろうと、長い期間四六時中ずっと一緒にいると、コミュニケーションが粗雑になってしまいやすいてす。

逆を言えば、あなたはこのぼくの何のつもりなんですか?みたいな態度の人って、多分最初からぼくのことを雑に扱っていい相手だと認識してるんですよね。
そんな人、嫌いにならないはずがないです。

でも、愛してる、と同じくらい、大嫌いのエネルギーって大きいので、例えば同じことをやり返すとか、殺しちゃうとか、ネガティブな方法ではなく、丁寧に作品にするという表現方法があることは、ぼくはポジティブで建設的だと思っています。

あと、「ハラソウぎゃあてい」と「本当はこことここが実は韻を踏んでいるんだ気づかなかっただろ!!!!みたいなことも書きたかったのですが、

以上でございます。

-追記-
MSSサウンドシステムくんが「ギターのフレーズがウルトラQっぽい」と気づいてくれたのさ流石オブ流石です。

このバックで流れてるのがウルトラQのテーマ。

その元ネタはこちら。

これを割と耳にしたことのある方が多いのではないかと思います。
よくテレビとかで使われますよね。
ギターはこっちを意識してます。
珍奇なフレーバーになりますよね。


【サイコパス燕瞳さんのミックス解説】
この曲の制作にあたって、冒頭部分の声に女性の声が欲しいねって話がでて(誰発信だったかな、)
いつもならエフェクトとかでメンバーの声を使うんだけども今回はなんかリアルな女性の声のほうが良さそうだったので、
英語が喋れる知り合いのボーカリストにお願いしました。

よく知ってる人がベースを弾いてるバンドなんだけど、APPLE MEETS BAZOOKAのVoの小松美生さんが心よく引き受けてくれて、ボイスサンプルを送ってくれました。
にくったらしくという無茶ぶりに答えてくれて感謝です。

こういうバンドをやられています。オルタナエモインディー系。

昨今ではYoutubeでソロのチャンネルを立ち上げてこちらの動画がバズったのも記憶にあたらしいですね。よかったらチャンネル登録ならびに高評価してあげてください。


ミックスのお話この曲のギター特にラップ部に関してはルシの原案をほぼそのまま(キーとか変えちゃったけど)弾き直しています。
歌の部分とかイントロ、中間部に関しては、実は一部ルシがギターを弾いていたりします。上手だね。

個人的にドロップチューンのギターとかあまり弾かない&ルシがデータ送って来てくれたのでそのまま使わせてもらってます。
僕はただその無骨なギターに華やかさを添えただけであります。

あと、不穏な音階でホーン系の音を入れ込んでいて、アングラな雰囲気を演出できたなーとこれは自画自賛しています。
シンセベースもいい感じですね。

ミックスで言うと、この曲もドラムのスネアがコーンっていい感じですね。
中間部は声がいろんな方向から違う声質で聞こえてきたり、この手の楽曲は遊べるからミックスが楽しい。


【本文に対しての上邑くんの一言解説】

根本さんがこの曲を持ってきた時には今更かよこの中国産飛影がって思いました。20年くらい前に流行りましたよね。こういうの。
我々THE NOSTRADAMNZは流行りに疎く最新のものをキャッチする能力が乏しいので基本遅れてるんですわな。どうせ、3年後に完全感覚ドリーマーみたいな曲、20年後にうっせぇわみたいな曲を知ってやり始めることでしょう。
それまで元気にバンドをやっていきたいものです。
私自身10代の頃は「うわーまだあのおっさんらやってるわー痛いわー」なんて揶揄してた若者だったのですがいつの間にやら見事に夢から醒めないおっさんの仲間入りを果たしました。まだまだバンドも5年目。新人の気持ちで頑張ります。あんましフレッシュじゃないですが。

この5、6年間、関係者も5.6人ほど変わりました。皆さんTHE NOSTRADAMNZを応援したい!と熱い気持ちを持って参加してくれましたが時間を守れないメンバー、ライブ前に酒が無いと泣き出すメンバー、自分で散らかしといて楽屋が汚れてると怒り狂ってるメンバーの対応に疲れ果て生理が止まった物販スタッフ、発狂して自宅に火をつけたヘアメイク、ノイローゼになってゲイになったあげく彼氏に全財産持ち逃げされ東武東上線に身を投げたローディ。

…今となってはもうすっかり笑い話ですけどなはっはっは。引き続きTHE NOSTRADAMNZの活動を応援してくれるスタッフ陣は募集中なので一緒に夢を見てみませんか?

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