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『週末ちょっと早起きしてマレーシア』
都内に4店舗ある「世界の朝ごはん」。コロナ禍で旅がままならなくなった時期に旅先で食べた朝ごはんを食べに行った。
レギュラーメニューであるイギリス、アメリカ、台湾の朝ごはん。それぞれストーリーを書くための取材を兼ねて何度訪れたことか。
可能な限り他のお店のものと食べ比べもした。食べながらコロナ禍でさらに遠くなった好きな旅先に想いを馳せた。
このお店はレギュラーメニューに加えて二ヶ月毎にさらにもう一カ国の朝ごはんのメニューを提供している。銀座店が出来てからはそのもう一カ国のメニューを食べに母と出かけて行くことが増えた。
そのほとんどが僕にとっては未踏の地の朝ごはん。数十カ国訪れている母にとっては懐かしいものもあれば、パッケージツアーだったために出逢えなかったものもあるようだ。
2023年6月・7月はマレーシアのナシレマがメニューに加わっていた。僕はマレーシアへは、クアラルンプールだけだが、仕事で二回訪れたことがある。母はお友達とツアーで観光したことがある様子。
しかし、僕も母もナシレマをマレーシアで食べていなかった。一体朝ごはんに何を食べていたのだろう。食べたのは無難なアメリカンブレックファストだったかも。
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「世界の朝ごはん」では、そのナシレマのようにある国に特化したメニューには、都度その国の大使館や政府観光局のチェックが入るようである。
いや、あえてチェックしてもらいつつ協力を得ているのかもしれない。故に現地で日常的に食べられているものに限りなく近いものが提供できるのだろう。
母とナシレマを食べに行った。ナシレマは皿の上のものを全てココナッツミルクで炊いたごはんにじっくり混ぜるのが基本的な食べる前の準備。
「食べる前にじっくり混ぜる」というのはアジア特有の食べ方かもしれない。韓国のビビンパ然り、インドのミールス(ターリー)然り。ミールス(ターリー)は食べているうちに混ざる・・・か。そういえば、我が国日本にも混ぜごはんというものがある。予め混ざってはいるけれど。
「食べる前にじっくり混ぜる」を知らなかった僕も母も、ごはんにいろいろな味が混ざらないようにして初めてのナシレマを食べた。
美味しかった。僕はナシレマで旅のストーリーが一話書けそうな気がした。ストーリーを書くには別のところでもナシレマを食べてみようと思った。
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馬喰町にナシレマを朝ごはんとして食べられるところを見つけた。馬喰町はJRの浅草橋駅から徒歩で行かれるところ。隣町は幼いころから勝手知ったる小伝馬町。60年あまり続いていたが残念ながら閉店してしまった親戚の上海料理のお店があったところだ。
行ってみることにした。そのマレーシア料理のお店は某有名ビジネスホテルチェーンの一階にあった。ホテルのコーヒーショップも兼ねたマレーシアのカフェという趣。テーブルとカウンター合わせて15人で満席という広さだった。
メニューをほとんど見ることなく、着席と同時にナシレマを頼んだ。
ナシレマが出てくるまでほぼ満席の店内を見渡すと日本人は僕ひとり。マレー系の人たちとインバウンドの宿泊客という様子の欧米の人たちがいた。都内にいながらアジアのどこかの旅先のようだった。
ナシレマがきた。この時点でもまだ「食べる前にじっくり混ぜる」は知らなかった。ここでもココナッツミルクで炊いたごはんに様々な味が混ざらないように食べた。ここのナシレマも美味しかった。ストーリーが書けるのではと思った。
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「いま書いておかなければ」という話を続けて書いたために、ナシレマの話を書こうと思ってからあっという間に一年以上経ってしまった。
着手し始めたころに、もうひとつインパクトがありアクセントとなる写真が欲しいと思った。
この8月に初めてお目にかかったグラフィックデザイナーの増喜尊子さんのZINE「ASIAN FOOD TRAVEL」を思い出した。増喜さんの作品の絵葉書やグリーティングカードにナシレマのものがあるかもしれないと思った。
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そう思った週末に増喜さんが天王洲アイルで開催中のアートイベントに出店なさっているのを知った。すぐに増喜さんに会いに伺った。
残念ながらその場に増喜さんのナシレマの作品はなかった。しかし、マレーシア料理研究家の古川音さんの著書「ナシレマッ!」を教えてくださった。それから、そのとき開催中だった「マレーシアフェア」に古川さんのマレーシアのローカルフードに関するトークがあることも教えてくださった。翌日は三連休の中日。幕張新都心まで行ってみることにした。
翌日イオンモール内で行われていた「マレーシアフェア」へ。古川さんが正面に見える中央の席に陣取った。メモを取り、スライドを拝見しながらトークを拝聴した。とくにナシレマのところはよく聴いた。知らなかったことばかり。お話を伺えてよかったと思った。久々に「思い立ったら吉日」を実感。
トーク終了後バックステージへ。上手い具合に出ていらした古川さんに自己紹介。増喜さんにお聞きして伺ったこと、トークの内容に関する質問、ナシレマの話を書いていること、著書の「ナシレマッ!」が入手困難なことなどをお話した。
古川さんはとても気持ちよく答えてくださった。著書の「ナシレマッ!」はその前日にAmazonに在庫補充をしたので間もなく購入できる旨を教えてくださった。翌日もここでトークをするので急ぐなら明日ここに持ってきますとまで言っていただき大恐縮。
お礼を申し上げてご挨拶をして館内のフードコートへ行った。マレーシアフェア限定のナシレマを食べてみた。
このストーリーの準備中に知って馬喰町で一度試し、拝聴したトークが念押ししてくれた「食べる前にじっくり混ぜる」は忘れなかった。
これまでじっくり混ぜないで食べてきたことを改めて後悔した。ココナツミルクで炊かれたまっ白なごはんが、サンバルをはじめとした具と混ざりに混ざって白さがなくなるくらいに混ぜた後に、また食べたくなるあの美味しさが現れてくるのだ。
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数日後の朝、出勤前にAmazonで在庫をチェックして「ナシレマッ!」を注文。帰宅したら届いていた。早速読み始めた。古川さんのトークを事前に拝聴していたので、内容がよく伝わってきた。ウンウンと頷きながら読み進めた。
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深いな、ナシレマ。現地の屋台で売っている粽のように三角にパッケージされているものに興味が湧いた。
読了した週末にこの本で知った都内のお店にランチとしてナシレマを食べに行ってみた。気が付くと、「食べる前にじっくり混ぜる」をしていた。
ナシレマのカタカナ表記は「ナシレマ」と「ナシレマッ」がある様子。小さい「ッ」が入っているほうが現地の発音に近いのかもしれない。「食べる前にじっくり混ぜる」を無意識にしていた僕の中で、「ナシレマ」は既に「ナシレマッ」になっていたのかもしれない。
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何度食べてもエビせんべいを食べるタイミングが掴めない・・・というか、分からない。エビせんべいって箸休め? 古川さんに今度お目にかかったらエビせんべいを食べるタイミングを伺わなくては。まさか「手で粉々に砕いて混ぜる」ことはないと思う。いや、そこまで自由に食べるのが「ナシレマッ」なのかもしれない。
次の旅先にマレーシアが急浮上。10数年ご無沙汰してしまっているシンガポール再訪と合わせてスケジュールしてみよう。陸での国境を超えの楽しみもある。
今作より旅のストーリーは18年目に入りました。引き続きどうぞご贔屓に。