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【園館訪問ルポ】ここにいながらここではないどこかを想う――上越市立水族博物館 うみがたり「マゼランペンギンミュージアム」(新潟県上越市)
新潟県上越市。北陸新幹線の上越妙高駅でえちごトキめき鉄道に乗り換えて、20分足らずの直江津駅で降りれば、水族館まではあと少しです。
「上越市立水族博物館」としての長い歴史を踏まえながら2018年にリニューアルが行われた「うみがたり」は、日本海の魚を展示する近代的な大水槽やベルーガの飼育で話題を呼んでいますが、この記事ではリニューアル前から水族館の「顔」だったマゼランペンギンの群れに光を当てていきます。
マゼランペンギンたちの展示場は、彼ら本来の生息地である南米アルゼンチンの自然保護区「プンタ・トンボ」をイメージしています。ウォークイン方式で、ペンギンたちとの距離感は極めて近いです。
日本海に面した放飼場は、時折強い海風が吹き付けるところも、プンタ・トンボの気候と共通しています。 訪問時は植栽を守るため、黒い布が巻かれていましたが、夏季には一層開放的な装いを見せていることでしょう。
巣穴として整備されたシェルターにこもるペンギンや、植栽の脇でゆっくり休んでいたペンギンの姿も見つけることができました。個体数が多いため、多様な姿を見ることが出来ます。特に遊泳する姿は様々な角度から観察することが可能です。
併設のレストラン" Restorante Los Cuentos del Mar"ではアルゼンチンの人気料理「エンパナーダ」も食べられます。視覚・聴覚だけではなく味覚の刺激によってもマゼランペンギンが極地ではなく南米に暮らすということを意識づける巧みさに、一貫性が感じられます。
恵まれた気候条件と長い飼育実績に裏打ちされたペンギンたちの繁殖実績は、上越市とアルゼンチンとの国際交流にも貢献しています。
特筆すべきは、本来の生息地を管理するアルゼンチン共和国チュブ州との保全活動との提携により、飼育技術伝承や情報交換が行われていることです。日本国内の園館における「域外保全」の成功例としてペンギン、とりわけ温帯ペンギン(フンボルトペンギン・マゼランペンギン・ケープペンギン)の名はよく挙げられますが、「域内保全」のために飼育技術が生かされること、更に本来の生息地からのフィードバックがあることで、種の保存のためにいっそう実効性のある役割を担うことが可能となります。
迫力あるペンギン展示そのものだけでなく、生きものがつないでいく地域と地域の縁も、「うみがたり」が「上越市立水族博物館」から受け継いできた、大きな物語の水脈と言えるように感じました。