整理する時間

樹木希林さんは生前、「癌で死ねるのはありがたいこと。自分のことや周りのこと、気持ちを整理する時間があるから」とおっしゃっていた。

希林さんが亡くなった数日前に、母の乳がんが確定診断となった。

希林さんの言葉が何回も繰り返しTVで紹介されるたびに、本当なのかなー、ご家族はどんな思いだったのかなーなんて。希林さんの言葉をそのまま受け入れることができない自分がいた。

乳がんと宣告され、手術を決めたあの日から、10日が経った。

先週1週間、これまでになく、たくさん母と電話で話した。

母は80歳になるまで、入院経験は私たち姉妹を出産する時だけ。病気で手術はもちろんのこと、入院さえもしたことがないのだ。
私はといえば、鼠径ヘルニア手術+入院、出産(帝王切開)+入院、喘息入院と、家族の中では手術&入院経験が多いのだ。
出産は約6年前、喘息入院は4年前のことで集中治療室経由で10日間入院した。私の手術&入院の経験から、入院生活で何があったら便利か、手術後はどんな状態になるのかなどなど、知っていることを伝えたかった。


一通り入院準備もおえた(らしい)母も、気持ちが少し落ち着いて来たのだろう。電話口で涙を流すことも最近ではなくなった。
私自身も、母の声を聞いて涙を流すこともなくなった。

ふと、あ、こういうやりとりの中で、本人も、家族も、気持ちを整理していくのかもしれないと感じた。

幸いにして命に関わる重大な状態ではないものの、乳がんを患った後の数年間での再発(他の部位も含めて)は可能性としてはあるのだ。それを本人も家族も意識しつつ、今を見つめる。
今、この時間をどう過ごしていくのか。
そしてこれからの数年間を、母とどう向き合っていくのか。
このところの私は、そんなことを冷静になって、自分自身で感じ取る作業をしているように感じる。

こうやって、命の終わりということについて、家族も一緒に考えていける時間をもらえたということなのかもしれない。

ようやく、希林さんの言葉に胸がザワつかなくなってきた。

今回の母の乳がんをきっかけに、何かが変わりつつあるようにも感じている。

この1週間、母には情報過多になってしまったかもしれない・・・と少し反省している。私も姉も、あれがいい、これが必要と、情報を提供しすぎていたように感じる。


これからの入院までの1週間は、準備の話をするのはやめておこう。ただ、ひたすら、彼女に寄り添って、気持ちや言葉に耳を傾ける時間にしようと思う。


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