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【SEA思考】個別から普遍を導く科学思考とは?【#2】

※この内容はフィクションを含みます。

世界のディズニーパーク、特に「東京ディズニーシー」において存在感を放つ架空の組織、S.E.A.(Society of Explorers and Adventurers)。作り物でありながら、「新たな知識の探求」というS.E.A.の理念は現実の社会においても重要な目的となりうる。S.E.A.アカデメイアnoteは、その創作物としてのS.E.A.に最大のリスペクトを払い、S.E.A.から学ぶ者として望ましいマインドを私的に纏めた記録である。

 S.E.A.会員の人々は、現在もなお優れた技術や文化を世界にもたらしている。

S.E.A.が活動拠点とするフォートレス・エクスプロレーションやフライト・ミュージアムに残る数々のオブジェクトから、彼らが持つ思考フレームワークが存在するのではないか、という仮説を前回紹介した。

今回はそのSEA思考のうち、'S'にあたるScience科学〉思考の紹介をしていこう。

#01 ・サイエンス思考とは

サイエンス思考とは、観察された事象、または収集された情報からあるパターンを見出だし、普遍的な法則を特定する思考である。

これによって、未来に起こる出来事を予測することもできるだろう。

たとえば、活動拠点の周辺で頻繁に地震が起きたり、湧水に泥が混じる水温や気温が上昇している、などの事象が確認されたとしよう。

もしその拠点の近くに火山がある場合、要注意である。

先に上げた事象は全て、火山の噴火と直接の因果が確認されているからだ。

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無論、S.E.A.の拠点の一つであるフォートレス・エクスプロレーションでは常に噴煙の温度や水温などをモニタリングしている。

噴火に備え、異変が観察されればすぐに、溶岩制御の為に何らかの対処がなされるだろう。

しかし、対処が遅れれば命取りであることは事実。
わずかな異変も見逃さないよう、S.E.A.の人々は自らの観察力と情報収集力を磨いている。

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#02 ・サイエンス思考のプロセス

では、サイエンス思考が具体的にどのようなプロセスで行われるのか、循環図で説明しよう。

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1:観察

「観察」とは、物事をただ見るのではなく「客観的に」「注意深く」見ることである。

しかし、観察に没頭するあまり独自の解釈を事実と混同してしまわないよう、事実は事実、推測は推測としてきちんと区別しなければならない。

2:仮説構築

「仮説」とは、解釈を加えた事実の理解であり、すなわち「暫定的な結論」である。

この世界の全ての理論や常識は、白か黒かという真実ではない。白あるいは黒に近い、言い換えれば「尤もらしい仮説」でしかなく、それは以下の基準によって常に変化する。

質の高い仮説の条件
・より多くの新奇な予測を含み、
・正体不明の情報(その場しのぎの仮説)を含まず、
・出来るだけ多くの事象を同様に説明できる

かつて惑星の動きを説明する最適なモデルと考えられていた天動説が地動説にとって代わられたように、科学の世界ではより多くの現実を説明し、明確で、それでいて扱いやすい仮説が採用される。

3:検証

構築した仮説が有用なものであるかを確かめるプロセスが検証である。定量的データ定性的データを目的に応じて使い分け、仮説を実証していく。

定量的データの調査
・水温の定点観測
・漁獲量データの集計
・震度計が反応した回数
定性的データの調査
・噴気口周辺へ足を運び、臭気を調べる
・近隣の漁師に海の様子を聞き込みする

仮説に基づいて調査を進めると、仮説が正しければ立証が、間違っていれば反証が行えるだけのデータが揃う。逆に言えば、立証も反証もできない仮説はそれだけ正体不明の要素が多い、質の悪い仮説と言える。

4:結論

このプロセスでは仮説と検証データをもとに、結論を出す。もととなる仮説が質の高いものであれば、自ずと結論はシンプルなものになるだろう。

もし仮説が間違っているのであれば、失敗ではなく前進と捉えよう。得てして科学者は自分の仮説に縛られやすい。自分が間違っていると認めるのは勇気のいることだ。

科学者にとっては「間違いを認めず恣意的にデータを集め、都合の悪いデータは無視を決め込む」ことの方がよほど失敗である。

#03 ・サイエンス思考を鍛える

サイエンス思考とは、「見えている事実」から「目に見えない法則」を導く力だ。そのためには、まず「見えている事実」に気付くことが重要である。

   変化や違和感に気付けるように、身の回りの環境、人を「よく見る癖」を着けよう。興味の無いことでもスルーせず、一度立ち止まって情報収集することも大切だ。

いちいち気にしてみよう
あなたの家の回りには何があるだろう?
どんなお店がある?店主の趣味は? 
友達の様子に、昨日と変化があるだろうか?
会話の話題の傾向は?

仮説構築と聞くと大袈裟だが、たとえば「友達への贈り物に何を選ぶか決める」には、仮説なしでは対応できない。

観察している事実(身に付けている物・話題にしている事)から、仮の答え(○○を贈ろう)を決める。
でもそれだけでは不安なので、友達の知り合いに何が良さそうかインタビューしてみる(定性データの調査)。

そこまでやって、買うなり作るなりした贈り物をいよいよ渡す。君の友達のリアクションが、そのまま「結論」となるのだ。

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#04 ・相関と因果

さて、以下の二文を見てもらいたい。それぞれが持つ性質の違いに、君は気付いただろうか?

・積乱雲が観測されると、降水が起こる
・鱗雲が観測されると、地震が起こる

積乱雲と降水の関係は、原因と結果がはっきりしている。これを、因果関係という。一方で鱗雲と地震のように、原因と結果ははっきりしないが経験則やタイミング、回数の一致などで漠然と関係がありそうだという関係を、相関関係という。

相関で構築された仮説にも一定の説得力はあるが、前述の「質の良い仮説の条件」に当てはめると、未知の情報を含んでしまう上、仮説に何ら科学的な説明がついていない

未知のことが起こる状況の中で正確性を重んじるならば、結論の飛躍を起こしかねない相関関係には注意を払おう。

いつの時代も、統計データの曲解やキャッチーなフレーズを用いて扇動的な俗説を流布する動きはあるだろう。殊に人々は不安を抱えると、情報を摂取することによってそれを和らげようとする。分からないこと・知らないものは誰にとっても恐ろしい。そんな人の弱みに付け込んで、エビデンスを無視した判断を含む理論が流布するのである(それが金銭的な利益を生み得るのは現代資本主義の問題の一つといえよう)。

#05 ・推論の方法

観察や実験によって結論を導き出す手法は、広い意味で「帰納法」と呼ばれる。哲人フランシス・ベーコンによって創始され、イギリス経験論の論理的方法論として知られている。帰納法のプロセスには、複数の事実から仮説を導出する際に有用な補助線がある。それは事実の要約である。

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包括的な要約を介することで、仮説構築の助けとする他、論理の飛躍が生じにくくなる。事実の要約から仮説を導く際は、症状などから病原に当たりをつける医者のように、広い知見や経験が必要である。

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推論の方法は帰納法の他に演繹法などがある。
演繹法とは帰納法の逆で、前提となるルールに物事を当てはめて結論を出す方法だ。前提が正しければ、そのルールに当てはまるか否かの二者択一になる。前提次第で結論はいかようにもなることから、前提が極めて重要であると言える。

実際の科学者は、帰納と演繹を効果的に合わせて使うことで、さらに高次の仮説を生み出すそうだ。

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S.E.A.名誉会員である天文学者は皆、自身が行った天体運動の観測データを整理したことから法則を発見している(帰納法)。観察をもとにした法則は妥当性が高く、演繹に用いる前提として有用だ。

かの有名なニュートンの「万有引力の法則」は、ブラーエの弟子であるケプラーが観察によって発見した「ケプラーの第三法則」をもとに、計算によって導き出されたものだ(演繹法)。

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サイエンス思考としてここに紹介したのは、推論の方法のほんの一部に過ぎない。それでも、この先様々な環境下で生き抜く冒険家諸君にとってわずかでも助けになれば幸いである。

次回は、SEA思考のうち具体的に問題を解決する思考、'E'にあたるEngineering〈工学〉思考について紹介する。

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