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#12 その地に足をつけるために

私は1つのところに長く留まるのが苦手だ。
飽き性なので、すぐ新しい酸素がほしくなってしまう。
学生時代のアルバイトは半年から1年程で辞めていたし、
引越しもよくしている方だと思う。
何かを極めることもなく、そのくせ居場所を求めてふらふらしている。

そういう甲斐性のない私が
どうして留学に行ったかというと、
大学院にいるのが息苦しくて、あと自分が社会に出ても何の役にも立たなさそうで、
新しい街で、透明になりたかった。
この時の透明というのは、街に溶け込み日常を暮らすという意味だ。

結論から言うと、透明にはなれなかった。
スイスでアジア顔が透明になる訳はなく(勿論容姿のためだけではないにしても)、なれなかったけれど、
1年弱過ごしたあのルツェルンという街は。
私の心の一部になった。

観光気分から足を洗い、地に足つけるために、
自分にとって必要なものごとがあると気付いた。

その1, 帰る家があること
眠れるというのは安心できるということで、自分がいない間自分を守ってくれる寝床がある心理的物理的安全は生死に関わる。

その2. 好きな雑貨屋と喫茶を見つけること
パン屋と古着屋、CDショップがあればなお良い。
そこで現地の人が使っているものを買う。サングラスとか、レインコートとか。

その3. 好きな景色、影が日々あること
散歩できるほどの治安が保たれているのは大事だし、
同じ場所の昼夜で違う姿を毎日見て、日々の移ろいを感じる中で愛着が生まれる。

結局は、つまり、
そこで"好き"に出会えること、だ。
日々はままならないものだから。
好きという気持ちを見出すことが私の生きる支えになる。

自分探しの旅ってよく言うけれど、探しても自分はどこにもいない。
知らない人ものことに触れるから
自分の輪郭が分かる。それは絶えず変わるもの。
透明になれなくても、留学してよかった。

1年弱の、私の異国物語。
読んでくれたあなたの、これが1つの雑貨になれたなら、
私が生きた意味が生まれます。
最後に、私が世界で一番美しいと思っている曲を紹介します。

VVE "All That Remains"
メロディだけでなく、歌詞も大好きな曲。

もしこの先機会があれば、
あなたの物語を知ることが出来ますように。

ありがとうございました。


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