あの日あそこで閉めて以来開けてないギターカバーのチャックに手をかける
最後に一緒にケーキを食べて、最後に返事が返ってこなくなってからどのくらいか。
思い出すと憂うつになるので数えなくなってしまった。
そもそも出会いは20年を遡る。
小学生の時、Mステでトビウオのバタフライを聴いてご機嫌になっていたくらい、
中学生の時、親の居ぬ間に家のPCの前で何回も何回もシャングリラやLast Love LetterのMVを聴いて熱唱していたくらい、
高校の時、初めてのボーカルでシャングリラを歌ったくらい、
大学生の時、夜中のドライブでイントロクイズしてたくらい、引退ライブでベタにサラバ青春を歌ったくらい、
そんなくらい私にとって特別だったバンドマンと、
そんな特別なバンドを知って同じように夢中になった彼女、
ドラムじゃなくてギタボやりたいって珍しく自分で言い出した彼女、
初めて行ったロッキンジャパンで聴いた生音の衝撃、魂抜かれたんかってくらいのあっけにとられた横顔、
1枚も譲りたくないだろうにサイン入りアルバムをくれた彼女、
25歳までに売れなかったらやめるって言ってた彼女、
25を過ぎてどうするかはもう決めたんだって言ってた彼女、
しんどくてしんどくても自分のこと中々言わないよな、それが寂しかったんだよ、
そんな
本当はだいすきで
特別だった友達が
対バンする。
こんな日がくるなんて考えたか?
正直やっていけるのかなって心配じゃなかったか?
でも私はずっと言ってきたはず、
毎年手紙に書いたでしょう、
きみの歌う声が世界でいちばんすきなんだって。
そこだけは変わらないの、知らなくてもいいよ。
本当に変わらないから。
これからもっと駆け足で、遠くまで走って飛んでいっちゃうんだよね、もう言葉も届かないのわかってる、どんどん行けばいいよ
そういう好きなものごとに目をきらきらさせておずおず突き進んで行くところが好きだったんだから
いつか、もし、また同じ目線で話せることが
ああもうないとしても
これは自分の中で一番輪郭を持った友愛
(そう、恋愛じゃないのが厄介)
ステージから客席って意外とよく見えると思うんだけど、
そこからいちばん遠い最後列で
私はどんな顔してるんだろう、どんな気持ちになるんだろう、
腹が立つのかな嬉しいのかな、悲しいのかな、
きみはどんな顔してるんだろう、なにを話すんだろう
たのしみだ
追記: 無防備な心で臨めそうもないので、気合いを入れるため美容院を予約した。
特別な人に会うときは、多少かわいくしときたいからね。