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鍵っ子と味のり。

人生の中でターニングポイントになる食事がある。それは人によっては幼い頃から食べてきた母親の手料理であったり、初めて食べる異国料理であったり、ステディの家で食べるちくわ入りの焼きそばだったり、そこまで仲がいいわけじゃないけどスーパーマリオを持っているだけという理由で遊びに行った友達の家で初めて食べたマックのてりやきバーガーだったり。

自分の人生を振り返って最も大きな衝撃を受けた食べ物を思い出すと

初めてのインネパカレー店で食べたチーズナン+追いはちみつ

沖縄の米軍基地エリアで食べたタコライス

そして妹と二人で両親のいないキッチンで食べた味のりだ。

味のり

それは決して主役にはなることの無い食材、だけど和朝食に付いているとテンションが上がる名脇役として日本人なら必ず一度は食べた事があると思うが、小学生だったころの少年のすけんは、この名脇役が一番の好物であった。

両親は二人共同じ店で仕事をしており、小学生から家を出るまで基本的に日中は家にはいない。当然学校から帰ってくる頃の小学生は腹ペコで、目に映るものを妹と二人で手当たり次第に食べていた。

我らにストックとして許されていたスナック菓子を食べ終わった頃、自分の胃は満たされているが心が満たされてない事に気がついた。

お腹が一杯でも、この欲望を満たしてくれる食べ物は無いのか

そんな台所探検隊の我々は遂に棚の奥から、僅か1mm以下にして、甘み、旨味、塩味、風味、辛味の複雑な要素を併せ持つアルティメットおやつ【味のり】を発見したのであった。

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旨い。旨すぎる。何だこれは。

そういった会話すら無く、ただ無言で袋が空になるまで味のりを貪りつづけた。

過剰な塩分とアミノ酸の摂取から、食後は口腔内が軽い麻痺感覚に襲われながらも、台所で恍惚状態の我々を見て心配した両親は味のついていないのりをストックするようになった。

だが当然のように味無しのりは我らのハンティングの標的にはならず、只々湿気っていくだけの存在だったので、最終的には台所のどこかにこっそり味のりがストックされるようになった。全力で味のりハンティングをする我々と、食べられまいとあの手この手で隠し場所を変えるオカンとの本気の戦いだった。

見つかったら最後、袋が空になるまで最短最速で食べ切る味のりハンターと化した我々にとって、家の鍵を持つという事は自らの欲望を歯止め無く開放するという力を手にしたのであった。

子供に自由を与えるとこうなりますので、よい大人は気をつけましょう。

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