実家よりくつろげる2階。〈無限_学園東町〉
子どもがいても、たまには外で呑みたい。個室で気兼ねなく呑みたい。その欲求はずっと心の片隅にある。ファミレスでもお酒は呑めるけれど、違う、そうじゃない。
ジョッキ片手にほろ酔いでも気兼ねなくくつろげる酒場で呑みたいのだ。
「昔はね、給料日にはお兄ちゃんを連れて、焼き鳥屋さんによく行ったのよ。ちょっと飲んで、焼き鳥食べて。仕事帰りのお父さんとお店で合流したっけね」
母からよく聞く昔話。わたしが生まれる前、給料日に近所の焼き鳥屋で一杯飲むのが恒例だったらしい。
ボロアパート住まいだったらしいが、近所に行きつけがあるというのは豊かな人生と言える気がする。
定期的に訪れる「焼き鳥とビールの口になっちゃった」時、母の昔話を思い出す。
いつしか“家族で入れる焼き鳥屋”に出会うことは、人生の裏テーマみたいになっていた。
だいぶ前置きが長くなってしまったが、そんな想いを抱きながら小平暮らしをすること十数年。
ついにその願いを叶えてくれる店に出会った。
学園東町にある『無限』だ。一橋学園駅からちょっと歩いたところにあるが、我が家からは徒歩でも行けなくもない絶妙な距離。
1階はカウンターのみで、ひとりでもふらっと立ち寄れる気軽さがある。
急勾配の階段を上がると2つの個室があり、畳に襖のなんとも懐かしい空間が迎えてくれる。
「食べたら眠くなっちゃいそうだね」
我が家の子どもたちも、一瞬でくつろげる場所だと実感した様子だった。
ビールとコーラで乾杯して、串にかぶりつく。子どもが大好きなつくねともも、大人はねぎまとハツにささみわさび。ビールがすすむすすむ。
ハイボールに切り替えてからも、串やつまみを頬張るペースは落ちない。プリっとジューシーで柔らかい食感は、店でなければ味わえない。家で温めなおすとどうしても固くなってしまう。
ポテトフライはいかなる時も予想を上回る売れ行き。大人はさっぱりと砂肝ポン酢や長芋の漬物へ。
そろそろお腹も落ち着いて、子どもたちは家庭とは一味も二味も違う親子丼を平らげ満たされた様子。
どれを食べても間違いない。夫はいつの間にか日本酒を呑んで上機嫌だった。
ちょっと行儀が悪いけれど、子どもはごろんとくつろぎ出す。
「おぶって帰れないから寝ないでね!」
小学校高学年にもなると、さすがに自分の足で帰ってもらわないときつい。
でも、まどろみながらごろごろしたくなる気持ちもわかる心地よさ。
デザートの代わりに自家製グレープフルーツサワーをいただく。さわやかな甘さがちょうどいい。酔いがまわっていてもわかるおいしい味。
たくさん呑んで食べてくつろいで、膨れた腹を撫でながら大人も子どももご満悦。
長年思い描いていた“家族で入れる焼き鳥屋”に出会えた。いつもの食卓より会話がはずむ、家族の距離を縮めてくれる2階なのでした。
※ほろ酔いにつき、写真が朧げなのはご愛嬌…
(お)