おかえり

夕闇の中を
灯す半分の月は
割れた片方が
まだ見つからない
.
靴底に隠れた等身大
踏まれる前に
遠くへ逃げてみたかった
.
憧れの町
沈まない星
手の届かないところにばかり
置かれた眩い光
濡れた硝子に
写りませんように
駆け足で通り過ぎた
最後の曲がり角
振り返っても
もう
誰も居ない
.
.
夕立ちのあとに
落ちた逆さまの空で
泳ぐ燃え殻は
もう間に合わない
.
ポケットに隠した想像力
腐らす前に
うっかり捨ててみたかった
.
諦めの旬
弛まない色
目の届かないところにばかり
残った冷たい鏡
止めた時間に
戻りませんように
微笑みで飾りつけた
台詞の抱き心地
忌み嫌っても
もう
何もしない
.
.
ただ静かにそっと
幽かにちょっと
滲んだままで
.
憧れの町
沈まない星
手の届かないところにばかり
置かれた眩い光
濡れた硝子に
写りませんように
駆け足で通り過ぎた
最後の曲がり角
振り返っても
もう
誰も居ない
.
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