僕のはなし

さようならもなく
姿を見せなくなった
あのグレーの毛の猫は
知らない街に帰ったのだ
僕がつけてあげた名前と共に
.
夜ごと聞こえてくる
虫の音に混ざった
懐かしい鈴のリズムも
きっと気のせい
.
雨が降るとまた思い出す
何処かで濡れてやしないか
新しい友達のくしゃみに
また驚いてやしないか
僕たちのことなんて
憶えていなくてもいいから
どうか優しい街で
暮らしていて
.
.
さようならもなく
姿が見えなくなった
あのグレーの毛の彼は
知らない街に帰ったのか
僕につけれくれた名前のように
.
日ごと薄れてくる
面影に留まった
柔らかい皺のカーブを
そっと撫でたい
.
雨が降るとその雲を追う
ひとりで泣いてやしないか
面白くて変わったくしゃみが
ここまで聞こえやしないか
僕たちのことなんて
憶えていなくてもいいから
どうか久しい人と
笑っていて
.
.
雨が降るとふと振り返る
どうにか変わりやしないか
止まらない無意識のあくびが
誰かにうつりやしないか
僕たちのことなんて
何も知らなくてもいいから
どうか愛しいものを
大事にして
.
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天気一つでも、人の心はがらっと変わることが往々にしてある。だからこんな気持ちのいい天気の日は、どうか少しでも快い時間が、そんな人たちの中にありますようにと、小さく小さく願うの。

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