東雲
夜風さえ無口で
窓を開けてみても
淋しさがもっと
浮かび上がりそうで
家中の電気を
全て点けてみた
.
昼間よりもずっと
鮮明に見えるものから
今度はどうやって
目を背けよう
.
そのまま戸締まりだけをして
部屋を飛び出してしまって
いつもは早足で行く
通い慣れた道を散歩する
財布も携帯もないあたしは今
何なのだろうと考えつつ
明かりの洩れるあの部屋を見つめる
.
.
夜空まで無口で
足を止めてみても
淋しさがもっと
覆い尽くしそうで
朧げに星座を
一つ書いてみた
.
記憶よりもずっと
鮮烈に光るものから
最初はどうやって
目を背けたか
.
このまま夜更かしだけをして
明日を逃げ出してしまって
いつもは俯いている
選び慣れた道と逆へ行く
勇気も優しさもないあたしはまだ
夢だったらなと考えつつ
静かに滲む東雲を見つめる
.
.
夜明けなど無口で
部屋を空けてみても
淋しさがもっと
追いかけてきそうで
おもむろに家路へ
歩み出していた
.
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愛には、大きい小さいはないけれども、浸透力の違いはあるような気がする。肌に馴染んだ水のように、使い込んだ毛布のように、すーっと一番深くまで沁みてくるものがあると、たまに実感する。
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