このさくら

フォルダの中に咲くさくら
舞い散ったりはしないが
何度目の花見だろう
まだ春を引き摺っている
.
優しく漂う風は
もう夏の匂い
夜だというのに蒸し暑い
.
栞を挟んだまま
読み進めたところで
それがないと
手を止められない
続きを待つのならば
何か一つを手放さないと
次のページは捲れないんだな
知らなかった
.
.
遅れて隅で咲くさくら
飛び跳ねたりはしないが
少しでも綺麗だろう
また春を思い出させる
.
気まぐれ程度の雨が
花びらを叩く
仕方がないのに懐かしい
.
涙を堪えたまま
遣り過したところで
痛くないと
諦められない
望みを持つのならば
何か一つと取り替えないと
一人きりでも笑えないんだな
知らなかった
.
心を隠したまま
立ち尽くしたところで
気づけないと
背も向けられない
時間が来るのならば
万に一つも追いかけないと
大事なものを守れないんだな
知らなかった
.
.
忘れた頃に咲くさくら
.
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大袈裟なくしゃみ。隣りの家まで聞こえるくしゃみ。癖のあるくしゃみ。知らない人なら驚いてしまうようなくしゃみ。どこかあたたかいくしゃみ。安心してしまうくしゃみ。たまにイラッとするくしゃみ。お父さんのくしゃみ。

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