伊勢志摩スカイラインと立ちゴケと(交通安全祈祷ツーリングその2)
前記事の続き。
「伊勢志摩スカイラインへ行こう。」
奈良、天理地内のコンビニで思いつく。
三重の天気はよさそうだし、行ってしまおう。
またずっと天気が良くなさそうだから、行けるときに、と。
ナビを設定すると名阪高速で亀山あたりまで行ってから南下するルートを提案される。
うーん……。
確かに高速を使えば早くて楽なのはわかる。
わかるんだけど、高速道路での移動はただの作業にしかならない、却下だ。
「下道で南から行けばパールロードとスカイライン両方いけるじゃん。」
多分バカだったと思う。
奈良天理から志摩へ
そうと決まれば、天理からまずは紀伊長島のあたりへ行くべく、バイクを走らせ始める。
南西の方へと進んでいくと、どんどんと山道に入る。
時折きつめのヘアピンなどはあれど、通れない道ではない。
時々センターラインが消えるけれど、バイクならそこまでビビり散らすこともない。
うっすら雲の隙間から太陽光が差す瞬間を感じながら、松坂の山中を経由し紀伊長島へ。
途中松阪市に入るときの山道が個人的には一番気持ちよかった。
道中の写真はこのくらいしか撮っていない。
バイクを走らせるのが気持ちよくて、止めたくなかったし、楽しい記憶は僕が感じているんだから良いと思っていた。
んだけど、こうしてブログに起こすとなると、そういう側面から考えるとやっぱりこまめに写真は撮っておくべきなのかも、とも思う。
そのまま松阪の山中を通り、南下し紀伊長島へと向かう。
前にも後ろにも、車なんていない。
世界に自分とCBR400Rしか居ないんじゃないか、と思えるほどだった。
途中、さすがに紀伊長島の道の駅で昼飯と休憩を取る。
伊勢そば、を食べた。
名前を見て何かと思ったが、伊勢うどんのそばバージョンらしい。
特にそばは柔らかいとかは無く普通。
するりといただき、しばらくベンチで休憩してまた志摩へと向かう。
基本的には山道だけれど、徐々に海側の空気も感じ始める。
複雑に入り組んだリアス式海岸の景色が、合間合間に右手側に見え始める。
志摩の西側、南伊勢。
もっと海側を走ってみようと、南伊勢町の相賀浦へ。
入り組んだ一つの地形の先端まで行ってみようと寄り道。
南海展望公園、といういかにも眺めのよさそうな公園へ行ってみようと思った。
思った、のだが、この道の狭いこと狭いこと……。
バイクだったからそんなに気にはならなかったが、車ですれ違うのは絶対に無理だと思う。
すれ違いのためのスペースも殆ど用意されておらず、車で通るのは事実不可能だと思う。
途中地元の人っぽい軽トラとすれ違ったが、バイクでもかなりギリギリだった。
車が来ないことを祈りながらなんとか南海展望公園へ。
展望台に上がって「はは、すげーな」と声が出た。一人なのに。
右も左も海。ちなみに背後は山。
来て良かったと思ったし、多分この景色を知っている人はすごく少ないだろう、とも思えた。
車で来るのは難易度が高い上に、わざわざ伊勢志摩を超えてさらに西側の南伊勢に来る人も居ないだろう、とも思える。
あまり観光に力を入れている感じもしなかった。
もしこの記事を見てくれてるバイクに乗れる人がいるのなら、南伊勢相賀浦の南海展望公園はすごくお勧め。
ひとしきり眺めて満足し、展望公園を後にする。
パールロード
ほどなくしてパールロードへ。
伊勢志摩スカイラインとパールロードはセットで名前を聞くことが多かったため、ほとんど似たようなものだと思っていたけれど、
パールロードは思っていたものと全く違い、観光道路のような感じだった。
途中に信号もあるし、カーブも緩やか。
伊勢志摩スカイライン
右手に海を眺めたり山中へ入ったり、そのままパールロードを抜ければ伊勢志摩スカイラインへ。
こちらはパールロードとは違い自動車道であり、2輪は990円の有料ロード。
走り始めてすぐに結構な急こう配の上り坂を抜けていく。
アップダウンとカーブはパールロードよりきつく、有料道路となるため側道からの合流も交差点も信号ももちろんない。
純粋に走るのならば圧倒的にこちらに軍配が上がるなと感じた。
時刻はパールロードを抜けた時点で既に16時半薄暗くなり始めていた。
幾つかのビューポイントを右手に見ながら、僕は「日本ってまだまだ捨てたもんじゃないな」と思った。
右手に海があって、左手には山。
海と山って対極の存在だと思っていたけれど、ことバイクツーリングになれば海と山はこんなにも近くにあるんだって。
海の匂いがした、バイクの音がする。
前にも後ろにも、対向車もいない。
しかし調子には乗らず、あくまで安全運転で伊勢志摩スカイラインを抜けていく。
ふと下りのカーブを抜けたときに、目の前がぱっと開けて海が見える瞬間があった。
「は、は、なんだこれ。」
と、一人なのに声を出して笑った。
受け止めきれないほどに感情を揺さぶられたとき、自然と笑うんだと思った。
こんな場所が日本にあるんだ、愛知から隣の県までバイクを走らせるだけで、こんなにも感動できるんだ。
日本って、良いじゃん。
バイクって、すげーじゃん。
ただの道が、こんなに楽しくなるんだ。
流石にこの感動を形に残さないという選択肢は僕にも無く、ビューポイントで写真を撮る。
そして悲劇は起きた。
バイク乗り通過儀礼「立ちゴケ」
休憩がてらビューポイントへバイクを止め、ギアをNへと入れる。
入れたはず、だった。
メーターのインジケーターはNになっていたのだが、新車ゆえギアがかみ合っていなかったのか、
表示上はNだけれども、おそらくはセカンドかローのままだったのかもしれない。
完全に油断しており、クラッチを放す。
もちろんエンスト。
ブレーキを踏んでいればよかったのだが、道も平らだったため踏んでおらず、エンストの瞬間にくっと前に進もうとしたのに驚き、踏ん張りきれずに右側にバイクを倒してしまう。
「あーやっちまったな……」
と、何とかバイクを起こす。
ギリギリまで踏ん張ったからか、起こしてみれば損傷は軽微だった。
前日に取り付けていたスライダーのおかげで、奇跡的にカウルはほぼ無傷。
損傷は軽微だったけれどスライダーへのガリ傷と、ミラー、ウィンカーに傷が入った。
そして右のブレーキレバーが先端付近で折れた、多分ここが一番やばかったところだろう。
ブレーキレバーも先端付近で折れたことで、自走には問題なかった。
伊勢志摩スカイラインで上がりきっていたテンションに程よく、不本意ながらもクールダウンが入る。
再度、傷を確認した。
気にしても仕方ない、自走できるんだから良い、とバイクに跨り伊勢側へまた走り始める。
そして続くすさまじく良い景色を走っていれば、5分後にはもう立ちゴケなんて気にしていなかった。
どうでもよかった、とは言えないけれど。
今日ここまで来なければコケずに済んだ.
じゃあ来なければよかったのか?
それは絶対に違う。
どうせこけて傷つけるなら、最初から傷のたくさん入った中古にすればよかったか?
それも絶対に違った。
これも思い出、僕のバイク乗りとしての歴史なんだ。
「納車で浮かれて奈良から三重まで行って、伊勢志摩スカイラインで立ちゴケした。」
っていう、立派な思い出なんだ。
ミラーの、スライダーの、ウィンカーの傷を見るたびそれを思い出すだろう。
これは中古を買って最初からついている傷とは全く話が違った。
そう考えたらなんだかそれも楽しくなってきていた。
あの程度の立ちごけなら、スライダーもあってカウルがほぼ無傷なことも分かった。
下道で帰宅
ブレーキレバーこのままじゃまずいよなー……なんて考えながら、そのままR23を北上し、松坂、津、鈴鹿、四日市桑名……と通って名古屋へと帰ってきた。
帰宅は21時。
途中休憩や祈祷やら諸々あったとしても、12時間近くバイクに乗っていたことになる。
流石にアホで無理をしたと思う。
相当しんどかったし。
ただ、納車1週間未満とはいえ、こんなに1日中乗ってられるとは思わなかった。12時間、500㎞近く乗っていたけれど、CBR400Rで困るシーンは全くなかった。
この一日でCBR400Rに惚れ直した。
多分もう、君とならどこへでも行ける。
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