読書感想「Ayah」 Andrea Hirata


インドネシアに住んでいた時(2018年ごろ?)、やたらとこの本が本屋や古本屋で売っていたのが気になって、2023年にインドネシアに行ったときに買ってきた本。1か月くらいかけて読了。

読むのに時間がかかったのは、最初の方がつまらない、主人公が誰かもよくわからない、何の話でどこに行くのかも見えない、という状態が本の半分くらいまで続くため。半分くらい進んでからは3日間で読み終えた。

あらすじ

主人公のSabariは、ヒロイン的立ち位置のMarlenaに入試でカンニングされたのをきっかけに一目ぼれ、以降ものすごいアプローチをかけていく。一方のMarlenaはSabariのことを本気で嫌って迷惑だと思っている。

以下、Wikipediaより

Sabari memiliki 3 sahabat yaitu Ukun, Tamat, dan Toharun yang selalu bersama dengan kekonyolannya. Sabari awalnya tidak tertarik dengan yang namanya cinta, tetapi setelah Marlena memberikan sebuah pensil sebagai hadiah karena Marlena mengambil kertas jawabannya, sejak itu Sabari berubah 180° dari biasanya. Sabari memang pandai berpuisi karena diwarisi dari ayahnya dan dia selalu membuatkan puisi cinta untuk Lena, tetapi Lena terus menolak dan bahkan menghinanya karena Sabari sama sekali bukan tipe laki-laki idaman Lena.
(サバリにはウクン、タマット、トハルンの3人の親友がいて、いつも一緒にバカ騒ぎをしている。当初は恋愛に無関心だったサバリだが、マーレナから答案用紙を取ったご褒美に鉛筆をもらって以来、サバリはいつもと180度変わった。サバリは父から受け継いだ詩が得意で、いつもレナに愛の詩を作るが、レナはサバリがレナの理想のタイプでないため、彼を拒絶し、侮辱さえし続ける。)Deepl翻訳

Wikiより

狂人の主人公(多分そうは描かれていない)

読んでいる途中で感じたのは、SabariのMarlenaへの愛が狂気的でそれ以外の部分は田舎の善人といった感じだった部分のヤバさ。主人公の行動を「一途な愛」と読める価値観がインドネシアの読者の中にはあるのだろうか、だとしたらよりヤバい、と思いながら読んでいた。
その「一途な愛」は、中盤でZorroに向くのだが、相手からの感情の矢印を気に留めずに自分の献身を注ぐ姿は、感動とかより狂気の対象が移った、というような『世にも奇妙な物語』を見るような気持ちにさせられた。

日本の小説のセオリー的には、いつかMarlenaはSabariに絆されるのかな、と思っていたが、そんなセオリーはこの本にはなかった(?)。

重すぎる苦難

もう一つ気になってたのが、主人公Sabariが途中で被る苦難が尋常じゃない点。自分の限られたインドネシア語小説の読書経験の中で、主人公がとにかくものすごい苦難を経験することが多い。「それ、何年後かに報われたとしても帳尻あわないでしょ」みたいな苦難を経験する。これはイスラム的な神の試練的価値観と関係があるのだろうかと思ってしまう。

伏線

この小説を読んだ後に、読書感想サイトをいくつか見てみると、「前半はつまらない」「読後に再読必須」というような感想がよく書かれていて、評価は肯定的なものが多く感じた。

インドネシア語小説を読んだ中で、初めてきっちりとした伏線を張った小説を読んだ。自身のインドネシア能力のせいで、伏線が回収されたとき、感心するよりも「は?なんでそうなる?ちょっと意味が分からない」となったが、なかなか味わい深い伏線だった。

試しにだれか読んでほしい

この感想を書いた理由は、この本が自分の中でまとまりがつかない、良い点も多いけど欠点もある、その上でこんな仕掛も…というような本で、誰かの感想を聞きたいと思ったから。
読んで損する本ではないと思うので、読んだ人がいたら何年後でもいいので感想を教えてください。

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