二郎を食べた時の話【前編】

先日、友人と初めて二郎を食べに行った。23歳にして初だが、正直この人生で二郎系は一生食べないと思っていた。人生とは不思議なものである。

さて、二郎を食べる前後の心の移り変わりようが、ただのラーメンを食べに行くときのそれとは全く異なったのが印象深い。せっかくなので覚書として文章にしたためたい。長くなりそうなので二章立てにて。

18:15 大学出発前

私は先輩に相談した。「ぶっちゃけ、今あまりお腹空いてないんですけど今日友達と二郎食べに行く約束してるんですよ。平気ですかね…」

先輩は答えた。「なめてんのか!二郎は戦いだろ!己を追い込むものだ。心していけ!」

私は思った。「(あー、これは友達に相談して餃子やさんとかにしてもらおう…)助言有難うございます。」

18:30 大学出発

2個となりの研究室の女の子を尋ねる。互いに女子校出身ということで属性が心なし似ており、ごはんの趣向も合う。二郎は向こうからの提案で、彼女も今まで食べたことがないとのことだった。安請け合いしたものの今更ながら代案を促す。

私は尋ねた。「今日、本当に二郎食べる…?」

友達は答えた。「うん!今めっちゃおなかぺこぺこなんだ!楽しみ!(^^)!!」

私は覚悟を決めた。「よっしゃいこう!!ぴえん!」

18:30~19:20 大学から二郎本店までの道中

道中何を話したかは覚えていない。たわいもない話だっただろう。

三田駅から二郎が地味に遠かったのは覚えている。途中の東京タワーがやけに美しく、「KO生は毎日いいもん見てるなあ…」と思いながら、二郎本店への道を急いだ。前方をとたたたた…と走る男子学生3人組。彼らもジロリアンなのだろうか、若いその背中が眩しく見えた。一体二郎の何が彼らをそうさせるのか。

ここまでくると、二郎の存在を目で確かめて舌で味わうことに意義があるように思えてくる。伝説的ラーメンへの興味と畏怖の念が高まる道のりだった。

19:20~19:40 二郎の列待ち

二郎本店到着。外には10人程の待ち行列、そしてなぞのにんにく臭。

着いてすぐ、「感謝祭」なるもののポスターが目についた。慶応生から二郎への恩返し…?参加費10,000円…?マッスルグリルのオフ会の方が安いじゃん。

そういえばとスマホを取り出す友人、「二郎 初心者 頼み方」と検索する。

思い出した、二郎といえばコールだ。

二郎を二郎たらしめているものの。私は量にばかり気を取られていたが、コールこそ二郎の特殊性を高めているものだろう。無駄を削り取ったその呪文によって、あのラーメンが出現するのだ。

わたしもググってみる。現実は厳しく、初心者向けと謳いながらも、圧倒的な情報量で初心者を威圧してくる記事の面々。どうすればいいのだ、うろたえる中で偶然希望の一言を見つけた。「困ったらふつうに頼みましょう。店員は人間です」

そうだ。私たちは二郎を食べる前に、人の作った料理を食べるのだ。当たり前のことに気が付きつつ、列待ちの時間は過ぎていく。

いずれにせよ、列待ちの20分間は非常に情緒不安定で、「二郎を食べるのはさながら地上にいながら富士山に登ることのようだね」のようなことを宣っていた。列前後のジロリアンには変な女がいると思われたかもしれないが、情緒が不安定だから許してほしい。

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