いいへんじ「稽古会」(たちくらようこ)
6月末のある夜、いいへんじさんの稽古会にお邪魔しました。
いいへんじは、2016年結成、早稲田大学演劇倶楽部出身の演劇団体です。今日のメンバーは、作・演出の中島梓織さん、俳優の飯尾朋花さんと小澤南穂子さん、制作の田中遥さん。いいへんじ勢ぞろい。
稽古会は、月に2回ほど行っている、創作をしていない時期でもなにかできたらいいよね、とりあえず集まってなんかやろうていう趣旨の会。なので、何をするかは、ほんとになにも決まっておらず、今日やることは今から決めます!
インプロ
中島さんが最近お知り合いに呼ばれて毎週インプロしている、ということで、やってみることになりました。
インプロとは、「インプロビゼーション」の略、なんも決めないでやる即興の演劇です。中島さんによると、失敗していいからデタラメに言う!ていうのが大事。
インプロ1「チェンジング・ザ・オブジェクト」
中島さんに説明してもらいながらさっそくトライ。
中島さんが、「はい、おにぎり」と言いながら、マイムで飯尾さんに渡すしぐさをします。飯尾さんは渡されたものを触ってコネコネして、別のものに変身したら、田中さんに「はい、ライスペーパー」と言って渡します。
大事なのは「なにも考えないこと」。何かにしようと思ってコネコネしないで、コネコネしてたらこれになってた!。なににもならなかったらおにぎりのまま渡したっていいのです。
ルールのバージョン違いもあわせて合計3周、オレンジ、テレビのリモコン、豆電球、バラエティ番組のトークテーマを決めるサイコロ、切った爪、ラブレターができました。
いいへんじのみなさん、それぞれのコネコネを楽しそうに見つめ、出来上がりに歓声をあげつづけています。
インプロ2「これなに?」
一人が何かを指さして「これなに?」と尋ね、もう一人が「✕✕!」と、ぜんっぜん別の言葉を言う、というシンプルなゲームです。ソファを指さしたときに「ソファ」って言うとか、「夢」の次に「希望」など前の言葉と関連する単語を言うとか、前に出た言葉を言うのはNG。
「孫正義」「空」「おとうさん」「田端駅」「おせんべい」「どちくしょう」・・・?いろんな単語と笑い声が飛び交います。
3試合を終えた中島さん「ああ疲れたー」。疲れたといいながらめっちゃ笑顔。
インプロは頭で考えちゃうとできないから、失敗するのに慣れて、ちゃんとしようとしないのが大事。相手が助けてくれると信頼すること、助けるほうも助け方を考える前にとりあえず入る。中島さんが参考にしているインプロ本まとめを教えてくれました。インプロの心意気は、いいへんじの作品づくりにどう影響してくるんでしょうか。
台本を読む
前回の稽古会で、台本を使ったことしたいねって言ってたよねということで、中島さんの戯曲の中から『あなたのくつをはく』を読みます!
2019年の作品で、作者の中島さんは「ぜんぜん覚えてないよー」とのこと。上演時は、飯尾さんと小澤さんはいいへんじメンバーではなくて、演出助手として参加していたんだそうです。そのお二人が読んでくれる・・・ぜいたく・・・!
ジロとヒロ
靴職人の先輩ジロが、後輩ヒロの仕事の姿勢を叱るシーン。終盤の「エゴじゃん」というセリフから、ジロの口調が明らかにヒロを責める調子に変わります・・・けっこうシビアな気持ちになるシーンです・・・!
「エゴ」ていう話題が、真正面から受け止めるには重たくて、と話し出すジロ役の飯尾さん。「『エゴじゃん』は軽くしやすいセリフ回しだから、個人の意見だけどっという感じで言えるけど、そこから先がちゃんと説教だから、同じように投げれなくて、どうしようって。」上演時のキャストの演じ方を思い出しつつ、自分の感じた難しさを正直に言葉にしています。
ヒロ役の小澤さんの疑問は、最後の小声の「はい」というセリフが、納得できない「はい」なのか、真を突かれて何もいえなくなっちゃったのか・・・。中島さん、飯尾さんもそれぞれの思ったことを言葉にしていきます。「どっちもあるよね」「一理あるけど認めたくなさ」少しづつ見えてくるヒロの心情。
ヒロとみいちゃん
次は、ヒロに注目して、物語の終盤、ヒロがみいちゃんに、みいちゃんが友達のきいちゃんのために注文した靴を渡すシーンです。
読み終わって。ヒロ役の小澤さん「あぁ、嬉しいなぁ」
みいちゃんの抱えるモヤモヤをきいて「一緒に昇華しようぜ!」っていう気持ちになったそうなのです。ジロとのシーンで指摘されたエゴの問題が、みいちゃんとの会話によって、ヒロの中で整理されていったよう。
飯尾さんも小澤さんも、登場人物の心の汲み取り方がとてもとても細やか・・・
みいちゃんときいちゃん 1回目
みいちゃんを飯尾さん、きいちゃんを小澤さんが演じます。二人は友達同士なのですが、なにやら、言い争いとまではいかないまでもなにやらありそうな雰囲気。
中島さんが小澤さんに「声のトーンを変えないようにつとめていた?」と聞くと、小澤さん「ちょっとガチで泣きそうになっちゃって」!!
「ずるいって言われてとても傷ついた・・・」
「きいちゃんに責められ待ち。びしっと言われる待ち。」みいちゃんを演じていた飯尾さんの発言に、全員から、納得のため息がもれました。みいちゃんは、きいちゃんにいっそ嫌われてモヤモヤを抜け出したい「嫌われ待ち」状態なのではないか??
小澤さんから「みいちゃんがこういう嫌われ待ちパンチしてくるときに、きいちゃんは何としてどういるんだろう?」という問いが。対等のコミュニケーションをとれる存在?いっこ上の存在?
実はきいちゃんは3カ月前に亡くなっていていて、今みいちゃんと話しているきいちゃんは幽霊なのです。生前と同じように自分の意志を持っているのか、都合のいいことを言ってくれるきいちゃんが召喚した存在なのか。どっちなのかで演技のしかたが変わってきます。
中島さん「高次元の存在なんだけど、そういれなくなる瞬間がある、みたいにするのはできるかなと思って」
役を交代して、召喚バージョンでもう一回やってみることに。
みいちゃんときいちゃん 2回目
高次元きいちゃんを演じた飯尾さん「怒りやすかった・・・無敵だった」。いっこ上の存在だから、きいちゃんの嫌われ待ちパンチをダメだよって叱れる!でも、無傷なわけではなく、傷つきながらぴしっと「そういうのやめて」て言っている、ルールを守って、っていうみたいに。中島さん「複雑な罪悪感を与える」・・・
中島さん、「え?え?頭の中のきいちゃんが『どっか行ってって言えばいいじゃん』て言ってること、は、ここの現象として考えたらどういう状態???」
作者の中島さんが、さっき初めて演じた俳優に聞いてる・・・?
みいちゃんを演じた小澤さん、非常に明瞭な回答を返しています。
作者と俳優の、信頼や関係のフラットさを垣間見る瞬間でした。
新作
最後に、中島さんが執筆中の新作をちょっとだけ・・・『あなたのくつをはく』とはうって変わってのコメディシーン。
読んでもらった中島さんの感想は「二人が、初めまして、で、あっ、あっ、あってなってんのすごい新鮮」。いままでの中島さんの戯曲ではあんまりなかった人間関係みたいです。気になる~!
今日の稽古会はここまで。4時間楽しく稽古しました。
いいへんじのみなさん、ありがとうございました♪
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