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渡辺健一郎『自由が上演される』読書会(たちくらようこ)

11月半ばのある朝、渡辺健一郎『自由が上演される』読書会が行われました。

乗る場で稽古の次に多いイベント、実は読書会かもしれません。老舗の渋革まろんさん発起人の「フェミニズム読書会」があって、宮崎玲奈さんのベル・フックス『フェミニズムはみんなのもの』読書会もあったし、戯曲もありにするならば朝比奈さんが月2ペースで戯曲を音読する会をしていて、カゲヤマさんの「戯曲を声に出す読書会」 も、そして11月の乗る場の日は「本を読みたい人のための読書会」でした。本好きなんですかね。

『自由が上演される』は群像新人評論賞を満場一致で受賞した(少なくともわたしの近所では)、演劇教育がテーマの話題の本です。

まっしろでかっこいい

著者の渡辺健一郎さんは、早稲田大学出身、小・中学生対象の演劇ワークショップに携わるなど、演劇や教育関係の活動を続けている方です。あと、達者な役者エピソードを、学生時代に渡辺さんの公演で音響を担当したことのあるカゲヤマさんにきいてしまいました、ふふふ。

この読書会はそのカゲヤマさんが発起人、先月に続いての2回目です。

読書会は、その日読むと決めた部分を各自読んできて、当番の人が作ってきたレジュメに沿って内容を確認しつつ色々話す、という感じで進みます。今回の参加者は、1回目から参加しているカキヤフミオさんと石川朝日さん、twitterを見て参加してくれた哲学専攻の大学院生ヒライシチサトさん、乗る場からはカゲヤマ気象台さん、朝比奈竜生さん、とたちくら。

参加者のみなさん

※文中の引用は、『自由が上演される』のたちくらによるざっくりまとめです。記事に関係する箇所だけなので抜け漏れ多々ありです。
※写真はたちくらが撮影しています。読書会なので、地味です。

第一章は、教育現場では、子どもたちが自分のパワーを自由に発揮するにはどうしたらいいか?が大問題になっていて、解決策の一つとして演劇が授業に取り入れられているけどそれはそれで大変だよーという内容でした。

今日読む第二章は「声と中動態」というタイトルがついています。レジュメ担当は朝比奈さん。ランシエール、中動態、平田オリザ の3つに注目しています。

1 ランシエール

第二章の冒頭、フランスの哲学者ランシエールのいう「愚鈍化」や「不和」をとりあげています。その最後のほうで、

知識を教えるのはできないけど、学ぼうとする意志は教えられる、とランシエールはいうけど、「学ぼうとする意志は教えられる」っていう知識を教えているから、矛盾しているってツッこめるよね。でもランシエールは「それは矛盾ていうか不和だから。」とか言いそう。

たちくらによる雑要約

こんなランシエールさんについて、朝比奈さんのレジュメのコメントは「めんどい」・・・カゲヤマさん「そういう人いますよね」。朝比奈さん「演劇は特にそういう人多いですよね」。それぞれのめんどくさい体験が思いやられます。

ここで朝日さんからの疑問、そもそもワークショップて何?

演劇以外にも、ビジネス系とかクラフト系とかあるよね、と話していると、ヒライシさんが哲学界隈のワークショップ事情も教えてくれました。

教育現場で、ディベートに代わって哲学カフェみたいに哲学対話を取り入れるところもあるんだそうです。でも、哲学カフェなら保証される参加しない自由は学校の授業で保証できるのか、自由な対話のためにファシリテーターはどこまでなにをするべきか、とか同じような悩みはあるみたいです。

本日の乗る場コーヒー。
乗る場にはコーヒーが常備してあるのです。

ここでコーヒーブレイク 。

2 中動態

次の話題は、國分功一郎『中動態の世界』で注目のワード「中動態」です。

例えば集団でのいじめは、誰の意志とも責任とも言えない中動態の状態で起きている、世界のいろんな問題は意志や責任を追及することでは解決できない。人間は常に正しい判断ができて強い意志を持てるものだと考えずに、自分がどうしたいかわからなかったり、欲求に負けるものとして考えよう。本当に必要と推察されることを周囲の人や環境も含めてその都度個別に判断しよう。ただこのケアの営みは、正解はなく暴力的で完遂不可能です。

たちくらによる雑要約

これに対する朝比奈さんのレジュメのまとめは「頑張る!
「対話しつつ、対話だけで解決しようとしない、失敗してもくじけない、自分も倒れない・・・」カゲヤマさんが頑張るの内訳を明文化していきます・・・これ、こうするしかないのはわかるけど、大変だな・・・

ふと第一章で触れられていたプラトンを思い返し、ケアが想定している欲に目が眩む人間観と比べると、絶対的に〔欲求<理性〕なプラトンってストイック、通り越してマッチョだね・・・と話していたら、ヒライシさんから衝撃的豆知識が

「プラトン」というのは実はあだ名で、そのあだ名の意味は、

「肩幅が広い」

プラトンの肩幅を確認するみなさん

レスリングも強かったらしいです。ほんとにマッチョだ・・・プラトンの正解の存在を信じて疑わないストイックな考え方のすべてが腑に落ちる・・・マッチョ・・・!

3 平田オリザ

第二章は平田オリザの演劇教育環観に関する考察で締められています。なんとなくにやける参加者一同。なにを隠そうこの場には、平田オリザさん主宰の劇団・青年団の団員が3人もいるのでした。

この部分は群像に載った時にはなかったのだけど、群像新人賞の審査員さんにこの内容で平田オリザに触れないわけにいかなくない?的な指摘を受けて、出版の際に加筆されたそうです。

平田さんはコミュニケーション教育の手段としての演劇ワークショップを行っており、いま日本で演劇教育っていったら平田オリザ、みたいな状況になっているのですが、その演劇教育観にも一考の余地はあるのではないか?

たちくらによる雑要約

一考のうちわけは本を読んでいただくとして、読書会で話したことで、演出部、制作、俳優と劇団内でもちがう立場にいる3人の、それぞれのオリザ観をみた気がします。

←団員(制作)と団員(演出部)→
3人目はたちくらです

第二章を読み終え話し終え、次回の日程とレジュメ係を決めて、本日の読書会はおしまいです。ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。

次回・第三章は、12月半ばの朝、カキヤさんが普通のレジュメ、たちくらが俳優目線の感想レジュメを用意するという分担です。しかるべきときにnote情報公開されますので、ご参加お待ちしています!


渡辺健一郎『自由が上演される』
こちらに詳細と買える場所が載ってます
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000366305

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