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グルジアの香り、シュクメルリ
年は明け、日はまだ低く、北風は昼夜を問わず人を凍らさんとばかりに体を刺す。
音楽は人の心を温める。身としての暖を取るのと同時に私は心の暖を取るために渋谷nagomixへ向かった。
1/18 Sound-Ariumは大変楽しいパーティだった。
ゲストの質も当然高いが、それだけでなく新進気鋭のクルーの方々の選曲やスタイルはどれもフロアを沸かせ、文字通り心も身体も温まるものだったと言える。
さて、パーティも終わり、帰路に着く前にかいた汗を流したいと思い、年上の友人を誘い、温泉に向かった。
蒲田にある温泉は、トロッとした黒湯で汗も疲れも流れていった。当然身体も温まるというものだ。
温泉から出て火照った身体は冬の季節と相性が良い。特段寒いと感じることはなく、非常に心地の良い外気を感じることができた。
「さて、じゃあ飯でも!」
年上の友人が温泉施設の写真を撮り終えたくらいで私が柏手を打ち、この後の予定を話すことにした。
お互いにイベントが終わって、温泉に来てから何も食べていなかったので私はとにかく空腹だった。
相手はきっとそこまでお腹は空いていなかったのだろうが、「Nortsくんに任せるよ!」と言っていただけたので甘えて近くの松屋に行くことにした。
2020年1月14日午前10時
一部店舗を除く全国の松屋で「シュクメルリ鍋定食」の販売が開始された。
シュクメルリとは、ジョージア、旧国名でいえばグルジア(かのスターリンの出身地)の郷土料理で、世界一ニンニクを美味しく食べる料理として知られるほど、ニンニクの味が強く、鶏もも肉をチーズとホワイトソースで絡めて食べる料理である。
ジョージアという国は、旧ソ連の構成国で、ヨーロッパとアジアのちょうど中間に位置する。そのため、古くから交通の要所として様々な民族が立ち入った。
そういった文化的な側面もあり、このような特殊な料理が生まれた背景が感じられそうだ。
ここは松屋。蒲田の松屋。
日本を代表する牛丼チェーンだ。
前回も松屋のカレーをnoteで紹介した気がする。
松屋の限定メニューにハズレはない。
入った瞬間に漂うニンニクの匂いで私はシュクメルリを食べることに決定した。そして、友人もシュクメルリを食べることにした。
鍋料理のため、運ばれるのに時間が10分ほどかかった。松屋のオペレーションにしては遅いが、やむを得なかろう。
そして、運ばれてきたのが、これである。
サラダ、ライス、味噌汁、そして、シュクメルリ。
いかんせんどうも異国のシュクメルリが浮いて、味噌汁とのマッチ感がなく思えてしまうが、単体で味わえばなんの問題もなかろう。
「これが噂のシュクメルリか!」
鍋から立ち上がる煙とその香り高いニンニクが鼻腔を擽り、私にスプーンを入れさせる。
一口目。
熱!!!!!
これが本当にとんでもなく熱い。
熱いと言う前に、「ダャッ!」という声が出る種類の熱さだ。
二口目。ふーふー。
鶏もも肉の柔らかさがまずすごい。ふかふかかつ弾力がある。皮の塩味も絶妙な均衡を保っている。
そして、絡みつくホワイトソースが素晴らしい。
ニンニクの強い風味を丸く包み込むようにしっとりとしたクリームソースはまるでジョージアを通るシルクロードのような白さだ。
チーズの風味も強く感じられる。トロッとした食感と伸びる感覚は楽しい。
そして、シュクメルリ鍋にはサツマイモが入っている。サツマイモは十五世紀に中米で初めて栽培されている。
十五世紀のグルジアは1466年に無政府状態に陥り崩壊、1490年には3王国に分裂したため、中米と正式な国交のもと貿易の上サツマイモが手に入ったとは思えない。後付けで入ったものなのかと思って調べたら、どうやらサツマイモは松屋のシュクメルリ限定で入っているらしい。
このサツマイモの甘さがアクセントになりやはり美味しい。だが、料理原理主義者(?)としてはやはり現地の味そのままを楽しみたいものである。
とにかく、日本の白米ともよく会うし、ニンニクの香りとチーズの香り何とも食欲を誘う逸品だった。
空腹の状態で食べても、最後にはお腹が膨れるほどの量なので、食べに行く際は十分注意されたい。
また、本当にニンニクが強いので、そこも注意したい。デート中、デート前に訪れるのは悪手だ。
松屋の限定メニューにハズレはない。
本当に美味しい世界の料理が、松屋にある。