『宇宙と宇宙をつなぐ数学』読了
『宇宙と宇宙をつなぐ数学』読了
脳がざわざわする面白さ。
発売から10ヶ月近く経ってるので、少し遅いのかもしれないけど、本屋で見かけて即買いしました。
帯に竹内薫の「ここ数十年読んだ数学本でNo.1」とふざけたアオリがあって微笑ましい。
キミは何年生きとんねん。
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2012年
京大の望月新一が、数学界の超難問「ABC予想」の証明をネットに上げた。
ところがその証明は500ページとクソ長い上に、望月独自の新理論
「宇宙際タイヒミュラー理論」
が使われており、世界中の数学者が
「どういうことやねんwwww」
とコーヒーを吹く結果となった。
証明が正しいのか間違っているのかではなく
「何をおっしゃっているのかわかりかねますが」
という状態。
すでに7年が経過したが、いまだに査読は完了しておらず
「日本人がABC予想を証明しましたー!」
ということにはなっていない。
本書は、世界中の数学者が理解できない「宇宙際タイヒミュラー理論」を、一般人向けに解説しよう、という
なかなか笑いが止まらない目論見の本である。
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一歩間違うと、勉強しすぎて頭おかしくなった天才が謎理論をわめいているだけにも見えかねない。
まず理論の名前に「宇宙」と入ってるので、
「ぼくのかんがえたさいきょうの証明」
的なヤバさを感じてしまう。
実際、本書の冒頭に望月新一本人の寄稿があるんだけど、
控えめに言って狂人のたわ言である笑
天才が天才の頭の中を自分の語彙で話すと、ほんとに近寄りがたい感じで、絶対この人から話ききたくないわ・・・・
と思ってしまう。宇宙語といえば、ほんと宇宙語。
それを、望月の友人で、理解者である(笑)加藤文元が、一般人にわかる地球語に翻訳してくれたのが本書。
とても読みやすく、終始わくわくした。
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宇宙際タイヒミュラー理論は非常に興味深かった。
もちろん、現状、世界で数名しか理解できてないわけだから、素人である私が理論の本体を理解するのは不可能だけれど、本書の目論見は「理論のざっくりした姿」を提示することであり、それは見事に成功している。
興味のある人のために簡単に自分なりに受け取ったことをメモしておく。
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・「宇宙際」の「際」はinterであり、国際(inter-national)の「際」と同じ。国境を超えて国と国とが関係をもつのがインターナショナル、国際、であるならば、宇宙際というのは、複数の宇宙を想定し、宇宙の境目をを超えてつながりを持つことを指す。
→この時点ですでにおもろい。&狂ってる。
・ではなぜ、複数の「宇宙」を作る必要があるのか。
・端的に言えば、現在の数学の世界の「頭打ち、行き詰まり」を破壊し、乗り越えるためである。
・具体的には「足し算」と「掛け算」の当たり前といえば当たり前過ぎる強固な関係性(望月はそのようなものを『一蓮托生』と呼ぶ)をいったん解体し、それぞれ別の光を当てることを目論む。
→少し柔らかく言うならば、今ある数学の全部、数学の全世界、仕組み一式、これを宇宙、と考えると、そのなかで身動きがとれなくなっている問題、それは例えば素数に関する謎、を別の数学のルールを持つ宇宙と通信することでほぐしていこう、という
そういう雰囲気の流れです。
(以下本書より抜粋)
いままで出てきた問題、双子素数の問題、素数分布の問題、そしてゴールドバッハの問題など、整数論上の有名な問題の数々は、どれも見かけは簡単そうなのに実は難しいというものばかりです。そして、それらはどれも「たし算とかけ算の絡み合い」から生じています。人類はこれらの問題をまだ解くことができません。ですから、実はまだ人類は、たし算とかけ算の間の本当の関係というものを、全然理解していないのではないか、ということにもなってくるわけです。たし算なんて、かけ算なんて、どっちも簡単なものだ、と思われるかもしれません。だからその関係だって、もちろん簡単だろう、少なくともこれだけ数学が進歩していれば、数学者はそれを完全に理解しているに違いない、というふうに思われるかもしれません。しかし、実はその間の関係というのは、まだ人類の中で誰も完全には理解していない、とっても難しい問題なのです。
(抜粋おわり)
実はまだ人類は、たし算とかけ算の間の本当の関係というものを、全然理解していない
というのはなかなかアツい文言ですね。
こういうものって、とっても好き。我々はなんでも知ったかぶりをしてしまうけど、知ったつもりになることで、学びは止まってしまう。
ホントはどうなってるの?ほんとにそれで理解してるの?
と、疑い続けることが、さらなる奥地への扉をひらき、その延長線では、世界が難しくなるのではなく、おもしろくなるわけです。
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数学の本なんですけど、宇宙をつなぐ話なので、ちょうど映画振り返ってたから、エンドゲームの過去に戻ってもっかい指パッチンする話とか(平行世界)、スパイダーバースの複数の宇宙からキャラが集まってくる感じとか思い出しながら読んだ。
同じものを別の宇宙にはこぶ例として、女優(本人)と女優が演じている役、の話とか、なかなかにわかりやすい。
SF好きにはたまらない「入れ子構造」みたいな単語も飛び出し、
入れ子構造の中で、本来ははまらないパズルのピースをはめる、なんて話は、絵で見ても最高におもろい。
派生して、
たとえば、
「アニメキャラにガチで恋するオタク」
のことを考えたりした。
望月は逃げ恥の契約結婚などを例に挙げたそうですけど、
学問って突き詰めていけばほんと日常とリンクしてくるのですね。
ラスト付近のアツイ部分を引用しておきます。
(以下抜粋)
もしかしたらその(※従来の)やり方でも、いつかは証明できるかもしれません。しかし、いつまでたっても、できないかもしれない。IUT理論(※宇宙際タイヒミュラー理論)は、このような現状に対して、複数の数学の舞台装置を考えることで、それまでになかった、議論の自由度を実現しようとするわけです。
それは、もしかしたら「巨大な遠回り」かもしれませんし、本当は不必要なことだったと、将来明らかになるかもしれません。しかし、従来の数学にはなかった新しい道筋を示す、ということだけでも、IUT理論の人類的な意義があるのだと思います。いずれにしても、IUT理論は、本当は不必要かもしれないが、複数の宇宙、複数の舞台を経由するという「巨大な迂回路」を使って得られた、非常識な柔軟性を使って、いままで証明されてこなかった難しい不等式を導こうという、そういうアプローチの理論なのです。
(抜粋終わり)
本当は不必要かもしれない「巨大な迂回路」を使って得られた、非常識な柔軟性
だとさ。
涙でそうだね。
↑(本文抜粋)現実の世界に身をおいて考えれば、この二人の女性は同じ人ですが、映画の世界の中に没頭してしまっているときの我々にとっての彼女は、現実世界ではない、その「舞台」の中に生きている人なのです。
↑(本文抜粋)複数の宇宙を用意して、その中で《同じ》ものを考えれば、複数の世界にまたがっているわけですから、どちらの世界の秩序とも矛盾しない形で、これらをはめ込むことが、少なくとも形式的にはできてしまいます。
※追記コメント
エンデ「はてしない物語」、小野不由美「十二国記」
ふたつの世界を行き来する物語は、だいたい面白い。
大昔からある形なんでしょうけど。
▽
大長編ドラえもんの数々。。
[2020.01.30 facebookから]
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