キーワードは「冒険」
自転車に乗れば毎日が冒険 第3回
第1章 「冒険」について考えてみる
「冒険」という言葉には、危険が伴うものというイメージがある。
危険をおかすこと、 成否の確かでない事をあえてすること
= 広辞苑 第七版 =
危険を承知(不成功を覚悟の上で)行うこと
= 新明解国語辞典 第六版 =
ここでは冒険という言葉をこんな意味で使っていこうと思う。
・日常のなかで
・自転車に乗ることによって
という2つの前提のもとで、
「まだ見ぬ世界を体験すること」あるいは「成否の確実でない事をあえて行なうこと」
もう少し柔らかく言えば「日常の中で自転車に乗って味わう、いつもとはちょっと違うワクワクするような体験」というわけだ。
スポーツの語源となったデポルターレ(deportare)の意味をもう一度思い出してみよう。そう「仕事や家事などの日常から離れて気晴らしをすること」。日常のなかで日常から離れて「いつもとはちょっと違うワクワクするような体験」をすること。つまり「冒険」こそデポルターレな自転車の楽しみ方なのではないか。
アメリカの自転車ブランド「SALSA(サルサ)」のマーケッティング・マネージャー、マイク・リーマー氏は自社の2019年版カタログで「冒険」をこう定義している。
「ADVENTURE(冒険)」には、大きなことも小さなこともあることをわたしたちは知っています。新しいトレイルや抜け道を発見することも、あえて悪天候の中に走り出すことも、 ともに「ADVENTURE(冒険)」なのです。個人の限界を超えようとすること、それまで想像もしなかった大きなことに挑むこと、普段はしないちょっとしたことを試しにやってみること。 例えるなら、見知らぬ国を自転車で探検したり、人里離れた秘境をバイクパッキングすることもそう、ツーリング途中のランチで見知らぬ店に入ってみるとか、大都市を自転車で走り抜けることも、わたしたちはすべて「ADVENTURE(冒険)」と考えます。
全文はコチラ → SALSA 2019カタログ(2p目参照)
この文章を読んだときに、アレ?誰か似たようなこと言ってなかったけ...と思い、記憶の糸を手繰り寄せてみた。納戸から引っ張り出してきたのはカブスカウト時代のバイブル『冒険手帳 火のおこし方から、イカダの組み方まで』(谷口尚規 著、石川球太 画、21世紀ブックス 主婦と生活社 刊)である。ブックカバーの袖に詩人の谷川俊太郎氏が寄せた推薦文にこう記されていた。
「冒険の楽しさときびしさを教えてくれる」
冒険というと、何かでっかいことをパーッとやるふうに、ぼくらは考えがちだが、現実には、それは自分自身の手と足と頭を使ってこつこつとやるものだということをこの本は教えてくれる。どんなぼんくらだって、技術と経験をつみ重ねてゆけば、冒険者になれるのだ。
しかし、同時に冒険とは自分の能力のギリギリのところを試すものでもある。いってみれば命がけだ。そういうきびしさと、誰にもしばられずにやる楽しさと、そのふたつのことをきみもこの本から感じとるだろうと思う。
※初版は昭和47(1972)年6月、手元にあったのは昭和50年7月の第117(!)版
冒険の意味は幅広い。休日や仕事終わりのちょっとした時間に自転車にまたがり、ゆっくりとしたペースで街や自然を味わうようなスローなアドベンチャー(※)があってもいい。
そして日頃から"小さな冒険"を積み重ねておけば、より"大きな冒険"に望むこともできるのだ。人によって"冒険"の意味するところは違っていい。まずは自転車にまたがって、あてもなくふらりと出かけることから始めよう。みんながアスリートにならなくてもいい。自転車はもっと自由な乗り物なのだ。
※slow adventure
スロー・アドベンチャー:休日に屋外に出て、自然な環境の良さを味わいながら、ゆっくりしたペースで、肉体的疲労の少ない野外活動を行うこと。
#slowadventuring
本日の1曲 ♪Adventure Of A Lifetime/ COLDPLAY
「自転車に乗れば毎日が冒険」というタイトルは、荷物を積むためのカーゴバイクを"再発明"した XTRACYCLE が創業時に掲げていたブランドスローガン「everyday adventure」からパクった、いや、思いついたもの :-)
本文中の"冒険の定義"で触れた SALSAの「Adventure by Bike」(以前は「Ride and Smile」)や、kona の「NOT FAR FROM HOME」という考え方にも影響を受けたものだということを正直に記しておきたい。
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