![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/86113952/rectangle_large_type_2_2bbff1d9172a1cd7ff8dd57fc09e98e1.jpeg?width=1200)
『夜を抜け出して』がとてもいい曲だった話。(B.O.L.Tの話 #3)
何度か言及してきた、ももクロの後輩グループB.O.L.Tさんの話ですが、8/10に初のEP『weather』がリリースされました。(ミニアルバム的なもの、6曲入り)
今作は『天気』を全体テーマとしており、
晴れをテーマにした明るい曲や、くもりや雨を描く憂いを帯びた曲など、1曲1曲も良い曲かつ、一連の作品として1枚通しで聴いてもまた良いという、今回も丁寧に作られた名作でした。
リード曲である『BY MY SIDE』も、B.O.L.Tさんらしい明るく元気なポップロック曲かつ、比較的珍しく?
ストレートな恋心を描いていて歌詞もかわいく、MVもとても素敵なので、よかったらぜひ一見ください。
そして、収録曲の1つ『夜を抜け出して』が特に個人的に刺さりましたので、紹介も兼ねて、また少し感じたことなど綴りたいと思います。
例によってあくまで一個人の解釈・感想で恐縮なのですが、興味を持ったりする一助になれば幸いです。
■『焦燥感に駆られた若者の物語』の『今』
B.O.L.Tさんについては過去2回、『axis』と『夕日の後の夜に』について、個別に記事を書きました。
これらの楽曲や『Reborn』などに通じる、
『焦燥感に駆られた若者の物語』的な空気が、とても素晴らしいというか個人的に大好きで。
シングル表題曲に代表される、明るく元気な楽しい楽曲群とはまた別軸で、こっちの路線も確実に、B.O.L.Tが描く世界観の魅力の1つと感じています。
(その両輪あるのがまた深みで好きです)
『夜を抜け出して』は、EPのテーマである天気のうち「くもり」を担っていますが、
同時に、同じく夜を描いてきた『axis』や『夕日の後の夜に』の流れも汲む物語(夜に走る系?)としても解釈できるように感じ、その系譜としても、また別の側面や成長を感じた一曲でした。
(ここでは勝手に、その文脈で聴いた感想を綴ります)
これまで、
『axis』では、眠れずに無心で夜を走っているうち、段々すべてがポジティブに感じられていって、この地球すら自分が回しているんだとすら思えた、という、
思春期特有の、謎の高揚や万能感が鮮やかに描かれ。
その1年後、『夕日の後の夜に』では、ほぼ同じ時間帯を描きつつも、もがいている若者が、最後まで完全にはポジティブにはなりきれず、自分を奮い立たせて、ずっと苦しくても明日も進むんだ、と歌っていた。
(axisと表裏、裏側を明かすのように)
この構造の面白さや丁寧な描き方、そして、
『夕日の後の夜に』リリースの二周年当時、高井さんが「この歌詞こそが今の心情と重なる」と語ったことにも胸を撃たれ、この物語に引き込まれました。
では、さらに1年が経過した『夜を抜け出して』では、どうなったのか。
(ほぼ同じ時間帯が主題として繰り返し描かれるのも、結構珍しいのではないでしょうか)
■『次世代』の合流
『夜を抜け出して』では、同じく迷いながらも、
綴られている言葉や、発せられているメッセージが、
これまでよりさらに能動的・ポジティブ・外向き、
そして、若くなったように感じました。
これには、2年間の成長も踏まえつつ、次世代、すなわち年下組(あやなのちゃん達)が、明確に主人公像に合流したことが最も大きいように感じました。
目の前の景色が歪んでいった
心の声も聴こえなくなった
それでも朝を捕まえに行こう
夜を抜け出して
『axis』や『夕日の後の夜に』では、歌詞の主人公像は高校生~ハタチ前後、ちょうど当時の高井さん・内藤さん世代くらいに感じられて。(個人的に浮かんでいたのは、axisのMVサムネの高井さんでした)
年下組の歌割もaxisではピンポイント、曲の中盤に主人公を照らす月について描写する役割で、夕日の後の~でも、主な心情は年上組が多く歌っていました。
(まあ、axisとか当時は小学生なわけで、悩みを抱えてネオン街を走るとか流石に合わないですもんね…)
それが、『夜を抜け出して』では、
明確に年下組が前面に打ち出されており、
1サビに至っては年下組だけのソロ(!)で、
前半・後半に分けて堂々と歌い上げる構成に。
その歌詞も、
はみ出していたい私は BAD GIRL
世界はどこも変わんなくって
"普通"が苦痛で嫌になった ゆらゆら揺れてる
自分を愛せない私は SAD GIRL
出口がどこかわかんなくって あなたの声も届かない
夜に染まって
と、まさに思春期ド真ん中という感じの、
斜に構えた、若者らしい行き詰まり感や、
自己嫌悪・否定に満ちた、鬱屈した叫びで。
今までなら驚くような采配ですが、
この2人も今や中2となり。中2と言えばまさに思春期の象徴のような(?)年頃なわけで。
axisから2年が経ち、『焦燥感に駆られた若者像』に、ついにこの年下組も合流したんだなと、
妙に納得してしまいました。
(出口が見えず夜を彷徨うのも、axisと重なるなと)
その結果、この曲が描く主人公像は、axisや夕日の後の~の頃よりも、どこか若くなったように感じ、
同じ時間帯・テーマを描きながらも、受ける印象がまた少し違うものになったのかなと。
生まれたての感情の、溢れるエネルギー感が加わり、
行き場のない葛藤のような叫びも、さらに新鮮に、
リアルさが増したように感じました。
(※あやなのちゃん達自身はめっちゃ良い子ですが…)
では、主人公像が若くなり、成長はしていないのか?
というと、多分そうではなくて。
■『成長』と『若さ』
これまでの作品で、苦しみながらも進んできた主人公像。それを中心として担ってきた、
高井さん・内藤さん達のお姉さん組。
彼女らがこの曲で担当するパートは、
年下組と同じように悩みも歌っていながらも、
迷いだけでなく、どこか意志を感じさせる歌詞が多いように感じました。
1サビへと続く内藤さんパート。
ずっと繰り返してくの?
過去も未来も ずっと ずっと
これはそのまま、悩んでいる声の発露や、
嘆きとしても取れますが、
自身も含めた、迷っている若者達に対する問いかけのようにも聞こえる気がして。
(特に、ライブで気持ちを込めて叫ぶ様からは)
そして、間奏が明けて、
塞ぎこんでいた若者(青山さん)が、
いつからどうして 自らこうして
勝手に諦めてたの
という自問に至った際にも、
「弱った自分を愛せず 誰が愛せるの?」
響くあなたの言葉
と、年上組のハモりから内藤さんが繋ぎ、少し顔を上げた若者に、希望を照らし出すかのように歌う。
(ここで内藤さんが「あなたの言葉」を浮かべるのは、Rebornの歌詞『あなたの言葉 朝も昼も夜も ふとした時に胸の中を奮い立たせる』も思い起こさせられて、またエモでした)
すなわち、ずっと悩みながらも歩いてきた主人公像の魂や成長は、しっかり受け継がれていて、
新しく合流した若者の葛藤に同調しながらも、優しく導くような役割を兼ねているように感じられました。
そして、新世代の若者たちの、どんどん沸き上がる、
しかし行き場のなかったエネルギーが収束し、
これまで歩んできた道・経験と合流、融合して。
全員の力で、ついに新しい段階へと至れたことが、
ラスサビ前、満を持して、ずっと主人公像を担ってきた高井さんによって紡がれる。
自分を信じてやれなかった日々
それでも自分のことをもっと愛してやると決めたんだ
ずっと続いてきた苦悩と決別する、
自己肯定と、決意表明。
(夕日の後の~の頃を思うと泣けてしまいました)
それに呼応して、
『はみ出していたかったBAD GIRL』、
『自分を愛せなかったSAD GIRL』達も、
自分に生まれた私は GLAD GIRL
世界はどこも変わんないけど
自分にしかないものがある もう疑わないよ
と、この曲で初めての(!) 4人全員のユニゾンで、
自己肯定、喜びと決意の歌を、
解放されたかのように、強く強く叫ぶ。
この構造の美しさとカタルシス!
まさに正しく成長でありかつ若さであり、
そのハイブリッドのエネルギーで、
今のB.O.L.Tだからこそ描ける、自己肯定・自己賛歌の歌で、とても素晴らしいなと。
(この『グループとしては成長・進化しているのに、曲の世代感は若返っている』というのも、なかなか珍しい、このグループ独自の味わいであり、強みなのかなと、今回新たに感じました)
そして、さらに感動的なことに、新しく生まれた強いエネルギーは、自己の枠だけにとどまらなかった。
■次の段階へ
ラスサビから続く最後のパート。
たまには躓いて
それでも許して
嫌なことは投げ捨てて
明日もよろしくね
あなたと笑い合いたいな
また夜を抜け出して
ここではじめて、明確に第三者、リスナー、
自己の世界の外側へ向けたメッセージが放たれる。
これは、過去の同系統の作品でも、ほとんど出てこなかった視点で。
(「あなた」の存在や言葉に感謝、勇気づけられたりはしていた。ここでは自分から呼び掛けるに至った)
ずっと培ってきたもの・歩んできた経験と、
新世代のエネルギーが出会い、スパークした結果、
自己の殻すら突破し、辿り着いたのが、
『あなたと笑い合いたいな』という感情だった。
これが本当に、この物語の新たなる到達点という感じで泣けてしまいました。
(たまには躓くけど、明日もよろしくねと、今後も対面するであろう『苦悩』とも自然に向き合って、軽やかに受け入れている)
この、軽やかさや優しさ、成長を描く鮮やかさ、爽やかな力強さと、未来への希望の香り。
それらが詰まった、大変素晴らしい作品だなと。
そのポジティブなエネルギーが、最終的に観客側にまで及ぶという、構成の優しさ?もなんだか有り難くて、胸に染みました。
■おわりに
ラスト、『くもり空』は『晴れ』、『夜』は『明日』という希望へ結ばれて、曲は終わる。
3:22秒。
一曲で聞いても爽やかでとても良いですし、アルバムの流れで聞くのも当然良いですが、axisから続けて聞くのも、成長や物語が一層染みてお勧めです。
(私は続けて聴いてちょっと泣きました)
そして、ずっと頑張ってきた人達が、さらに若い子達が頑張っている姿から刺激を受けて、
チーム全体として前向きに進んでいくエネルギーが生まれていく、という構図は、まさに今のB.O.L.Tというグループが纏っている空気感そのものという感じで、
とても平和で優しく、温かくて大好きです。
こんなに平和とか、『希望があふれている』って表現が似合うグループというのも、本当に素敵だよなと。
4人の一体感、チーム感がさらに増したこれから先も、どんな世界が描かれていくのか、本当に楽しみです。
ここでは『夜を抜け出して』を挙げましたが、Weatherという盤全体として、年下組の見せ場や、ユニゾンの組み合わせによる表現の幅も広がり、
グループとしての今と、これからへの期待が感じられるとても良いEPでした。よければぜひ一聴ください。
(「天気」というテーマの締め括りは、続く『雨のち晴れ』が担っています。通しで聴くのも本当お勧めです)
リリースイベントも9月中まだ続くようですので、気になる方はぜひ。(9/11柏、9/24新宿)
これからもこのグループの進化や、描いていく世界が本当に楽しみです。
今回もまとまりなく主観的な長文ですみません、
お読みいただきありがとうございました!
![](https://assets.st-note.com/img/1662214167625-QqN3AJWS00.jpg?width=1200)