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【PIT】22年シーズンを振り返る
プレーオフが盛り上がっていますね。今年からフォーマットが変わった事もありますが、劇的な展開や下克上が多いので当該チームのファンじゃなくても面白いです。
そんな中で今日は、ひと足早くオフシーズンに突入している我らがPittsburgh Pirates(PIT)の昨季と今季の成績を比較していこうと思います。
まずは個人成績について見ていきましょう。投手・野手別でのfWARとrWAR 、そしてそれぞれ1つずつ注目の数字をピックアップしました。その後にチームの勝敗、そして簡単な今季総括と続きます。
◆◆ 投手成績 ◆◆
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21年は1位がTDLでトレードした単年契約のスターター、2-5位のうち3人はリリーバーで、1.5以上が居ないという地獄の様な状況でした。
今季も1位がいわゆる“転売要員”だったのは変わらないものの、数年結果を残せていなかったJose Quintanaをここまで再生させて良い対価を得る事に成功。
Mitch KellerとJT Brubakerも昨季から一皮剥けた姿を見せ、(まだ物足りないものの)MLBのスターターらしくなってきました。
5位にブルペンの便利屋Duane Underwood Jr.が入るのは予想外でしたけどね。良い投球をする割に打たれる投手なので、FIPを用いるfWARならではでしょう。
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21年はfWARとそこまで変わりませんが、5人中4人がリリーバーという有様で、スターターの人材不足がより顕著に表れています。
こちらは失点率を使用しているので“内容よりも結果”となり、Underwood Jr.とは逆に打たれそうで打たれないChase De Jongがランクイン。
Roansy Contrerasは僅かな差で5位を逃したもののfWARでも0.9を稼いでおり、ルーキーとしては悪くないシーズンでした。
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投手でピックアップするのは投球回です。昨季チーム2位のWil Croweをブルペンに回し、Tyler Andersonは昨夏にトレード・Chad Kuhlはオフにノンテンダーでそれぞれ移籍しました。
しかし、前述の様にBrubakerとKellerがローテ投手として確かな成長を見せ、Zach ThompsonとBryse Wilsonも打たれながらマウンドに上がり続けました。
思い返せば昨季のBrubakerとKellerも似たようなものでしたから、2人はこの経験を糧に来季飛躍して貰いたいですね。
惜しくも圏外になったものの22歳のContrerasも95.0回を消化しており、スターター陣に関しては昨季よりずっと良くなったでしょう。
◆◆ 野手成績 ◆◆
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昨季はMVP投票でポイントを獲得したBryan Reynoldsですが、今季開幕からなかなか調子が上がらず(後半に戻したのは流石)数字を大きく落としました。
エクステンションしたKe'Bryan Hayesは年間通して背中の故障と戦っていたそうで、打撃は低調に終わりましたが守備で大きなプラスを生んでいます。
昨季は「上位4人とそれ以外」状態だった上に2選手をトレードで放出しましたが、Oneil CruzやJack Suwinskiらルーキー組が台頭。
Kevin Newmanもここ数年の打撃不振からやや持ち直し、守備もSSだけでなく2Bを堅実にこなすなどブレークした19年以来のプラス。
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こちらもfWARもほぼ変わりませんが、Hayesの4.0超と一流の数字に。悪い年でもこれくらいやってくれればエクステンションは成功になりそう。
CruzがfWARよりもずっと高いのは守備の影響で、fWARはUZR -7.5が用いられるのに対し、rWARはDRS +1が用いられる為です。
2B中心に3B/SSも守りながら、終盤は3番打者を任され二桁HRを放ったRodolfo Castroの台頭も嬉しいですね。来季はスマホをロッカーに置いてくる様に。
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野手でピックアップするのはHR数。昨季はReynoldsがぶっちぎりで、辛うじて二桁に乗ったGregory Polancoはシーズン中にリリース、Colin MoranはDFAされました。
GG賞に輝いた捕手のJacob StallingsはオフにMIAへトレードされ、Yoshi Tsutsugoは御存知の通り今季開幕から全く打てず夏にリリースされています。
1年前から顔触れはほぼ一新された訳ですが、ルーキーのSuwinskiとCruzが出場100試合前後で15HRを超えたのはポジティブな要素ですよね。
TDLでトレードしたDaniel Vogelbachと閉幕直前にDFAとなったMichael Chavisは既に退団済みも、Diego CastilloとCastroが11HRを放っています。
SuwinskiはReynolds不在時にCFを無難に守っており、CruzとCastillo・Castroは2B/SSが本職。センターラインを守れて長打力のあるルーキー達が4人もアピールしてくれたのは良い兆候でしょう。
◆◆ チーム成績 ◆◆
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さて、前回の“航海日誌”で書きましたが、終わってみれば今季のチーム成績は昨季から1勝の上積みしか出来ませんでした。正直なところ、この結果にはガッカリしています。今季は100敗する様なチームでは無かったと思います。
まず、最も誤算だったのはStallingsを放出した直後に獲得したベテラン捕手のRoberto Perezが開幕早々に左足を故障して今季絶望となった事でしょう。
これによりPITはシーズンを通して(ウェーバークレームとDFAで)捕手の入れ替えをし続け、今季だけで実に8選手が捕手として起用されました。
19年にMLBデビューを果たしてから(今季途中に加入するまで)通算30試合のTyler Heinemanと、今季デビューしたJason Delayという経験不足のコンビでは流石に厳しかったです。
とはいえ、今季前半は主力の不振や故障者の続出によりロスターの半分近くがプロスペクトと若手で占められながらも、彼らの溌剌としたプレーで予想以上に善戦していました。
2つ目の誤算は若いチームにとってメンターの存在が想像以上に大きかったという事です。上の画像の通り、今季はTDLが終わってから勝率を大きく落としています。
今年のTDLでPITはスターターのQuintanaとリリーバーのChris StrattonをSTLへ、DHのVogelbachをNYMへそれぞれトレードで放出しました。
特に後輩の指導に熱心という前評判通りに、半年間で投手陣から絶大な信頼を得ていたQuintanaが抜けた事はかなり大きかったのでしょう。良い時は良いですが、悪い時に歯止めが利かなくなった印象。
ただ、再建中のスモールマーケットチームに高く売れそうな1年契約のベテランをキープするという選択肢はありません。
実際に良い対価を得ているだけに、彼らをトレードした事が間違いだとは全く思いません。これはなかなか難しい問題ですね。
◆◆ 2022年総括 ◆◆
今季の開幕前に書いた「2022年シーズン展望」で今季についてこんな事を書きました。
> 昇格したプロスペクト達が適応するのを待ちつつ、既存の選手達を見極めしつつ、勝ちを意識していくのが今季のテーマと言えるでしょう。
(中略)
> とは言っても大きく負け越すのは間違いありません。67勝95敗~70勝92敗あたりに収まれば御の字なんですが、負けるにしても来年・再来年に繋がるポジティブな要素を求めたいところ。
プロスペクトや若手に経験を積ませつつ、ロスター整理(選手の見極め)はある程度進める事が出来ましたが、コンテンドを意識するところまで持っていく事は出来ず。
勝率.400の65勝までは3勝足りませんでした、162試合もあって僅か3勝です。「あの選手が離脱していなければ」「あの選手が不振じゃなければ」なんて思ってしまいますが…
いやいや、僕の認識が甘かったですね。そう順調に事が進む訳はありませんでした、また仕切り直しです。
ただ、このオフの動き次第で軌道修正は充分可能な範疇だとも感じています。それに関してはまた今後改めて書きましょう。
最後になりますが、結果的にWSHとOAKに次ぐ勝率ワースト3位でフィニッシュしたPITですが、それにより受けられる恩恵もあります。 ※昨季はワースト4位
昨オフの労使交渉で、MLBのドラフトもロッタリー制度(要は指名順のくじ引き)が導入される事が決まりました。勝率ワースト3チームはそれぞれ16.5%の確率で翌年の全体1位指名権を得る事が出来ます。
もちろん(ウェーバー順であれば得られた)全体3位よりも遅くなるリスクは当然ありますが、もしそうなれば21年のHenry Davisに続いて2年振りの全体1位ですよ。
開幕前の展望で「ドラフトが有利になるから負けてOK」のフェイズはもう過ぎたという旨を書いていますし、正直なところ複雑ではあるんですが…
今季だけで多くのプロスペクトが“卒業”した事で、マイナー組織は質・量共に1年前よりも薄くなっているので助かるのは事実です。
運命の抽選は12月頭に行われるウィンターミーティングで行われるそうです、絶対に1位とは言わないまでも3位以内は死守したいところ。要チェックですね。