イベントレポート / いちはら“福業”スクール第1期最終発表会
去る2月23日(日曜日)に「いちはら“福業”スクール第1期最終発表会」を開催しました!テーマは「あなたと始めたい人がいる」です。
のろしでは、これまでにも千葉県市原市を舞台に、遊休不動産の活用やアートプロジェクトなどを実施してきました。のろしの詳細はこちらをご覧ください。
今回の “福業” スクールでは、市原市(パブリック)と自分(プライベート)、両方のしあわせを生みだす “福業” を企画するべく、10人のスクール生が4日間のフィールドワークを実施。市民団体などを訪問し、新しい仕事・活動のタネを見出しました。その最終発表会の模様をお伝えします。
しあわせを始めよう
会場となったほのぼの保育園(市原市)では、発表会の1時間前から参加者を迎える準備を始めました。
会が始まる10時には地元の皆さんもいらっしゃって、保育園に漂う和やかな空気とともに開会です。最初のセッションは、 “福業” スクールを主催するのろし共同代表・峯川からのご挨拶です。市原市との付き合いが10年近くになる峯川からは、「長く続ける」と「手づくり」をテーマに導入が語られました。
“ “福業” というのは未来のしあわせが詰まったプロジェクトなので、長く続くことで地域が元気になるし、長く続くことで参加している人もしあわせになると思います。今回話を聞かせて頂いた市原の人たちは、大企業の社長やいわゆる社会の成功者ではないかもしれません。ですが、仲間内で集まって楽しく始めるというプロセスを大切に、地域を良くしている団体の皆さんでした。
そんな風に、自分たちの手でしあわせを手づくりしている人たちと出会うことから、 “福業” スクールを始めました。そして何よりも、私たちのように東京に住んでいる人と、皆さんのように市原に住んでいる人が一緒になって、地域のことを考えていく場をつくりたいんです”
“福業” スクールに向けた思いの共有をした後は、スクール生から “福業” 企画の発表です。
幸せを手探りした4日間
まず最初はOlive Commune(オリーブコミューン)を訪問した、山本さんです。ここは髙山さんという地主さんが植えたオリーブが生い茂り、今ではお祭りなども行われる地域の穏やかな交流の場です。
“人生が会社と仕事の往復だけだとしんどいなという個人的な思いがあって、居心地の良いサードプレイスをこの場所につくれると嬉しいです。髙山さんも自由に使っていいよ、と言ってくださったので実際に動きたいなと。ただ、中間発表会でも指摘いただいたんですけど、まずは信頼関係だなというのもあるので、しばらくは髙山さんのお手伝いをしながらデイキャンプをやってみたり、でも少しずつ始めていきたいと思っています”
続いて、川副さんからです。
“髙山さんがすごく積極的なので、サポートしながら地域住民が主人公になるような形が良いなと思います。オリーブコミューンは地域住民が集まる憩いの場だったりイベント会場だったりするので、企画の集客や運営で力になりたいです”
地元で長い間オリーブを育て続けてきた地主の髙山さん。その方のお話から、2人は土に根ざした実直な姿勢を受け継いだのかもしれません。
次は、#牛久にカフェを作りたいんだを訪問した、長谷川さんです。この取り組みはクラウドファンディングでも注目されている、市原市に吹く新しい風です。
“カフェの一日店長企画をしたいです。地域活性化に積極的な住民が多いから、店長をやるとそういう人とも交流できると思います。
一方で、地域活性化に前のめりじゃない人もたくさんいらっしゃるのは今回感じましたし、外部から来た人に空き店舗を貸すのは抵抗がある人も多いはず。そういう人たちにとって、地域が盛り上がるよりも住民同士の関係性が良くなることのほうがポジティブな変化だと思います。ですので、地域の困りごとを助ける掲示板企画をやりたい。困りごとを共有するのではなく、「助けられること、自分ができること」を共有して、それをお願いしたい人が声を掛ける仕組みです。時に高齢者が他の住民を助けるかもしれないし、若い層が助けるかもしれない。そんな関係性をつくりたいです”
続いて山田さんです。いろいろ迷いながら発表する姿が、すごく誠実に見えました。
”アイデアをいろいろ考えたんですけど、思いつかなかったです…。思いつかなかったなりに、ゆるく市原と関わっていこうかなと。自分がやりたいことと地域側がやってほしいことが重なって、それが地域の活性化に繋がること、それが今回の “福業” スクールだなと考えていて。その活性化というのはおそらく観光客が増えることだったり、住民が街を好きになることだと思うんですが…いろいろモヤモヤ考えて…だけど自分がやりたいことと地域側のやってほしいことで重なることが思いつかなくて。
なので、思いつくためにこれから通いたいです。通う時に楽しくないと続かないと思うので、楽しそうな企画だなと感じたいちはらアート×ミックスのお手伝いをやってみたいです。アートミックスにはたくさん人が来るので、その中で「竹コーヒー」を始めたい。市原市では、竹の活用をやっているので、コーヒーメーカーとカップそれぞれを竹で作って、来たお客さんに提供してみたいです”
同じ団体を訪ねても、1人1人受けとることも、考えるアイデアも全く違います。自分というフィルターをしっかり通して、切実な企画を形にしていけるといいですよね。
続いて、NPO法人報徳の会・内田未来楽校です。古い校舎で朝市をやったり、子供向けのワークショップを開いたり。そのルーツには報徳の精神があるという。なんとも奥深そうな団体ですね。まずは、藤原さんからです。
”地域の課題を教えてもらった時に、町内会も高齢化していたり、台風被害の時に隣近所の関係性が希薄化していることがあらわになったりと、住民相互の不安感をなくす活動をやってくれる人材が求められているというニーズがありました。
内田未来学校があるエリアは「報徳の精神」が根付いていて、そういう思いをシェアしていきたいので、ありがとう稼ぎの拠点(ギルド)をつくりたいです。お金を介さずに助け合う関係が住民同士、住民のウチとソトで形成されると良いのではと思います。無償の便利屋サービスのようなものを想定しています”
続いて、村島さんです。
”未来へ繋がる楽しい教育の場を、内田未来楽校につくりたいです。例えば、地域のものを自分たちでとって調理をしてみたら地域に愛着がわくと思います。他にも、竹を使ったものづくりやアートもやりたい。子供たちに、どうやったら竹が曲がるか、色がつくのか、考えるきっかけになってほしいです。学校の授業では子供たちが考える場が少ないと思うので、そういう表現ができる環境になれば良いなと。なにより、内田未来楽校にくれば面白いことがある、って子供たちが感じてくれると嬉しいです”
内田未来楽校、最後は飯田さんです。
”地域の人が語り部ツアーみたいに地元を案内してくれて、それがすごく楽しかったんですね。その時に、「このツアーは市原に住んでいる高校生とか子供たちにも参加してほしい!」と思ったんです。地元の高校生とも話したんですが、彼らも市原のことを知らないことが多くて。でも、そういう私たちの世代(飯田さんは高校2年生です)が地域のことを考えていけたらいいなと思っています。
もう1つ考えた企画は、ハザードマップをつくりたいです。台風被害の時に、避難所に繋がる道が封鎖されて避難がうまくいかなったという話を聞いて。新しくハザードマップをつくる必要があるんじゃないかと思います。市原市の既存のマップも見たんですけど、堅苦しくてあんまりよく分からないんです。小さい子供から大人まで把握できる、ポップなものをつくって、ハザードマップ巡りを町歩きみたいに実施してみたいです”
三者三様ですが、いずれも教育、共助の関係性、ハザードマップといったツールを活用しながら、新しいコミュニティ形成を模索する。そんな挑戦なのかもしれません。
最後は、古民家「イドクボンガ」の再生活動をしている上総アートミッションを訪れた、小田木さんです。ここはアートスペースや交流の場へと生まれ変わる予定の古民家です。ちなみに、イドクボンガという名前の由来は、元々の持ち主さんの屋号「井戸久保(窪?)」に千葉の方言「んが」(〜〜の家)をつけたそうですよ。
”私のアイデアはフォトコンテストです。市原市は、小湊鉄道が昔の映画みたいなレトロな感じがあったり、夕日もすごく昔な感じでいいなと思ったんですね。それぞれ市原市の「いいなー」って思うところは違うので、いろんな人が撮った写真を集めて、展示できたらなと思います”
以上でスクール生の発表は終わりです。短い滞在のなかで企画を考えるのは難しかったかもしれませんが、ここがスタート。
内田未来楽校を訪れた飯田さんは個人的に市原を訪れていて、積極的に地域との関係を深めています。運営側としても新たな発見でしたが、短期のプログラムだからこそ「もっと地元の人と話したい!もっと考えたい!」という、うずうずした気持ちを育んでいるようです。
しあわせを考えよう
そして午後の部は、「しあわせ」について考えるワークショップからです。地域と自分の”接点”を探すために、まずは「普段、自分はどんなことにしあわせを感じるだろうか?」と考えました。この時間を通じて、それぞれの企画をブラッシュアップしていきます。
*詳しいワークショップの様子は動画でどうぞ!
地元のご年配の方が書いた幸せを感じる瞬間には、ハッとしました。
”朝目覚めたとき、(自分も奥さんも)お互いに生きていることを確認した時の安心した気分”
しあわせの原型は、自分や大切な人が健やかに生きていることを、ただ素直に喜べることなのだろうと思います。頭をひねり過ぎず、シンプルにストレートに企画を磨いていきたいと姿勢を正しました。
ワークショップの最後は、ファシリテートを担当してくれた小深山さんから。市原に住みながらウチとソトをつなぐ彼と、今後も一緒にチャレンジしていきたいです。
”皆さんが市原に関わってくれて嬉しいです。内側の人間だけで動いていても難しい部分があると思います。田舎に行くと「ヨソ者が来た」、と言われることもあるけど、ソトの人が関わりたいって言ってくれる部分を育てていきたい。アイデアを出して終わるのではなく、やってみなきゃ分からないことも多いので、ぜひ行動を始めてもらえたら嬉しいです”
ワークショップを終えて、ブラッシュアップされた企画の数々。たくさんのアイデアが出たので、列記しておきますね。
*オリーブコミューン
キャンプ企画の日中は、DIYワークショップとして、ハーブを植える、道を開拓する、ツリーハウスをつくる、などを行いたい。髙山さんと参加者で汗を流したい。夜は円卓を囲んで夜空酒場を開く。
*フォトコンテスト
写真を見せながらバックミュージックを流す。既存のフォトコンに話を聞きに行く。まずは企画者の小田木さんが撮った写真の展覧会を開く。
*竹コーヒー
企画者の山田さんがブラックコーヒー飲めない(!)ので、ラテアートにもチャレンジしたい。
*内田未来楽校
シェアハウス的なノリを入れたい。多文化を受け入れる、人との繋がりを重視する。楽しい感情を共有する仕組みをつくりたいプロジェクト化するために、どんどん現地で行動していきたい。
*イドクボンガ
ゲストハウスにしてみる。イドクボンガにこたつを置いてカフェ風にしたい。
一歩目の共有
4時間に及ぶ最終発表会もまもなく幕ぎれ。最後は、“福業” スクールの振り返りと参加者それぞれがどんな行動を始めるのか、言葉にしました。
川副さん(オリーブコミューン)
”髙山さんが困っている時にできるだけ駆けつけて関わっていきたいです。情報共有もみんなでやっていきたいです”
長谷川さん(#牛久にカフェを作りたいんだ)
”夜にみんなで料理作ったりお酒を飲むのもすごく楽しかったです。高校生や社会人など世代が様々で、それぞれの考え方を知ることができて面白かった。今年1年は忙しいので主体にはなれないけど、みんなのプロジェクトをサポートしていきたい”
村島さん(内田未来楽校)
”私の幸せと内田でやっていきたいことが合っているなあと思ったので、月1回のペースで通いたいです。まずは女性の共感者を増やしていこうと思います”
藤原さん(内田未来楽校)
” “福業” スクールは実践的な内容が多くて、受け身ではいられない環境が良かったです。地域の住民とたくさん話すことができました。報徳の精神をもとに無料の便利屋サービスみたいなことをやろうと思うんですけど、まずは自分がお手伝いをやっていきたいです”
山田さん(#牛久にカフェを作りたいんだ)
”最初は軽い気持ちで来たんです。でも関わるにつれて、ちゃんとしなきゃ!って思って、少し苦しい時もあったけど、自分ができることを精一杯できれば良いのかなと思えるようになりました。竹コーヒーに加え、竹カフェラテも頑張っていきたい。月に一回くらいのペースで付き合っていきたいです”
飯田さん(内田未来楽校)
”終始ワクワクした状態でした。自分の興味やアイデアを形にすることができると思うと、楽しみです。勢いだけじゃなく、中身のある活動をしたい。これから大学受験に入るけど、市原市民の防災意識を変えていきたいと思っているので、本気で市原に関わることをモチベーションに受験も頑張りたいです”
小田木さん(イドクボンガ)
”年齢層が幅広くて、社会人ともいろいろ話せてすごく良い時間でした。最初はフォトコンテストをやろうと思っていたんですけど、まずは自分が撮った写真を皆さんに見てもらいたいなと考えています。ありがとうございました”
発表会を通して、パブリックとプライベートが重なる部分を追求できたのではないかと思います。お越しいただいた皆さま、ありがとうございました。“福業” スクールは2020年度も継続していきますので、1期生の挑戦と、まだ見ぬ2期生の活躍をお楽しみに。ぜひいろいろな形で関わってくださると嬉しいです。
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