ヨーグレット中毒で手が震える
一日中ヨーグレットを食べている。仕事中にパクっ、映画鑑賞中にパクっ、朝ごはんにパクっ。ヨーグルトはあまり好きではないのに、タブレットにされると滅法弱い。トマト嫌いのケチャップ愛好家と同じ心理だ。
しかも最近は「ヨーグレット MINI」なるものが発売され、歯止めが効かなくなってきた。これはヨーグレットをさらに小さくして糖衣させたもので、見た目は殆ど錠剤の薬である。二、三粒取り出し、手を震わせて「も、もうこれがないとやってらんねえぜ……」と呟く私は、正にヨーグレットジャンキーだ。更生施設に幽閉されても文句は言えまい。
今日もNetflixで映画を観つつ、飽きもせずヨーグレットをポリポリしていた。観ていた映画は『誰も知らない』。是枝監督のじめじめ邦画で、あらすじを予め読んでいた私は序盤から心を抉られていた。
一時間程経過し、さあここから物語が進むぞというところで画面の真ん中で白い輪がくるくると回り始めた。演出かと思ったが、単純に読み込めていないだけだった。
どうしたどうした、早く彼らが不幸になる様を見せてくれ! そんな私の叫びが虚しく響くだけで、タブレット(電子機器)はうんともすんとも言わない。自分の尻尾を追いかけ回す犬のように、線は画面上を走り続ける。
こうなっては中々進まないので、休憩しようとスマホを取り出した。
……だめだ。スマホも繋がっていない。有線で繋がっているパソコンも開いてみたが、これもダメ。どうやらインターネット環境に問題が発生したようだ。
モデムを確認すると、見たことないくらい色々な光が点滅していた。すごい。花火みたいで綺麗だ。異常を必死に訴えるように、或いは命の終わりを燃やし尽くすようにそれは光っていた。
いやいや、そんなchillな場面ではない。早く映画の続きが観たいんだ。私は再起動やら初期化やら差したり抜いたりやら出来ること全てを行った。しかし、それでもインターネットは繋がらない。
調べてみたところどうやらマンション側に問題があるらしく、それなら今私がやれることはない。
時刻は二十三時。寝るには少し惜しい時間。
だが、ネットが繋がらないのに何をすれば良いと言うのだ。私の日常は基本的にパソコンをかちゃかちゃするか、スマホを弄って終わる。読書やゲームをするときも、音楽かラジオをストリーミング再生しながら行うわけで、こうなっては何もできない。
ああ、沈黙の夜が怖い。正確には隣から大音量の「ゆっくり実況」が漏れているので沈黙ではないが、それはそれでイライラする。
私はただ少年少女が不幸に見舞われる映画が観たかっただけなのに、なんて仕打ちだ。まあ一応キャリア回線はあるので観れないこともないが、月初に大量に使ってしまうと六十ギガをすぐに越えてしまい、通信制限がかかるかもしれないのでやめておいた。
というか、明日からの仕事はどうなる。もしも朝までに復旧されなければ、支障が出まくるぞ。
生活の根幹を担う作業が家で出来ないとなると、早起きしてネット環境があるどこかに行く必要がある。半開きの目を擦るインターネットゾンビとして、街を彷徨わなければならない。
困り果てて疲れてきた。もういいや、今日は早く寝よう。私はヨーグレットの最後の一粒を口に入れ、噛み砕いた。ヨーグレットジャンキーの私は、それ以上にインターネットジャンキーだった。
追記:朝起きたら直ってた!やったー!