お客様アンケートなんてやめてしまえ!(高校生向け)
この記事を読んで高校生のあなたが得られるかも知れない利益:アンケート調査の欺瞞。データ至上主義への疑問。経験という価値を再考する。
アンケートは必要か
僕の生徒のKくんはすごい切れ者で、いつも彼の話にはうならされます。
今日のはなしは、アンケート調査への疑問、でした。
これは、Kくんがしょっちゅう通うバイク修理店での話です。
Kくんが、最近お店に行くたびに、アンケートを求められる、というんです。
言葉遣いから、満足度まで、10項目ほどのアンケートを求められるそうなんです。
Kくんいわく、「目の前にサービスしてくれた人がいるのに、悪い評価なんか出来ないですよ」。
まったくそのとおりですね。
それだけならともかく、Kくんはその店のスタッフからこんなことを打ち明けられた、というのです。
アンケートなんてやらないほうが、お客さんのためには良かった、とKくんは言うのです。
評価を数字で決める理不尽
アンケートは最近はデジタルを意識して、数値で答えるものばかりです。
しかし、数値で表すことが出来ないことはたくさんあるし、そもそもアンケート自体、主観を反映するものに過ぎません。
理系のKくんはこんなことを言うのです。
数字になった途端に、「客観性を確保した、これで科学的になった」と言わんばかりに、景気判断の方程式に入れて、それを政府は大々的に発表してきました。
数字にすると、人はひれ伏すんですね。
でも、人の能力も、景気も数字なんかでは測れないのです。
形式知が答えなのか?
今日の大学講義は「暗黙知と形式知」でした。
暗黙知とは、数字や言語で表せない概念です。
形式知とはそれと真逆で、数字や言語で表すことができる概念です。
今、日本企業は職人が50年かけて習得した暗黙知を捨てて、AIを使ってそれを形式知の形にしようと必死です。
手作業で大福を作る職人の仕事と、機械とアルゴリズムを使って、統一された品質で大量に大福を作るシステムを、映像で比較したものを学生に見せました。
もっとも後者は大福は大福でも、ロッテの”雪見だいふく”ですけれどね。
映像では、ロッテの製造工程は、職人の技術に対抗し、温度、湿度などあらゆるデータを駆使して、理想の美味しさの最高条件を特定し、お客さんが望む品質を追求している様子を伝えています。
雪見だいふくは、職人の手作業でなくで、データで作られているのです。
AIがデータ解析を後押ししている時代、でもあります。
データは先進的か?
人の評価にせよ、雪見だいふくにせよ、データ至上主義は正しいのでしょうか。
確かに人の評価を数値化すれば、上司はラクです、考えなくていいから。
「数字ではっきりしている」と言えばいいのですから。
でも、お客でさえ社員の働きぶりを、数字に置き換えることが出来ないのが現実です。
機械がアルゴリズムが作成した数値を信じて、部下の評価をする上司ってどうなんでしょう。
今後はどんどんAI(人工知能)が、人間の代わりに「最適値」とやらを提言する流れが加速するでしょう。
しかし、それが本当のアンサーなのでしょうか。
僕はいくらAIが進歩しても、50年かけて習得した職人技には遠く及ばない、そう思います。
寿司ロボットがいくら最新のAIを搭載搭載したって、すきやばし次郎のあの握りを再現はできないのです。
世の中はしきりに、形式知だとか、見える化だとか、AIだとかを喧伝していますが、それは一種の洗脳、プロパガンダであり、誰かにそう思い込まされているだけなんじゃないですか。
現代人は、経験という価値に重きを置かず、チャットGPTが何でも答えを出してくれると信じています。
チャットGPTを使わないのはバカ、こういう風潮があるのですが、あなたも今それを問われています。
経験や観察から、また地道な勉強から本質を追求しようとするのか、それとも日進月歩の進化を謳うAIを神と崇めてすがるのか、どっちの道を行くんだ、という問い、です。
僕はこれからもチャットGPTは、使いません。
野呂 一郎
清和大学教授