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たびの空から
機械機械の世の中だけど、
ほんとうに知りたいことはそこには無くていつもとまどう。
答えはいつもひとつだと、
あなたは云うけれど私にはどうもピンと来なくて。
旅をする、ってことは
何か答えを見つけることだろうか。
私はどうやらそうではないという気がしてきた。
そこにあるのは”答え”ではなく、さらなる”問い”だ。
私も明日、仕事で旅に出る。
長い旅になる。
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通りはほの暗く、やってきた一人の娘さんが、ぶつかりそうになるまで気づかなかった。十七、八歳の細面の子で、われわれの胸もとを通りすぎるとき、
「おやすみなさいませ」
と、一礼し、鮎のように去った。赤いスエーターときれいな声だけが、耳目にのこった。
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