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巨大化

「はい、これなんですけどね。
いかがでしょう?」
うんうんとオガワさんは頷いてる。
名刺交換した試作屋さん。
段ボールから
【雲の型】をした試作品を出してきた。
これが
のちの
【星のクッキー屋さん】
【星のアクセサリー屋さん】になる。
試作というのはこちらからの
三面図、設計図通りに、プラ板やキャスト、
高密度の発泡、バルサ材などで作ってくるもので
色はついてない。
だからなんだかわからなかった。
どこがクッキー屋で
どこがアクセサリー屋さんなんだろう?
雲から星の型のプラ板が出て、
それを倒すとテーブルに早替わり。
それが売り場となって
アクセサリーやクッキーの付属品を
並べる・・・なるほど。
「とりあえず見本市間に合います。
ありがとうございます!」
とオガワさん。
打ち合わせ室を出ると
「これタケヤマの担当だから、よろしくね」
と優しく
だが、どうしたらいいのか?
「フォローするから大丈夫。
雲の部分、今回キャストで作ってもらったので
あとでウサミから塗装教わって。
シンデレラシリーズはパールカラーで
いくらか、調合もおそわってね。」
はい、わかりました!
〔よくは、わからないけど・・・)
チームに戻ると
広々と広がる空と青戸の町。
雨が降り出していた。
マキさんとウサミさんが
コーヒーを片手に外を見てる。
お茶の時間?には早いか。まだ2時前。
食後の一服か。(お昼終わってるけど)

「アミさん、大丈夫かねー?」
「あ、なんか出かけてましたね。
バイクでしょ?原付。」
「雨だもんね。」

ピカっ!と稲妻が光る。

ゴロゴロ!!
雷だ。

「タケヤマは、リカちゃんの準備は今週中にすれば
大丈夫だから。試作ドレスが遅れてるんだわ。
レイくん、いいよね?」
「私たちは大丈夫よー。」
「さきにその星のおみせやさんの塗装、やっておいて。見本市のメインに飾るから。」
早くも担当をいただけてうれしい。
反面、最初から関わっていたものではないので
なんだかわからず不安ではある。

ピカピカピカッ!

ゴロゴロゴロゴロ!!

「あ、ヒョウだね。」
「うわーすげーな。珍しい。」
「アミちゃん、大丈夫かね?」
「雷、落ちたりして。」
「アフロになってね。ドリフであるよね。
加藤ちゃんが爆発して。」
「あははは!やめてくださいよマキさん。」
「巨大化してね。」
「サンダ対ガイラ。」ウサミさんは映画や特撮が好きらしい。話が合いそう。お話ししたい。

あははは
わははは
「ひっどいなーウサミくん。
そこまで言ってないよ、私。」
「いやマキさんが巨大化っていうからw
想像しちゃったんですよ。
窓いっぱいにアミちゃんの顔があるのを」
わーーははは
「やめてーよーwwポンちゃん!(ウサミさんの別名)」
マリさんもお腹押さえて笑ってる。
レイさんはキョロキョロして
「え、なにが?」
「だからねアミさんが巨大化して!」
プハッ!!
レイさんがひとくち含んだ紅茶を吹いた。
いやあははは!!
やめてやめてーー!
ケイコさんだけなんだがわからず
ニコニコしてる。

リカチームが笑いで包まれた。

自分も巨大化したアミさんが
青戸の町を壊しながら
初代ゴジラのように歩くさまが
見えた。
可笑しくなって、堪えながら
笑った。

「ウサミ、悪いこと言ってるなーーW
アミちゃんに言ってやろー。」
「オガワさん、勘弁してください。
怒ると怖いから。」
「ほんとキングコングみたいになるからね。」
マキさんがかぶせる。
またドット笑う。

外は更に雷。

「わーー楽しそうだなー。
なになに?」と
ミツオ課長がホラーボールのフィギュアと
ビークルを抱えて入ってくる。
また説明して受ける。

リカチームって冗談好きなんだ。
アミ先輩、いじられてるけど
好かれてるんだなー。

「ただいまーーー・・・」

水を打ったようにシーーン。

んがんぐ。

足を引きずり
暗い顔のアミさん。

「あれ?どうしたの?えっ?!!
血が出てるよ!
ちょっとウサミくん、車!病院連れてってあげて!」

膝がパックリ割れて血が出てる。

「イタタタタ!!!
ちょっとポンちゃん(ウサミさんの別名)
肩貸して。ダメ。」
「どうしたの?!」
「バイクで雨ん中転んで。。。」

えーーーっ!?

やはり雷に打たれたのか?
「早く行ってきて。早退してもいいから。」

「大丈夫、大丈夫。擦り傷ですから。」
しかし膝はパックリ割れてる。
切り傷か、それほどの出血ではないが。

「いたあーーい!」
「ほらあー、ウサミ行ってあげて。」
オガワさんも心配顔。

「もちろんです。
アミちゃん、行くよ。」
「ポンちゃん、ごめんね。」
「気をつけてねーー」と
マリさん。
レイさん。
ケイコさん。
みんなで心配。

「今日のタケヤマくんの歓迎会、
無理かもね。」

この頃の私は、ほんとに
一滴も酒が飲めず
歓迎会自体はうれしいし光栄だったが
不安もいっぱいでした。
飲まされて潰されるとか?
しかし、それも社会人の一歩。

と思いつつ、
塗装を教わるウサミさんが
行ってしまった。
仕方ない。
リカちゃんにストッキングを
履かせる作業を再開することに。

白衣を着たヨギさんが戻ってきた。
「雷すごいねーー。アミちゃん、大丈夫かね?」
事故ったのを知らない。
ズレてる良い味をだすヨギ先輩。
いつのまにか

雨もやみ 
雲の切れ間ができ
明るくなってきていた。

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