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花園!組み立て部
長く感じた金型部門を開放されると
ラストの組み立て部門。
よく昭和の描写でてくるベルトコンベアで
人がいれこに配置され、各パート組み立てをする、あれです。
これが本当のモダンタイムス。
いつものように朝到着。組み立て部門につくと何かザワザワしてる。みると皆さん女子。それも今まではベテランの方が多く見られたが、ここは若いお嬢さんばかり。同期で福島の高校卒業と同時にタカラに入社した娘さんたちも何人か見られる。
「おはようございます!」
「あ、おはようございます。ここに配属なんだね。」
18歳かな?圧倒的に若い。幼い。
私は浪人してるから、23歳になる年でした。
顔を赤らめてる。
まわりもザワザワ。
あれ?あ!このひとたちも
例の新人男子投票に加わってるのか?!
「前髪に気にしてるところが
純情だよね。」とナガレくん。
その花園が縦に並び、ベルトコンベアの
川を挟み、ひとつの玩具を組み立てて行くのだ。
女の中に男が2人!と囃し立てられそうな状況。
ブーーー♩
とブザーが鳴ると
奥から玩具のパーツが流れてくる。
それぞれ与えられた作業を、こなし
お隣さんに渡す。
要領悪いとそこでリズム、流れが止まる。
緊張が走る。
ンゴォォーー♩
ベルトコンベアが動きだす。
はたして奥から流れてくるもの。
それは大型【赤ちゃん】人形の首。
首、首、首・・・・
(えっ?!ええっ?!)
女子は無表情。たんたんとしてる。
(えーーーー)
顔、顔、顔・・・
「はい、ソフビで出来た顔をひっくり返す。
口のところに油を塗って!
このお人形は喋るので
口の動きがポイントです。」
事前に聞いてはいたが、ベルトにあどけなく笑う赤ちゃんの首が並ぶと引く。人形だから
人間のそれとは明らかに違うがひるむ。
「はい!研修の方、遅いよ。」すこし年上と見える若い女性から檄が飛ぶ。
「は、はい!」
私、失敗するんで。不器用なんで。
早くも焦りの汗が滲む。
「はい!はい!はい!はい!」
餅つきのようなタイミング、ペタン、ペタンという
感覚で進めて、お隣へ渡す。
皆さん周りを気にせず、自分の与えられた
仕事をこなす。
グン、グン、ググ・・・
と言う感じで
いたいけな赤ちゃんの笑顔が
ドカドカと
流れてくる。
ママ〜、抱っこぉ〜。
ママ〜、お腹空いた〜。
などと音声でしゃべる
【こんにちは赤ちゃん】という
当時のタカラ、イチオシ、期待のおもちゃであった。
タイトル、梓みちよか。
ママ〜、はやくぅ〜
いかんいかん。
余計なことを考えたら。
たんたんと作業をこなさなくては。
集中、集中。
あっという間に、お待ちかねのお昼となった。
女子の皆さんと食堂へ向かう。単純作業。
これはなかなか疲れる。
クスクス、ケラケラと楽しげな声が響く。
変な視線、単に珍しいのだろう、を感じながら
食べ終わり いつもの芝生へ向かう。
途中、破棄するものを集める場所がある。
そこには箱いっぱい
瞼をパチパチさせることができる目玉が
並んでる。「え?!シュール」
お饅頭のように並んでる。
そばにいる管理の方へ
「研修のものですが、あのーーこれいただいていいですか?」
「ん?あ、いいよいいよ。それ不良品だから。」
パチパチする目玉は確かに動きが悪い。
半とじのものとか。たしかに不良。
二十四の瞳。揃ってる。
今ならダメでしょうねー。いくら捨てるものであっても、社外に持って出ては。しかも、一存であげちゃう。
「ねえねえ、見て。これ。すごくない?
眼だよ眼。もらったよ。」と私。
「ふーーん。」興味ないナガレさん。
「あの子たちは、いわゆる集団就職なのかねー。」
女子の方に興味あるのね。
福島出身の社長の政策。
積極的に福島、東北出身な方をお世話する。
ボーイスカウトに所属していたとき、
リーダーが余興で「あぁ上野駅」を歌った
のを思い出した。
井沢八郎。
工藤夕貴の父さん。集団就職の悲哀ある歌詞。
親元を離れて、寂しいのだろうか。
午後もまた、その子たちと生首を囲む。
赤ちゃんを作るのだ・・・
ん?子作り?!
不謹慎にもほどがある。