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尾崎豊「僕が僕であるために」と学園時代から新しい類似世界へ③


「君は、自分らしさを守り抜くことが、

これほど難しいと感じたことはあるだろうか?」

尾崎豊の「僕が僕であるために」という曲がある。

その歌詞には、自分らしさを守り、立ち続けるための葛藤や苦悩が描かれている。

あの頃、自衛隊という閉ざされた世界で過ごした自分にとって、

その問いかけは心の深い部分に刺さるものだった。
上下関係が絶対の環境。

年下の上司に振り回され、24時間監視されるような生活。

その中で「俺は俺でいられるのか?」と何度も自問した。

地獄のような日々を、尾崎の曲とともに振り返りたい。



地獄の始まり──赴任初日の衝突

すべては赴任初日から始まった。新人歓迎会で、年下の生意気な青年と些細なことで口論になった。まだその青年が自分の上司だと知らなかったのだ。私服姿で現れた彼を、ただの若造だと思い込んでいた。しかし、後にその人物が上司であることを知り、自分の立場の不利さを痛感した。

この出来事は単なる口論に留まらず、その後の人間関係や生活全体に暗い影を落とすきっかけとなった。自衛隊の世界では、「階級」というルールがすべてを支配している。理不尽であろうと、従わざるを得ない。初日の衝突は、「地獄の1丁目」と呼ぶにふさわしい日々の幕開けだった。


24時間の理不尽な環境と年下の上司

普通の会社なら、年齢や経験を考慮して上下関係が成り立つ。しかし、自衛隊では違う。高校を卒業してエスカレーター式に自衛隊に入った年下の青年が、自分の上司だった。自分は社会経験もあり年齢も上だが、それはこの世界ではまったく意味を持たない。

さらに、ここでは仕事が終わった後も状況は変わらない。基地内で生活をともにするため、嫌な上司と24時間顔を合わせ続ける必要があった。仕事もプライベートも、完全に階級の支配下にある環境。どれほどのストレスと孤独感が自分を襲ったか、言葉では言い尽くせない。


記憶すべきことの重圧と外出制限


新人研修が始まり、さらに過酷な日々が続いた。基地内の地理や保安ポイントをすべて記憶することが要求されたが、その量は膨大だった。覚えきるまでは外出すら許されず、基地という閉ざされた空間に閉じ込められる毎日だった。

加えて、上司との関係は悪化する一方だった。マラソン訓練では上司より速いことで嫉妬を買い、陰湿な態度を取られることもあった。こうした小さな出来事が積み重なり、自分の精神を蝕んでいった。


自由への渇望と葛藤

「自由」という言葉が、これほど遠いものに感じられることがあるのだろうか。尾崎豊の「卒業」や「15の夜」を口ずさみたい気分だった。
理不尽な上下関係と閉塞感の中で、ただひたすら時間が過ぎていく。
あの曲が描く「自由への渇望」が、自分の心に突き刺さるようだった。


地獄からの解放──退職の日

満期退職の日、ようやく自由を手にしたと感じた。
その瞬間、自衛隊という閉じた地獄から抜け出せた気がした。あの時の苦しみが、退職後の自由をこれほど甘美なものにするとは思いもしなかった。
尾崎豊の歌詞がずっと心に響いていた。

「僕が僕であるために」。あの曲を支えにした日々だった。

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