ジャズを軽く聴き始めたい人への軽い名盤紹介 ㉖ スタンダードの名手 EDDIE HIGGINS(エディ・ヒギンズ)
こんにちは!
厳しかった冬の寒さが少し緩み、しばらくは平年並みに過ごせるという事ですが、まだ寒いことは寒いですね。
今日は、そんな寒さなんか吹き飛ばせ! という感じで、スタンダードの名手とも謳われている、エデイ・ヒギンズの特集をやりたいと思います。
ヒギンズのプレイは、そのリリカルさをビル・エバンスと比較され、さらにそのスィング感はオスカー・ピーターソンなどとよく比較されてきました。
それだけ多くの抽斗をもっているミュージシャンだという事が言えます。
私見ですが、その演奏は優美・上質という言葉が似合っているように感じます。
そしてヒギンズは、西暦2000年前後に一気に数々のリーダー作を吹き込みました。その殆どはスタンダード曲で占められています。
あまりにも多く出ているので、どれから聴けばよいのか分からない方も多いと思います。そこで、中でも特に人気の高い(であろう)三枚を選び出そうと思います。
それはとても困難を極める作業でした。
『Again』The Eddie Higgins Trio(1998年)
personnel
Eddie Higgins ( p )
Ray Drummond ( B )
Ben Riley ( Ds )
一曲、何か毛色の違う曲が入っています。3曲目の「Gion Kouta (Kyoto Blues)」という曲です。
この曲はヒギンズが日本に滞在していた時に聴いた「祇園買うた小唄」という曲がモチーフになっているらしく、この曲は完全にヒギンスオリジナルですね。イントロ・アウトロなどは、お琴の音が聴こえてきそうな雰囲気ですが、中身はしっかりスイングしています。
このアルバムはビル・エバンスを意識したのかしないのか、エバンスで有名な曲が3曲入っています。
「My Foolish Heart」「My Romance」「Polka Dots And Moonbeams」の3曲です。
そしてこの3曲がこのアルバムの最大の聴きどころになっていると思うのです。
「My Foolish Heart」と「My Romance」は、エバンスの『Waltz for Debby』での演奏が決定的なものとなっています。ここで聴かれるエバンスのプレイは非常に深い、リリカルな演奏ですが、ヒギンズは2曲ともスイングしてます。面白いですね。
「Polka Dots And Moonbeams」は、エバンスの『Moonbeams』というアルバムにメインの曲として収録されています。ここでのエバンスのプレイは面白くて、アドリブの中に「Polka Dots~」のメロディーをはっきりと際立たせるのではなく、チラホラと頭が出てはまた引っ込む、という高等技術を使っています。
ヒギンズは、はっきりと原曲のメロディーを際立たせた演奏です。
どちらがお好みか、聴き比べるのも面白いと思いますよ。
このヒギンズのアルバムは、全体的にスイングしています。特に最後の2曲はドラムやベースとのソロ廻しなどもあり、楽しく終わります。ぜひ聴いてみていただきたい一枚です。
『Bewitched』The Eddie Higgins Trio(2000年)
personnel
Eddie Higgins - piano
Jay Leonhart - bass
Joe Ascione - drums
『魅惑のとりこ』という日本語タイトルがついたこのアルバムも、聴きどころ満載です。
まず一曲目、私が大好きな「What A Diference A Day Makes」。原曲のメロディーがいいですね。「縁は異なもの」という日本語タイトルがつけられています。
時によっては最後の ’’makes’’ は ’’made'’ と表記されていることもありますが、同じ曲です。
このアルバムもエバンスを意識したような選曲なんですけど、気のせいかなぁ...。特に4曲目の「You Must Believe in Spring」なんて、エバンス以外では私はまず思いつけないです。
次の「Beautiful Love」なんて曲も、あの有名なヴィレッジヴァンガード三部作を象徴しているような曲だし。
ま、あまり考え込まずにここではヒギンズのスウィングを楽しみましょう!
それでは次に、トリオものじゃないやつを一枚。
『Smoke Gets in Your Eyes』Eddie Higgins Quartet Featuring Scott Hamilton(2002年)
personnel
Eddie Higgins (piano)
Steve Gilmore (bass)
Bill Goodwin (drums)
Scott Hamilton (tenor sax)
なんざましょ、このいけないジャケットは。
でも、色っぽくも見えますが、見方を変えると死に悶絶している人のようにも見えます(笑)
それはさておいて、一曲目「Melancholy Rhapsody」のイントロのテナーサックスからいきなりエロい音が飛び出てきます。
テナーの音ってエロイですよね。アルトは良いフレーズが吹けて何ぼの世界ですが、テナーは音を出すだけでジャズになる。ずるい楽器です。
かといってこのアルバム、バラードばかり入っているわけじゃなくて、スィングしている曲とバラードとが塩梅よく散りばめられており、曲によってはソロ廻しもあったりして、楽しく上質なアルバムに仕上がっています。
こんなに楽しいエディ・ヒギンズのアルバム、2000年前後に発売された数々のリーダー作は、どれをとっても素晴らしいものばかりです。音質も良く、スタンダードの勉強にもなりますから、お宅のお茶の間に是非一枚、いかがでしょうか。
今回も最後までお付き合いいただき、誠にありがとうございました。