ジャズを軽く聴き始めたい人への軽い名盤紹介②(ソロピアノ編)
こんにちは。
前回はノリノリ全開の Zoot Sims のアルバムのご紹介でした。
今回は少し秋っぽい、愁いを帯びた名盤を探してきました。ソロピアノの作品2枚です。
初心者が入りやすいソロピアノ作品としては、キース・ジャレットの『The Melody At Night, With You』(1999年)はおススメです。
この作品は、極力アドリブを廃し、原曲の持つ美しいメロディーを生かした演奏がなされています。個人的には一曲目の「I Loves You Porgy
」が好きです。
この曲はビル・エヴァンスも数多く録音していて、かの有名なアルバム『Waltz for Debby』にも収録されています。
インタープレイで有名なこのアルバムですが、この曲だけはメロディーの美しさに気圧されたのか、スコット・ラファロ(ベース)も無駄な音は出さずに、ピアノの美しいメロディーを生かした演奏がなされています。
話を元に戻しましょう。この『The Melody At Night, With You』は、キースの長年に及ぶ「慢性疲労症候群」という病との闘いが終わり、復帰作第一号として発表され、話題となった作品です。
全曲がBPM50前後かそれ以下の速さで弾かれていて、ただのムード・ミュージックと捉える輩も少なくはなく「甘い」「手ぬるい」との批判も多くありましたが、病からの復帰の挨拶としては最上のものではないでしょうか。
とにかくキースが弾けば、なんでもジャズになる。それで良いではありませんか。
もう一枚、極上のピアノソロ作品をご紹介します。
ハービー・ハンコック『The Piano』(1979年)
この作品は、日本で録音・制作されたものです。ハービーにとっては唯一のソロ作品となります(今後制作される事がなければ)。
この作品が発表された1979年は、ハービーにとっては多忙な年でした。
日本のシンガー、笠井紀美子との共演アルバムや、チック・コリアとの共演アルバムの制作、そして自身のアルバムも2枚、この年に発表しています。
日本で録音・制作されたという事は、笠井紀美子さんの関係で来日していたのでしょうか、詳しいことは分かりませんが、その多忙さの合間を縫って、この奇跡的に美しいソロ作品が録音されたのです。
1〜3曲目はスタンダードナンバー、4曲目以降はハービーのオリジナルです。
全曲、非常に美しい、というのが正直な感想です。ピアノっていうのはこんなにも美しい旋律が出せる楽器なんだと、改めて感動を誘う作品だと思います。
1曲目の「My Funny Valentine」と2曲目の「On Green Dolphin Street」は、良い意味でちょっとだけいじり過ぎたような感じもしますが、全体的には美しく仕上がっていますね。
そして4曲目の「Harvest Time」から5曲目の「Sonrisa」への流れは美しいとしか言いようがありません。鳥肌が立ちます。
このアルバムの唯一の弱点は、全体で38分しか無いというところです。
短い、短すぎる! ハービーよ、もっと聴かせてくれ! という気持ちになります。
別テイクが21分収録されたCDも存在しているようですが、Amazon で見たところ中古品しかなかったので、当たればラッキーという感じです。
話は逸れますが、別テイクを載せるというのはどうなんでしょうね。
ミュージシャンにとっては作品としてのコンセプトが崩れてしまう、という感じにはならないのでしょうか。
ファンからすれば嬉しいかもしれませんが、僕は必要ないんじゃないかと思っています。
ということで、今回はソロピアノ作品二枚をご紹介しました。
他にもピアノソロ作品でオススメしたいものは沢山あります。
今日出てきたキース・ジャレットでは超名盤『ケルン・コンサート』
奇跡のインプロビゼーションと言われています。
キースには沢山のソロ作品がありますが、僕の苦手なフリースタイルの演奏が入っていたりで、今一つオススメできないものが多いのです。『ケルン・コンサート』は全体的にリリカルであり、自信をもってお勧めできます。
他には、ビル・エバンス『Alone』
セロニアス・モンク『Solo Monk』
モンクも数枚のソロ作品がありますが、この作品は特にスタンダード曲が多く、一番聴きやすいと思います(一応、『セロニアス・ヒムセルフ』が名盤とされていますが、僕にとっては聴いててあまり面白くない)。
次回は、さて、どんなテーマでいきましょうか。
次回はトランペットの名作にしましょう。
最後までのお付き合いありがとうございました。