高中正義『虹伝説』(1981年)は、J-Fusionの到達点
来歴について
こんにちは
今回は、私が最も敬愛している日本人ギタリスト、高中正義氏の『虹伝説』についてです🌈。
私が高校生時代に発売され、それこそ毎晩毎晩聴きまくったアルバムです。未だに、全曲ギターソロもキーボードソロも口三味線で歌うことができます。
ギターソロの方も、大体の曲はコピーしました。当時は色んな有名どころのギタリストの新譜が出ると、リットーミュージックさんがアルバム丸ごと1枚のタブ譜が載ったスコアを販売していました。あの時代は良かったなぁ。
レコード時代は2枚組だったんですが、CDになったら1枚に収まり、本当に気軽に聴けるようになりました。
「気軽に」と書きましたが、気軽には聴いてはいけない、聴くにはある程度の覚悟をもって聴いてほしいアルバムではあります。
決してBGM的に聴いてはならない。きちんとスピーカーの前に正座して聴きたい、それだけの大作・傑作なんですこれは。日本人ミュージシャンが作ったコンセプトアルバムの大傑作です。
この作品は、高中氏が海外の古本屋で見つけた『THE RAINBOW GOBLINS』という絵本から着想を得て制作されました。なんでも、イタリアでは有名な絵本作家、ウル・デ・リコという人の絵本だとWikipediaに書いてありました。『虹伝説』は、この絵本に音を付け加えたという事です。
今年になって『虹伝説Box』というものが発売され『虹伝説』『虹伝説Ⅱ』その他のアルバム5枚組のセットが発売されました。初めて聴く方は、そちらから購入されても良いかもしれません。つっても高いですよね。
ちなみに私は買いましたけど
日本人の感性に訴えるメロディー
そしてそのテクニックと曲作り。
高中氏の曲全体に言えることなんですが、海外のフュージョン・ギタリストとは明らかに曲作りが違いますよね。どの曲を聴いても、日本人の感性に響くメロディー、アレンジなんです。
そのギターソロは、最初から完璧に作曲され、その通りに弾き、だからライブでもアドリブはあまり無くて、レコード通りの演奏がなされます。
お客さんもその方が喜びます。
「高中はアドリブができない」なんていう悪口もありますがそんなことはない、サディスティック・ミカ・バンド時代には、日本中で、そしてイギリス中で散々ステージ上で揉まれて、それにはアドリブは絶対だったはず。
事実、ミカ・バンド時代のブートレグなんかを聞くと、そこにはアドリブ弾きまくりの高中先生がいたりします。
それよりも、高中氏のピッキング、フィンガリングが実に正確であることが、ミュージシャンの間ではすごく評価が高いそうです。つまり、アルバム上ではもちろん、ライブにおいてもミスタッチ、ミスピッキングが全く無い。これはかなり驚異的なことだと、アルフィーの坂崎氏が、誰かとの対談で言ってました(うーん、その誰かが思い出せない)。
『虹伝説』について
一曲一曲が丁寧に作られ、完成されたコンセプト・アルバム。
前置きが長くなりましたので、中身をサラッとお伝えします。
曲目
「PROLOGUE」
「ONCE UPON A SONG」
「SEVEN GOBLINS」
「THE SUNSET VALLEY」
「THE MOON ROSE」
「SOON」
「MAGICAL NIGHT LIGHT」
「RAINBOW PARADISE」
「THUNDERSTORM」
「RISING ARCH」
「JUST CHUCKLE」
「RAINBOW WAS REBORN」
「PLUMED BIRD」
「YOU CAN NEVER COME TO THIS PLACE」
パーソネル
Drums:宮崎まさひろ, 井上茂, 村上秀一
Bass:田中章弘
Keyboard:石川清澄, 小林泉美
Latin Percussion:菅原裕紀, 木村誠, 山崎進
Sax:さつま光二
Narrator:Roy Garner
当たり前なんですが、一曲一曲について完璧なアレンジがなされ、捨て曲は一切なし。コンセプト・アルバムだから当たり前のことですが。
この作品を聴きながらこの文章を書いているのですが、どうしても作業の手が止まってしまい、音に集中してしまう曲が数曲あります。それが、
最初の3曲、特に「SEVEN GOBLINS」。まるで高速スケール練習のようなフレーズが次々に繰り出される曲です。こういうの、割と好きです。
ベースもカッコいいですね。
そして「Soon」。この曲のギターは完コピしました。
なんてことの無いドラムパターンのみのイントロが実にカッコ良く聴こえます。
「THUNDERSTORM」プロレスの天龍源一郎の登場曲に使われた有名な曲です。
「RAINBOW WAS REBORN」ラスト2曲につながる重要な曲です。
あー、ソロの途中でフェードアウトしていくのは非常にもったいない。
そしてラスト2曲。まず「PLUMED BIRD」は、高中氏お得意の構成が聴かれる曲です。即ち、全楽器がユニゾンで動くところ。
ラストの「YOU CAN NEVER COME TO THIS PLACE」情緒たっぷりのスケール弾き中心の曲。この曲のコピーは難しかったですね。速さもそうなんですが、あれだけ気持ちを込めることは難しいのです。
その他の曲も魅力たっぷりです。「RAINBOW PARADISE」は、珍しくアコースティック・ギターでソロ弾いてますし。「RISING ARCH」なんて、ピッキング・ハーモニクスの嵐が実に印象的です。
このアルバムは、日本のフュージョンの歴史に残さなくてはならない名盤です。是非聴いてみてください。
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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