3ヶ月で外国語を「15分」話せるようになる勉強法とは?
「外国語学習の科学」という本で紹介されている英語の勉強法をまとめたこの記事は多くの人に読んでもらっている。
同じ本で、外国語学習の興味深い事例が2つ紹介されているので紹介したい。
文法は家で、教室ではインプットを
まずは著者が日本の公立高校の英語教師をしていた時の事例。ここで彼がベースにしたのは「ナチュラル・アプローチ」という手法。
彼が行った指導を整理すると以下のとおり。
■クラシェンの「文法は家庭学習にまわし、教室では理解可能なインプットを与える」という方針を応用
■文法の授業を廃止して、文法は小冊子を自宅学習
■授業は文法訳読をつかった精読と、内容理解中心の多読を併用。副読本も多読に活用。
■精読、多読どちらの授業でも、本文を聞いたり読んだりしたあとに、内容理解チェックのTrue or Falseの問題を「英語で出して」正誤判断のタスクを日常的に与えた
この指導により1年で標準テストの偏差値が10上がる大きな成果に繋がっている。ここでのポイントは「インプット」で、質の高いインプットを「多量に」与え、それを内容理解チェックで補填しながら定着を図っていくところ。
以下の記事にあるが、クラシェンは、子供が「第一言語を習得するような環境」で第二言語を学ぶことが効果的という理論を展開しており、この教授法はそれを実践して成果を出しているところが興味深い。
たった3ヶ月で15分会話できるように
次に紹介されているのが、インプット=インターアクションモデルに基づく事例。これは、カーネギーメロン大学の第二言語習得研究者の甲田慶子氏が開発した日本語プログラム。
ゼロからはじめた学生が、50分 x 週4回、3ヶ月で学期末には「15分間」会話ができるようになる、というもの。これは非常に興味深い。
■授業の中心はその日に学んだ文法項目を使った学生どうしのインタビュー
■自分やクラスメートの出身、趣味、家族など身近な話題についてお互いインタビュー
■インタビューで得た情報をメモして、宿題で自分やクラスメートについて書く
■このインタビューと合わせて各課ごとに、よく使われる構文・表現が多く入った会話を暗記
■学期末試験で「実際に」15分の会話をさせ、それが成績の10%を占める
ここでポイントとなるのは、外国語学習では「限られた文法、単語を使って、限られた内容について」コミュニケーションをできるようになることが習得にとって重要という仮説。
このモデルはそこが意識されており、実際に「インタビュー」をすることで、この実践を行えるし、それをベースに各課で単語や構文を暗記していくことで、表現範囲がひろがっていく設計になっている。
これは、自分がアメリカの大学に交換留学していた時に、英語での会話が「うまくなったな」と感じた経験と似通っている。その助けになったのが台湾系オーストラリア人の留学生の友人。
彼は小学生の頃にオーストラリアに移住しているので、ほぼネイティブとして流量な英語を話していた。私にとってありがたかったのは、彼の英語が比較的ゆっくりで、しかもスラングを使わない分かりやすい単語と用法で会話していた点。
まだまだ英会話力が低かった私にはそういう彼の話し方は「真似をする」のに最適だった。というのも、単語やイディオム、助動詞や副詞など英語を話す上で重要な用法を、彼と話すことで「ああ、こう使えばいいんだ」と実践で理解することができたから。
かたやアメリカ人のネイティブ、特に大学生はスラングが多用されているし、とても速くしゃべるので、それになんとか喰らいつくのが精一杯で、そこから学ぶというのは困難だった。
なので、この本が述べている、言語習得には自分が「手の届く」範囲のレベルでコミュニケーションを深めながら、そこから少しずつステップしていくのが良いというのは、いま振り返ってみても非常にうなずけるポイント。
ぜひ参考にしてみて下さい!
注)この記事は過去ブログに書いたものを加筆・修正したものです。
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