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涙鉛筆 #毎週ショートショートnote
鉛筆の私が自我を持った理由は使用人である愛莉が愛着を持って私を使ってくれたからに他ならない。物に魂が宿るという考え方は、八百万の神を信じる日本古来のものだ。だとすれば私という存在は付喪神の一種なのかもしれない。
私は愛莉のためならいくらでも芯を削ろうと思っていた。
21g。
これは、かのダンカン・マクドゥーガル博士が人の死に立ち会い、魂の重さを計測した結果だ。ではその魂はどこに宿っていたのか。頭か。心臓か。
その答えはわからない。が、鉛筆の私の魂は、どうやら芯の一部に存在していたらしい。
ある日、私の魂は鉛筆本体から離れ、算数ドリルに乗せられた。そしてすぐにガシガシと消しゴムに吸い込まれ、消しカスとなってゴミ箱に捨てられた。
愛莉は宿題を終えて鉛筆を大事そうに筆箱にしまった。
待て。待ってくれ。私はここだ。その鉛筆は私の抜け殻だ。私を捨てないでくれ!
ゴミ箱の中で流す私の涙は、愛莉に届くことはなかった。
遅れましたが今週も参加!!