告白水平線 #毎週ショートショートnote
ある日の夕暮れ。水平線の向こうから、女性の声が聞こえた。優雅な音符のように響くその声は軽やかさと魅惑的な響きが宿っていた。
夢なのか、現実なのか。
いつしか、夕日が沈む瞬間に声を聞くのが習慣になった。
知らない言語だけれど、その言葉には僕への特別な気持ちが込められている気がした。
声の主はきっと、あの美しい声にふさわしく、優雅で情熱的で素敵な女性に違いない。
ついに僕は決意した。
夕暮れの中、彼女の声に応えるように、水平線に叫んだ。
「あなたが好きだー!」
しばらく待っても返事はなかった。
諦めて帰ろうとした時。
「私も好き」
初めて意味のある言葉が僕の鼓膜を揺らした。
そうか。
水平線までの距離は約4.5㎞。音の速さは340m/sだから水平線に届くまで約13秒。彼女が返事をする間と、その声が僕に届くまでさらに13秒。つまり、約30秒のタイムラグが発生していたんだ。
「それホント?」
彼女の返事を待つ30秒。
そのもどかしくも愛おしい時間が、僕の胸をさらに熱くした。
とりあえずSNSのIDを交換するところから。