壁持ち強襲女 #毎週ショートショートnote
扉は石壁で固く閉ざされていた。
「タカシの壁を壊してください」
母親の悲痛な頼みに私は小さく頷く。
心を閉ざした時に発せられるエネルギーフィールドが実体化し自室の扉を塞ぐ。まさしく「壁持ち」の症状だ。
「任せてください。お母さんは後ろに」
壁に向けてピッケルを振り下ろすと、ガキンと音を立てて弾かれた。
ライフルを構え、ババババッと乱射する。
壁はびくともしなかった。
後ろの母親の悲鳴を無視して、手榴弾のピンを抜いた。手榴弾は正確に着地し、その一瞬後に爆発した。炸裂音とともに、煙が舞い破片が四方に飛び散った。
間髪入れずにグレネードランチャーをかまえると、私の足を母親が掴んだ。
「やめてぇ」
ボロボロと涙を流す母親を蹴り飛ばす。
「邪魔するな」
「タカシを殺さないで」
ピシリと壁にヒビが入り、壁が粉々に砕け散った。扉を開けて少年が姿を見せる。
「心配かけてごめん」
「タカシ……」
抱き合う母と子。任務完了だ。
子供の壁を壊すのは銃火器ではない。
いつだって母親の愛なのだ。
報酬から家の修理代が差し引かれるので、いつもタダ働き。やりすぎちゃうのが彼女のお茶目なところ。ちなみに彼氏募集中。