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最好映画。222 「その男、凶暴につき」 1989年。

Twitterで港南大橋を歩いてくる吾妻のワンショットを見かけて、34年前に観たこの映画の衝撃を思い出しました。通る船に向かって空き缶を投げるイタズラ小学生が走っていった先、小学生を怒るでもなく、機嫌が悪いんだかなんだかよくわからない表情でただひたすらに歩くシーン。ホントに衝撃的。当時の刑事物といえば、カッコよく登場して銃を取り出す仕草が流行っていた時期です。絶対何かやると思ってたのに、ビートたけしがただ歩いてくるのを1分近く観るという、意味があるのか、怖いのか、呆気ないのか、学生の時分には分からなかったんですが、この映画の本気度を感じて(?)座り直しました。北野武監督第一回作品「その男、凶暴につき」。お笑い界の帝王が撮った映画です。怒りで殺すか死ぬしかない刑事の物語。好い人ではあるけども、暴力を辞さない態度が共感を排除した、冷めた冷めた刑事物でした。ほとんど喋らない主人公と、いきなり始まる上にしつこい暴力、どんでん返しのラスト。これが初監督なんだから驚きです。この映画にまつわるものはかなり蒐集しました。サントラ、取材番組の録画(VHSだったな笑)、メイキング本。気になって再読したら、順撮りしながら、現場の状況や用意されたものを見てどんどん省略・変更。にもかかわらず最後まで通貫している物語になっている・・先の先までシミュレーションをし尽くして、考えの中にあったものを実行していた北野監督の凄さが改めてわかりました。終盤、ある事件をきっかけに、瞬きもしない、しゃべりもしない、うめきもしない、それまで封印していたポケットに手を突っ込む仕草を追加して、主人公のやさぐれ具合を表現していたそうです。終盤の渇いた怖さはそういったことの積み重ねで感じていたからこそ、忘れられない映画になったんだなと感嘆しました。「その男、凶暴につき」「3-4x10月」「あの夏、いちばん静かな海」「ソナチネ」まで、初期北野映画の大ファンなんです。ほとんど同じスタッフにお願いして、新しいことを毎回増やしていく様は、本当にスリリングな時期でした。「その男、凶暴につき」は特に好きです。VODも放送もなかなかないので、ブルーレイ買いました(⌒▽⌒)機会があればぜひ観ていただきたいです。「首」ももちろん観に行きます!


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