最好映画。219 「ラストエンペラー」1987年。
1988年のアカデミー賞で作品賞・監督賞・撮影賞、脚色賞、編集賞、録音賞、衣裳デザイン賞、美術賞、作曲賞を受賞した、摩訶不思議な映画。清朝最後の皇帝、愛新覚羅溥儀の半生を描いた英語映画です。163分。長いんですが、飽きることはありません。歴史に翻弄された溥儀の人生をたっぷり魅せます。公開された当時は、中国の歴史を英語でなんて!とか高校生っぽい見方をしていたので、その凄さをイマイチ理解できていなかったんです。絢爛ではあったけど、嘘じゃんていう反発があったんだと思います。昨年たまたま手に入れた「ベルトルッチ、クライマックス・シーン」 を読んで、急に観たくなりました。「暗殺の森」「暗殺のオペラ」「ルナ」「ラスト・タンゴ・イン・パリ」と毎回違うテーマで撮った監督。馴染みが薄い中国の話をなぜ映画化しようとしたかが読めたからなんです。史実を元にしているけれど、自分の力ではどうにもならない人生を描くというベルトルッチ作品に通底したテーマで、言葉も文化も理解できない外国でも通じるのか、長い時間をかけてリサーチした上で結実した物語だったこと。これはある種の寓話です。日本人としては踏み込みづらい満州国の話を英語であれば寓話としてみることができました。個人的には刑務所の所長を演じたイン・ルオチェンが特にすごくて、怒りながら愛情を感じさせる行動と眼差しは、ラスト近くの「この人は悪い人じゃない!」という溥儀のセリフに効いてきて泣けます。イン・ルオチェンは「リトルブッダ」で非常に重要な役を演じてます。馴染みのある顔なんですけど、ベルトルッチ映画以外はほとんど観ることができないということがわかってびっくりしました。撮影はビットリオ・ストラーロ。光の魔術師という名前通りの映像なんですが、撮影状況はかなり悪かったみたいで、映画冒頭、2歳の溥儀戴冠式のシーンをたった1日でこなしたという逸話を読みました。故宮は文化遺産なので、床にライトの三脚を置けない・機材の制限がある・外には2500人のエキストラが待っている・その日しか撮影できない、という状況下で、ステディカムと建物外からの照明だけでやってのけてるんですから、奇跡としか言いようがないシーンです。今から35年も前の映画なので、初公開以降はテレビ放送で観ることばかりで、あんまり気にしてなかったんですが、観たくなったらやってないという困った状況が半年くらい続きまして、BS12で年末にやっていたのをなんとか録画できました(⌒▽⌒)。コオロギで号泣したのは私です( ; ; )