最好映画。213 「フルメタル・ジャケット」1987年。
あんなに悪口浴びせられると人って変わっちゃうんだな〜って思いながら観ていた45分間が終わって、全く風景の違う後半戦に入ってからが、この映画の本領発揮な気がしてます。地獄の訓練を終えたのに、最前線ではない生活をブーブー言っているジョーカーが、最初に受けて戦闘のシーン。「ホントなのかホントに来たのか?」慌てふためく狼狽っぷりと、直前まで生意気だった新兵たちが戦闘員になってゆく瞬間。45分かけて人がマシンになる工程を描いた後だけに、うわ、やっぱりそうなるんだね(´-灬-‘)、という諦めにも近い感情を呼び起こしました。丸刈りにされる役者陣から始まる映画の最初から夕闇を行軍する最後まで、きちんと箱にしつらえたかのような構図、長ーい移動ショット、何が起こりそうか不安さを醸し出す、キューブリック卿のおっかなさ全開です。海兵隊員は死ぬまで海兵隊員という洗脳にも似た恐怖を、ミッキーマウスクラブを歌う行軍で終わらせたキューブリックの意地悪さとも言えます。グスタフ・ハスフォードの「ショートタイマーズ」を1章・2章だけを映画化して、3章目を全く描かないのは潔いのか意地悪いのかわかりません(⌒▽⌒)。撮影のダグラス・ミルサムはこの一作だけの登板なんですが、カメラオペレーター兼ねてしまうキューブリック卿の「バリー・リンドン」と「シャイニング」でフォーカスプラー、「アイズ・ワイド・シャット」でもフォーカスアドバイザーをやっていたので、技術的には相当信頼のあった人なんだろうなと思います。「ハイランダー」「ラスト・オブ・モヒカン」でカメライオペレーターを務めてました。脚本は原作のグスタフ・ハスフォードとスタンリー・キューブリックに加えて、マイケル・ハーがクレジットされてます。マイケル・ハーは「地獄の黙示録」のナレーションダイアローグを担当した人で、ベトナム映画2本に呼ばれるほど、この当時の言い回しができたんだろうと思います。「あの眼がねえよ」「眼?」「1000mm望遠付きの眼付きだよ」なんて、確かに思いつかない(⌒▽⌒)。役者陣もかなり強烈で、前半の教官のリー・アーメイと、ほほえみデブのビンセント・ドノフリオなんて、他のどんな映画に出てても、この映画の役がちらつきますし、主役であるジョーカーのマシュー・モディーンも、アニマルのアダム・ボールドウィンも、やっぱりこの映画の役がちらついちゃうので、本当にはまりっぷりがすごいです。一番強烈なのは、スナイパー役の少女。ニョック・リが振り返って銃を撃ち続ける時のあの顔。あの一作で人生変わっちゃった人いっぱいいるんだろうな(´•灬•‘)「プラトーン」が大好きだった高校生の頃はわからなかったんですが、この映画の本当の怖さは、じわじわ思い出すところです。各ショット各ショット、セリフとセリフ、記憶に残ってます。作っている人たちがそこまで考えていたかはわからないんですが、店頭に「プラトーン」と並んで出ていたら、迷わず「フルメタル・ジャケット」を手に取っちゃうような魔力があります。無理してお勧めはしませんが、記憶に残る映画です。お時間あれば是非。