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壊しては創る。それがピッチ

起業してから8年になりますが、これまで何度も何度もピッチしてきました。

そもそも、最初の起業ネタというのが、簡単に言ってしまえばピッチイベントでした。その名はthe CHAOS ASIA。2013年のことでした。

アジアでイノベーションの聖地を創りたい。イノベーションはセレンディピティな出会いから産まれる。だったら、無理やり「オモロイ」やつらをかち合わせてやろうということで、世界中からITに限らず、教育、NGO、音楽、映画、建築、料理、アートなどなどいろんな分野から呼び寄せ、とにかくピッチをしまくるというイベントをやってました。

さて、このnoteの本題

ピッチの出発点は2つある

新しいサービスを創るとき、出発点は2つあると思っています。

ひとつは、自分の原体験。

もう一つは、社会における課題(の発見)。

まず、いつもピッチ資料を創るときに基本ストーリーはこちらの3段論法です。

ピッチの3段論本
1 課題(何を解こうとしているか。誰がそれをペインと感じているか?)
2 解決策(ようは、自分のプロダクトとはどんなものか?)
3 オペレーション(どうやって、うまくそれを進めるのか、どうやったら勝てるのか?)

プロダクトを創り始めるとき、まずピッチする相手は社内です。社員のエンジニアです。その後投資家やユーザーへとなります。

解決策のプロダクトを構想する段階では、keynoteでプロトタイプ的なものを作ったりしています。

ここではピッチ資料をブラッシュアップさせていくストーリーをシェアしたいと思います。

1. まず色を考える

プロダクトを創るとき、私個人的に重視して1、2週間くらい考え続けるものがあります。

それは、プロダクトの名前、ロゴ、そして色です。

名前やロゴへのこだわりはいいとして、「色」?と思われた方もいるかもしれません。

でも、私はかなりの労力と時間を割いて、そのプロダクトがデフォルトで使う「カラーパレット」を考えます。

ちなみにFeelyouの場合に私がデザインしたカラーパレットはこんな感じです。

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プロダクトの画面を創り始める前の段階で、この色を確定させました。

結果できあがった「7つの感情レベルから選んで、感情を投稿する画面」

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Feelyouの場合、議論の中で感情を7段階にしようと決めました。5か7で迷ったわけですが、5つだと少なすぎたため、7つに。感情というのは複雑で、もっと種類があるんじゃないだろうか。そんなツッコミももちろんあります。一方、直感的に押せることも重要です。結果、7つと決めました。

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ちなみに、色を決めた直後に私が書いたプロトタイプ画面です。(ダサい・・・このダサいプロトタイプを基にCTOの小野寺がカッコよくしてくれました・・・)

色が決まれば、世界観が決まります。
色が決まれば、世界観がぶれることなくデザインをブラッシュアップできます。
色が決まれば、最終的にロゴも意思決定ができるようになります。

私はそう考えています。

Feelyouの場合ロゴ候補は3パターンありました。

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素直なゴシップタイプ(左)
女性向けの少しチャーミングなタイプ(真ん中)
洗練されたタイプ(右)

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デザインをセットで見るとどうでしょうか?このロゴのアイコンをタップしたら広がっているプロダクトの世界観として、どのロゴとフィットするか・・・皆さんならどう考えますか?

ちなみにFeelyouのロゴを右に決めたのは、Feelyouを使ってメンタルコンディションが良くなってほしい。それを感じるには「勢い」があるロゴが良いとも考えていたので、最終的に右のロゴを選びました。

2. 課題、課題、課題を考え続ける

次に考えるのは、そして考え続けるのは「課題」です。

サービスの出発点は2つあると言いました。

ひとつは、自分の原体験の課題
もう一つは、社会における課題(の発見)

それが出発点なので、課題はもう決まっていて、そこまで考えることがないんじゃないのか?という指摘もあるかもしれません。

何を考えるかというと、自分の中では、「これだ!」と直感的に信じられるレベルまで想像できてるんですが、それを人に話しても同じレベルまで信じてもらえないからなんです。

課題をどう伝えたら良いか?

それをひたすら考え続けます。おそらく1年くらい。

いろんな言葉を使って説明します。いわゆるエレベーターピッチという60秒で相手を唸らせるピッチがありますが、どのピッチも、その相手を唸らせる60秒に行き着くまでに、紆余曲折、悩み、ヨリモドシ、いろんなことが起きているはずです。

ほとんどの場合、初めは、聞いた瞬間に相手が、「Wow!(おおお!すごい)」と思えるものにはなっていないと思います。自分の直感が感じたことを、誰でも(その課題の当事者でない人でも)聞くことで、「Wow!」と感じる言葉にブラッシュアップさせて行かねばなりません。

明日がピッチ。その準備の追い込みの前の晩の夜中にも、その言葉が変わってしまう、そんなことは日常茶飯事だと思います。

私は自身でピッチも行いますが、インキュベーションなどでピッチのメンターをすることもあります。

たまに聞かれることがあります。

「資料が二転三転してコロコロ変わる。課題設定も変わってしまう。こんなブレブレでいいんでしょうか?」

私は力強く答えます。「いいんです!」

ブレてるんではなく、それは自分ではない人(その課題の当事者でない人)に伝える言葉を見つけるために、今一度社会全体からハマる言葉を探す旅なのです。

私がFeelyouの課題について最初に作った資料

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長いw 字だらけw いま自分で読み返すとピンと来ません。これは2020年4月末です。なぜ字が多いかと言うと、自分でも迷っているからです。

今(2020年9月)、よく使う1枚はこちら

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今はピッチを始めるとき、この1枚から始めることに「シックリ」来ています。でもそれもまた1、2週間で変わるかもしれません。

変わっていいのです。ブレてもいいのです。ピッチはプレゼンした数だけ進化します。聞く相手の種類だけ、違う言葉が必要になります。

3. プロダクトを一言で表す、無理矢理にでも

ピッチを何度もしていると、ピッチ資料を何種類も作っていると、プロダクトを開発し始めていくと、徐々に頭が進化してきます。

そうすると、「あ、このプロダクトはこうしたらもっと良くなるんじゃないか」という発想が産まれます。それは非常に良いことです。

そうした過程で産まれる新機能の中には、後に最も重要な機能になることもあると思います。

社内で議論を毎日します。デザインもブラッシュアップしていきます。

そうするとどういうことが起こるか・・・・

Day1は「素ラーメン」だったのが、2ヶ月もすれば、「全部入りラーメン」になってしまうのです。

するとどうなるか、プロダクトを一言では説明できなくなります。

Aという機能があってこれはXという理由で面白くて、Bという機能は、Yという背景があって、Cというのは何かと言うと、Zという社会課題がありまして・・・

何ヶ月も試行錯誤してきた自分には、自然に簡単に理解できることでも、お初の人にとっては、超難解になってしまうのです。

だから、あなたのプロダクトを一言で表してみてください

一言じゃ表せないことは百も承知です。たくさんいい機能があることは百も承知です。でも、一言で表さないといけないのです。

一言で表せないプロダクトは広まっていかない。

いまあなたは美味しい全部入りラーメンを創れるかもしれない。でも、それを敢えて、「一言」で説明してみてください。

「一言」を選ぶのです。数ある言葉の中から。

2020年4月、Feelyouを表す一言は、こんなことを資料に書いてました。

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当時、自分なりに考えてどう表現すれば理解されやすいだろうかと、社会の中から拾ってきた言葉(のつもり)です。

なんで、感情をシェアしたらイノベーションが加速するんだろう?
ムードトラッキングってなんだろう?
イノベーションとムードってなんだろう?

なんだろう?

いや、自分で自分にツッコムなという話ですが、今となってはまったく説明になってない気がします。

最近使う一言はこちら

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今(2020年9月)はこちらは「シックリ」来てます。これも2ヶ月後はまた違うことを言ってるかもしれません。

4. とにかくピッチしまくる

当たり前ですが、一度や二度じゃ話になりません。10度でも足りないと思います。

なぜそのサービスを創ったか。自分の原体験から。そして実際に開発、リリース。初期のユーザーが使い始める。

その中でも、とにかくピッチしまくるのです。確実に言えます。ピッチの数だけ進化します。

同じ資料を10度でも使って違う人にピッチする。

資料がまたブラッシュアップされてまたピッチする。

数ヶ月たったら、以前ピッチしたことがある人にもピッチする。

現在はすべてがオンラインになってきてます。そうすると、こんな考えがよぎります。

「今のピッチ資料はかなりの傑作だし、ピッチもブラッシュアップされた。これを録画収録し、それを流せば良いのではないか」

オンラインミーティングを効率運営するには良いアイデアかもしれませんが、録画ピッチからは何も産まれないし、何より「自分自身が成長しません」

どんなに完璧な資料とピッチも、50回やれば、次の進化の糸口が見えてきます。

Feelyouの場合、4月末からピッチを始め、9月13日までの4ヶ月半で約80回ほどピッチしています。社外だけで。その中で何度も資料が変わってきました。言い方も変わってきました。

まったく別物になってきています。でも、サービスの原体験は変わりません。

5 壊しては創る。それがピッチ

プロダクトもPDCAで回してブラッシュアップしていきます。マーケティングもそうです。

ピッチも同じです。

課題設定も、解決策としてのプロダクトの説明文も、ピッチをしていると変わってきます。いや、変えるべきです。

私は個人的に長渕剛さんが好きなのですが、長渕さんの特徴は歌うたびに、その歌が変わることです。

ライブの度に変わります。それは進化だと思います。作曲した時、作詞した時、その歌は最初の完成を迎えますが、何万人という観客を前にしたインタラクティブな関係性の中で、歌が変わる。それは、ピッチを通じて自分のプロダクトを変えることと似ている気がします。

先日、累計で13万人以上が参加したオンラインライブ。観客からの手応えある反応がない中でのライブ。長渕さんにとっての初めてのオンラインライブ。

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もし2回目があるのなら、確実に「歌い方」を変えてくると思います。

これからのアフターコロナの世の中で、オンラインでも、届く歌とは何なのか。

もう一度ゼロからスクラップ&ビルドしてくると思います。

ピッチも壊しては創る。

プロダクトが進化し、デザインが進化し、ピッチも進化する。

同様に、ピッチが進化することで、そこからプロダクトの次の道筋が新しくうまれ、変えるべき新しいデザインアイデアが産まれてくる。

さらに言うならば、完璧に出来上がったピッチ資料。それを捨て去るのです。

開かない。

もう一度、今の自分の頭で、ゼロベースで、過去の資料を一切参考にせず、考え出して、新しくピッチ資料を起こす。

完璧に出来上がったと思い、それを使ってピッチをした直後こそ、その資料を捨て去る時です。その時、さらなる進化が待っています。


というところで、ピッチを創る参考になれば幸いです。このプロダクトFeelyouが気になった方はこちらからダウンロードしてください。


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