クラウドサービスの再開発〜AI時代の街づくり
都市再開発のメタファーから考えるクラウドサービス
都市の中心部には、一時代を築いたビル群がそびえ立つ。最先端のデザインだった建物も、年月と共に変化する都市の景観には古びた印象を与えることがある。このような時、都市再開発としてビルを一掃し、新たなデザインのモールやビル群が生まれていく。
先日も日本最後の一等地、大阪の梅田北ヤードを訪れた。以前はJRの電車の倉庫となっていた(ほんとうにもったいない)場所に、綺麗な高層ビルと、穏やかなグリーンがふんだんに見られる公園に切り替わっていた。その名も、グラングリーン大阪。
言ってしまえば、綺麗なビルと公園だけなのだが、なぜか心が未来を感じているのに気づく。
今日、幕張メッセで開催されているJapan DX Weekに行ってきた。今時の様々なクラウドサービスが展示され、勢いよく喧伝していた。都市の再開発と同様に、クラウドサービスにも「再開発」が必要な時期が来ているように感じた。
ただし、その循環は30年とかではなく、3年なのだが・・・
従来のクラウドサービスとその課題
2022年以前に開発されたクラウドサービスは、AIが含まれていないものが一般的だ。検索機能もシンプルな全文検索にとどまり、Q&Aも事前に用意された応答に頼っている。例えば、会議管理サービスの場合も、その進行もテンプレート化されたアジェンダに基づいて進めらる。アジェンダはあらかじめ人間が協議して設計し、入力する必要がある。ユーザーにとって便利ではあっても「定型的」な体験に過ぎないもののように感じる。
これらのクラウドサービスにAIを後付けしても、思ったように新しい体験を提供できないケースが多々ある気がする。既存の仕組みにAIを追加するのは、昔のビルの装飾を変えるようなもので、根本的なアップデートにはなり得ないのかもしれない。このアンバランスさが、ユーザーに違和感を与える原因となっているのではないだろうか。
デジタルシステムというのは、従来はフレキシブルではない。寸分違わず決められた処理を、高速にこなしていく。処理して欲しいものは、あらかじめ設計し、人間がそれを判断し実行の是非を事前決定しておく必要がある。
一方、2023年以降盛り上がっている(私も毎日使っている)、ChatGPTをはじめとする生成AIたちは、すべてが基本はフレキシブル。あいまいに放り投げたプロンプトにも、毎回真面目に答えてくれる。
明日から始まる大谷選手のワールドシリーズになぞらえるならば、「練習しておいて」と頼めば、十分な睡眠をとり、野球、サッカー、マラソン、水泳とあらゆるスポーツの完璧な練習メニュー案を提示し、それを遂行して翌日を迎えてしまうような、そんな動き方だ。
AI中心で設計された新時代のサービス
さて、対照的に、
2023年以降に登場したサービスはAIを中心に設計されている。上記のように、フレキシブルにAIが動いてくれるだろうことを期待している設計になっているのだ。
がんじがらめに決めていた機能群を、ある種決めない状態で放り出し、AIによって、都度動的に最適に(おそらく)構築していくのだ。
例えば、ゼロからAIが会議のアジェンダを作成し、Q&AやFAQもAIによりその場で生成されることで、従来のテンプレート依存から脱却している。これにより、従来の枠にとらわれない柔軟なユーザー体験が可能となり、利用者のニーズや状況に即座に応じられるようになっている。都市再開発で新たな街並みが誕生するように、AI時代のサービスは、デジタル空間に新しい「街」を創り出しているような未来感を感じる(錯覚する)。
サービス再開発の必要性
このような進化に伴い、既存のクラウドサービスも新たな設計思想に基づき、再構築する必要にきているのではないだろうか。
古いビルを、窓を新しくする、壁をモダンにする、エレベータをリプレースするなどなど、リノベーションするよりも。リノベーションが新鮮味を与え、モダンな気分にさせるのは、大手町ビルの例など、例は少ない。
単にAIを追加するだけでなく、基礎から新たに構築し直す「スクラップ&ビルド」に相当する。既存のビルを取り壊し、現代のユーザーの期待に応えるために新しい都市計画をするように、クラウドサービスもゼロベースから考え直し、再開発する時期が来ているのではないか。
新しい時代の「クラウドサービスという街づくり」
AIを中心としたクラウドサービスの再開発は、ユーザーにとっても開発者にとっても革新的な価値をもたらすだろう。旧態依然とした構造を保ち続けることは、変化の激しいデジタル世界においてもはや持続可能ではない。新しいデジタル都市のビジョンを持ち、未来を見据えた設計が求められているのだ。
これまでのクラウドサービスは、グリーンが生い茂る公園はあったとしても、あらかじめ決められたルートを決められた歩数で歩んでいかない窮屈な散歩道だった。
これからは、広がったくつろいだ空間を自由に闊歩するような設計思想が、最先端のAIの生き方、そう、AIにとっての、サービス内での「生き方」を左右するのではないか。
今がクラウドサービスの再開発を実行するタイミングであり、ユーザーが真に価値を感じる新たな体験を提供するために行動を起こすべきだろう。
そして、私の会社はそんなAIサービスを日々、開発しようとして、フレキシブルに歩んでいる・・・
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