太陽光パネル業者のシミュレーション値の矛盾について(太陽光パネル+蓄電池の費用対効果モニタリング#8)
2022年10月9日に我が家に太陽光パネルと蓄電池が設置されました。
月1ペースで買電の減少や売電による効果をモニタリングした結果を公開しているのですが,今回は趣向を変えた番外編です。導入時に業者に説明された経済効果について違和感を覚えたので精査したところ,算出方法の理屈が良く分からないことが判明したので,その内容を公開したいと思います。
太陽光パネル+蓄電池のスペック
設置した太陽光パネルと蓄電池のスペックは以下のとおりです。
太陽電池モジュール(XLM120-380L×14):5.32kW
蓄電池(JH-WBPDB650):6.5kWh
南西面の屋根に設置され,周囲に太陽光を著しく遮りうる建物は存在していない立地です。
発電量の実値とシミュレーション値の比較
販売業者からは月平均で544 kwhの発電量が見込まれると説明されました。発電量のシミュレーション値は太陽光パネルの販売業者ではなく,太陽光パネルの開発メーカーによって提示されたものになります。現時点での実値とシミュレーション値には目立った乖離はなく(むしろ実値の方が若干良い),発電量自体は適切に見積もられた値であるように見受けられます。
販売業者による経済効果のシミュレーション値
販売業者から544 kwhの発電量が得られた場合,その結果として17,022円の経済効果が見込めると説明されました。内訳は以下の通りです。
$$
\begin{align*}
売電額&: 249 {\rm kwh} \times\ 17円&=4,233円\\
蓄電池(環境)&: 195 {\rm kwh} \times\ 28.52円&=5,561円\\
蓄電池(経済)&: 195 {\rm kwh} \times\ 差額12円&=2,340円\\
昼間賄う電気代&: 100 {\rm kwh} \times\ 38.71円&=3,871円\\
再エネ賦課金&: (100+195) {\rm kwh} \times\ 3.45円&=1,017円\\
\end{align*}
$$
実際には燃料費調整単価も入ってくるので経済効果は17,022円よりも高くなるように算出できるはずですが,燃料費調整単価を考慮せずに計算しているのは良心的だと思います。
発電された電力が,売電・蓄電池の充電・抑買電にそれぞれ249kwh・195kwh・100kwh割り当てられたとすると,544kwhという発電量と辻褄があいます。生活スタイルに応じて実際の割り当ては異なってきますが,別に不自然な割り振りになっているわけでもないです。
このシミュレーションでよく分からない点は,蓄電池に関して環境・経済という2項目が存在することです。環境に関しては,昼間に太陽光発電を利用して蓄電池を充電し,それを17~22時(電気代の単価が28.52円/kwhとなる時間帯)に消費すると解釈すると納得できます。ただし,そう考えると蓄電池(経済)とは両立しません。資料には何の差額が12円かは明記されていませんが,恐らく時間帯に応じた電気代の単価の差額(22~8時:約16円,8~17時:約38円)を意味しています。これは,22~8時に買電することで蓄電池を充電し,それを8~17時に使い切る場合を想定していることになります。
つまり,
昼間に太陽光発電を利用して蓄電池を充電し,それを17~22時(電気代の単価が28.52円/kwhとなる時間帯)に消費
22~8時に買電することで蓄電池を充電し,それを8~17時に消費
という両立しない経済効果を同時に盛り込んでいるわけです。
両立する場合を無理やり挙げるとすると,例えば22~8時に買電することで蓄電池を充電→8~12時に充電分を一旦消費→12~17時に太陽光発電を利用して再充電→それを17~22時に消費,することができれば確かに成立します(1日に充電→放電を2回行う)。ただし,これが成立するためには,午前中に太陽光発電では賄いきれないほどの大電力を消費するか,雨等によって発電できない必要があります。我が家では洗濯乾燥機と食洗器とエアコンを同時使用したとしても,太陽光発電された電力が余りますので,前者は非現実的です。後者は日によってはあり得ますが,そんな日が続くと544kwhも発電することは到底不可能な試算になるため,やはり非現実的です。
どちらか片方を選ぶとなると蓄電池(環境)を選択した方が良いため,蓄電池(経済)分の2,340円を上乗せしていることになります。それほど大きな金額に感じないかもしれませんが,設備投資の回収年月にそれなりに影響しますので,少しあくどいなと感じた次第です。
改めてゆっくりと見直した結果,今回の矛盾に気が付きましたが,今思い返しても販売業者に説明されている最中に気付くのは難しいなと感じます。実際の販売業者の公表は控えますが,同様の手口を使っているor異なる観点でお得感を過剰演出している販売業者は幾つもあることが想定されます。そのため,これから太陽光パネルの導入を検討されている方は,ぜひとも複数会社から相見積もりを取り,設置費用だけではなく経済効果(電気代削減金額)のシミュレーション方法についても比較することをお勧めします。
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