歯と骨は似ているけど違う
歯と骨は似ているなんて思ったことがない、というのが一般的な考え方でしょうか。
歯と骨、爪、毛髪は人間の身体の中で硬組織と呼ばれる仲間の部分になります。
その硬い部分で人間はとても助けられていることが多いものです。
身体の勉強をした経験がある方ならそれらは仲間であるという見方が出来ると思います。
けれども大きな違いは、骨は自然治癒することはあっても歯は自然治癒することはほとんど無いということです。
歯は骨と違い体外に飛び出ていますから、考えたらおかしなパーツですね。
ついでに言うと髪も飛び出ているので、髪のように再生してくれたらいいのに…と思います。
本題に戻します。
例えば歯は、歯ぎしりなどをし歯が擦れて少し形が悪くなった、とか小さな凹み、小さな虫歯は唾液のカルシウム成分の力で歯がしみないように修復する力を持っています。
また歯の歯髄(俗に言う神経)が生きている場合は、少し打撲で変色してしまったぐらいならば生き残ることができ、変色が回復することもあります。
これは打ち身の青いところが回復するのににています。
けれども、大きくダメージを受けた場合、骨と歯は大きく違います。
骨は折れてしまったらシーネ(副棒)をしたりギプスをすればあとは自然治癒して行くことが多いですが、
歯は折れてしまったらそれを自然治癒させることはできないのです。
歯の根っこの部分の軽い外傷ものは固定しておけば治癒することもありますが、それは骨折の時に似てはいますが、問題は歯の頭の部分が折れてしまったら。
それは私達歯科医師が治すしかありません。
そして「歯を治す」と言いますがそれは、新しい何かで補充する、つまりパズルのピースを埋めるように歯科材料ではめ込むだけで、自然治癒のように歯が回復しているのではないのです。
その治療がさらに問題で、しかも歯は小さな結晶でできていますので、一度歯を削ったらとても微細な傷を歯は負ってしまうということになります。
治療のための歯の削り方で、次の歯の運命は決まってしまうわけです。
もちろん先述のように唾液のカルシウム成分が修復もしてくれますが、多くの場合、銀歯が取れた、詰め物が外れた、のような二次的な問題が生じます。
そのうち繰り返し悪くなると根の治療をし、歯髄を取る(神経を取る)ということになってしまうことが多いです。
なるべく歯を守れるよう、次の二次的な治療にならないで済むように歯の未来を考えつつ治療をしています。
最近気になることがあります。
偏って多く見られるために気になっているのが、歯がズバッと折れてくることと、銀歯や詰め物の脱離です。あるべき所の物が突然無くなったことで驚き、慌てて歯科を探して来られるのでしょう、新規の患者さんに多く見られています。
銀歯や詰め物の脱離は接着剤が弱ること、小さな隙間から虫歯になることで生じます。
また、噛む力は成人男性で50kgがかかりますから、毎日の食事で微細な結晶が脆くなるということは仕方ありません。
これらは生きている歯にはあまり見られません。大きな治療跡がある場合はみられますが、やはり、一度根の治療をした、俗に言う神経の治療をした歯に起こっています。
中にはどうしても歯の弱い方がいらっしゃいます。
歯の質や、唾液が弱いという体質の方、また、どうしても生活習慣が変えられないことで歯が弱くなってしまった方々もいらっしゃいます。
それらの歯の治療をせざるを得なかった方々が繰り返し歯が悪くなることが多いようですが、中でも根の治療をされた歯は、とても脆くなっているのです。
しかしながら最近になり何故そのように、竹を刀で切断したかのように歯が折れたり、特に虫歯がそれほど見られない詰め物や銀歯の脱離が多く見られるのでしょうか。
歯が欠けました、銀歯が取れました、
歯が痛いと言われるので見るとズバッと割れて破片がグラグラして歯肉が押されている…それらがとても多いです。
これらはコロナ騒動の後から見られています。
コロナという病気は平安時代頃から繰り返し流行してきた病気だということですので、このように急激に大きく時代を分けてしまったことは何であったのか・・・と、ふと考えてしまう今日この頃です。
歯はひとりでに治りませんので、小さな違和感をつかんでいただきたいと思います。
小さな治療で済めば、自分の歯を自分で守ることができるのです。
歯のダメージは最小限にすることが大切です。