噛めていないことも、噛めていないそれが病気だともたぶん思ってない
...と、ふとキッチンで洗い物をしていて浮かんだ。
18年前、開院した時は、虫歯の多いお子さん達がたくさん来院された。
小さなお子さん達、保育園の検診でも「C」が検診用紙に並んだ。
今は虫歯はかなり減っている。
一人っ子が増え、お子さん一人を概ね大事にケアされていることが想像できる。
歯並びの問題は以前よりあったが、その頃は生え変わりに問題を抱えているお子さんは少なかった。
今はどうなっているかというと、生え変わりが遅い、眉を潜めるものは、永久歯が歯槽骨の中に埋まったまま生え変わらない状況が多い。
そして、上顎、下顎の噛み合わせが悪い。
悪いということを通り越して、噛み合わさっていない。
そんな現状を見る。
これは自分が独自に見つめてきたことだが、3年ほど前から顕著に見られている。
乳歯の時代3歳から6歳のお子さん達にも見られているし、現在小学生の6歳から12歳にも見られている。
何が原因で起こっているのかは今調査中だが、
生活環境の変化ではないかと想像する。
そういうお子さん達の口の中の問題に親御さんは気付いているのだろうか?と思う。
親御さん達は知育には敏感だ。
挨拶ができなければいけない、文字が書けなければいけない、お稽古は何がいいだろう?
学校に上がれば宿題だ、塾だ...とそのうち偏差値が気になり...。
成績が上がる塾に入れたい、良い学校に入れたい、そういう思いの親御さん達は、子供さん達がご飯を噛めていないこと、噛む歯が足りていないことに気付いていないのではないかと思う。
学校以外のお稽古や塾に通い出すと時間が無くなり、ご飯は空腹を満たせば良いと二の次になりがちだからだ。
学校検診では「Cなし」の回答が多くなっているだろうから、予防については問題ないまま、歯の生え変わりなどは置き去りになってきたのだろう光景をよくみる。
学校検診では生え変わりは診れない。
恐らく噛み合わせを診る時間もない。
集団検診は1日に百何十人も診る昭和スタイルのままで...レントゲン診査はもちろんない。
噛む歯が足りず、噛み合わせが作れていないと何が生じるかというと、
噛むことで口に取り込まれた食材は小さくすり潰されて舌が咽頭から食道へ運ぶが、
小さくすり潰すことが出来ないまま丸飲みになっているということ。
そして、噛むことで見えない内臓のなかではあらゆる消化液が準備され始めるが、
これは噛む段階で始まっている。
したがって、胃腸を壊す原因にもなり得る。
脳はどうかというと、血流がよく巡るようになり、よく噛むことを行うほうが、よく記憶できるサポートをしていることがマウスの実験でわかっている。
簡単に言えばよく噛むことが、脳を活発にし、胃腸を健康に動かすということ。
食育というと、栄養素やマナー、文化の違い、食物の育ち方、などが一般的だろうが、
「噛む食育」が必要な時代に入っていることに注目してもらいたい。
噛むことが出来ないというのは、病気の入り口なのだ。
これは大人にも言えることなのだ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?