最近の映画のSNSキャンペーンをまとめてみた
個人的に最近映画館に行きにくくなった。コロナの影響もあるが、【家で「好きな」映画】を楽しむのもかなり楽しいことにあらためて気づいたことも大きい。
そんな人も多くなったと思う一方、映画の興行収入は、映画産業にとって重要なもの。
どう映画館に誘導するのか?そして映画体験を語る大きな場となっているSNS(とくにTwitter)では今後どんな変化が必要なのか?と思い、
映画のSNSアカウントがどんなことをしているのか?どんなキャンペーンをしているのか?コロナ前後を中心に少し調べてみた。
『ブラックウィドウ』(11月6日(金)公開)
当初は2020年5月1日だったが、11月6日に変更となった。
待望のマーベル、今回の主役はブラック・ウィドウ。公開日変更前に行ってたオートリプライを使った「ヒーローの日」にかけたキャンペーンは、プロモトレンドを使用し、話題化させることに成功。
公開の3カ月以上も前に行った理由としては、既存ファン以外へのタッチポイント創出だと考えられる。「エンドゲーム」後でのマーベルシリーズの超注目映画ということを早めに周知させることに成功したが、11月公開に変更となったため仕切り直しとなっている。
≪期間≫
1月16日 ※プロモトレンドを実施
≪フロー≫
①Twitter「アベンジャーズ公式アカウント」をフォロー
②対象投稿をRT
③リプライで届いた動画から暗号を拾う
④特設サイトで隠されたキーワードを入力
≪賞品≫
マーベルグッズ詰め合わせ
≪ポイント≫
・「ヒーローの日」という記念日=トレンド・話題化
・5月1日公開にも関わらず早めのキャンペーン=認知度の拡大
・プロモトレンド(記憶が正しければ…)=1日限定ではあるが効果の最大化
≪結果≫
・1.5万件のRT(50件の引用RT)
・オートリプライ動画は約7.7万回の再生
『TENET テネット』(9月18日(金)公開)
「ダークナイト」「インセプション」のクリストファー・ノーラン監督の最新作。映画ファンからが好きな監督と聞くと、必ず名前があがる。今回も驚異的な映像体験ということを核にプロモーションを展開。
印象としては【映像>ストーリー】。これが映画館に行く理由になるのか?コロナ状況下で人を動かすものになりえるのか…?公開が楽しみである。
①#TENET脱出ミッションキャンペーン
≪期間≫
8月14日~8月27日
≪フロー≫
①Twitter「テネット公式アカウント」をフォロー
②対象投稿をRT(期間中毎日投稿を実施し、1日1回参加可能)
③リプライで当選連絡
④はずれでもWチャンス
≪賞品≫
・メイキング本「メイキング・オブ・TENET テネット クリストファー・ノーランの制作現場(著者:ジェイムズ・モトラム)」 1名様
・『TENET テネット』劇場用ポスター 10名様
・『TENET テネット』ムビチケカード(1,500円) 10組20名様
・クリストファー・ノーラン監督6作品Blu-rayセット 3名様
・Amazonギフト券1,000円分 20名様
Wチャンス
・時間を見極めよう!Apple Watch Series 3 1名様
・脱出サバイバルに挑もう!ソロキャンプ用品5点セット 1名様
≪ポイント≫
・公開一カ月前というタイミングで「#TENET脱出ミッション」を最大化
・映画ライトファンに情報拡散
・WEBパブに合わせて映画情報の拡散(相乗効果でSNS上で話題化)
≪結果≫
・合計で約5万件のRT
②期待/感想を投稿してみんなで語ろう! #TENET脱出体験キャンペーン
≪期間≫
8月28日~10月18日
≪フロー≫
①Twitter「テネット公式アカウント」をフォロー
②#TENET脱出体験 をつけてツイート
≪商品≫
・「TENET」メイキングブック
・「TENET」劇場ポスター
・ドローン
・スマートスピーカー
・クロスワード問題集
・Amazonギフト券 1,000円分
≪ポイント≫
・映像が特別であり、劇場での体験が核となるため映画館で見た感想を広めることが重要。
・映画ファン同士のつながりをフルで活かし、映画好きな層での話題化を創出
≪結果≫
・実施中
キャンペーンとは別に、個人的に気になっているのがGACKTのコメントCM。とりあえず「映像がすごそう!」その一言で終始してしまう。GACKTとLiLiCoの公開記念LIVE配信イベントは18万人が視聴するという大きなものになったことから、注目作だということが分かるが、映像推しがどこまで動員につながるかは動向を見守りたい。
別軸でIMAX鑑賞ペア券プレゼントキャンペーンをFilmarksで実施したりなど、映像にまつわる展開を公式アカウント以外でも行っている。
公開1カ月前までには、認知を促進させるフォロー&RTのキャンペーンの実施、公開直前期からは期待・感想キャンペーンにすることで言及数を増やすという流れ。コアファンの熱量でTwitter上での話題化させる。
9月になるとGACKTを起用したCM展開でマスへのアプローチ、世情を鑑みたTwitterライブ。コロナ後の洋画超大作がどうなるのか?非常に気になるところだ。
『今日から俺は!!劇場版』
ドラマの再放送、キャストの番組出演含め、見ない日はないくらい公開前後で露出が多かった映画。興行収入は40億を超えた。
エンタメ系のWEBパブでの露出も非常に多く、公式SNSもTwitter、Instagram、LINEを展開。SNSではオフショット、ダンス動画など10代~20代前半向けのコンテンツが充実。サイトにもうまく収納されているのでついつい見てしまう。ターゲットに刺さる作りの徹底が見て取れる。
特にInstagramの展開が非常にうまく、キャスト・監督との距離感が感じられ、楽しそうな雰囲気がぷんぷんしてくる。自分がその場にいるような感覚で楽しめてしまう親近感。
そんな「今日俺」は感想キャンペーンを実施TwitterとInstagramで実施。
感想投稿キャンペーン
≪期間≫
7月17日~8月31日
≪フロー≫
Twitter・Instagram
①「今日から俺は!! 公式アカウント」をフォロー
②「#今日俺今日みた」をつけて感想を投稿
≪賞品≫
・映画オリジナルTシャツ
≪ポイント≫
・感想投稿を促進させ、該当ハッシュタグの言及数を最大化
・オリジナルTシャツというファン垂涎のプレゼントにすることで熱量高めのコメントを発生させる
・WEBサイトで投稿を紹介することで迷っている人に見させる動機作り
≪結果≫
・Twitter 6,477件(RT 5,038件)
・Instagram 427件
合計で7,000件程度、そのうち5,000件程度はRTと考えると純粋にキャンペーンへの参加件数は2,000件程度となる。「映画を観る」「感想を書く」という参加ハードルが高いので、2,000件の参加は多いと考えられる。
※感想キャンペーン投稿数の参考値
『キングダム』感想キャンペーン:合計6,536(RT 3,465)※Twitter
『ミッドサマー』感想キャンペーン:合計4,110件(RT 2,738)※Twitter
『映画ドラえもん のび太の新恐竜』(8月7日(金))
春休み映画として3月に公開を予定していたが、コロナの影響で8月7日に変更となった。現在の合計の興行収入は公開されていないが、公開4日で7億を超える好スタートとなった。
昨年末にはWEB・SNSで告知、オフラインで「君が発掘した新恐竜イラストコンテスト」を実施。(2019年11月22日~2020年1月9日)
様々な企業が参加したことで、幅広い親子層にリーチさせることに成功したと考えられる。店舗や博物館、児童向けの紙媒体を利用したオフライン中心の施策であった。
一方、映画が公開するとTwitter・Instagramでの感想キャンペーンがスタート。
感想投稿キャンペーン
≪期間≫
8月7日~9月22日
≪フロー≫
Twitter・Instagram
①「ドラえもん 公式アカウント」をフォロー
②「#映画ドラ2020感想」をつけて感想を投稿
≪賞品≫
・ドラえもん書籍
・アニア(フィギュア)
・声優のサイン入りポスター
≪ポイント≫
・感想投稿を促進させ、該当ハッシュタグの言及数を増加
・WEBサイトで投稿を紹介することで迷っている人に見させる動機作り
≪結果≫
・Twitter 1,539件(RT 990) ※9/6現在
・Instagram 69件 ※9/6現在
通常の実写映画よりも児童向けのアニメであるため、感想キャンペーンへの参加にはつながりにくい。親が子どものかわり投稿する以外に方法がないため、ハードルは高いのかもしれない。
『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』(11月20日(金)公開)
今年一番楽しみにしていた本作。監督がサム・メンデスからキャリー・ジョージ・フクナガ(『闇の列車、光の旅』)に変わったのでどうなるのか…?というのが気になるところ。
当初は4月10日に公開予定であったが、コロナの影響で半年遅れの11月20日(金)の公開となった。(サイトでOGP画像の設定がされてないのはファンとして歯がゆい)
現状ではキャンペーン等の実施は行っていない。公開延期になる前には短尺映像を中心にSNSを運用。過去作や、本作のアクションシーン・キャラクターフォーカスが中心になっている。
こちらも『TENET テネット』同様、非常に映像に力を入れた映画であり、IMAXについてのパブも3月に出ている。
11月20日の公開に向け、どうパブやSNS等で情報発信を行っていくのか?好きな作品なだけに気になるところ。
まとめ
「今日俺」「ドラえもん」は興行収入をある程度確保していることはすごいと思いつつ、大きな予算をもち、テレビ局がついている邦画やアニメである。
来週公開予定の「テネット」などの洋画が、どうライトな映画ファンを映画館に行かせる導線を作るのか?
ユーザーの投稿を活用した感想キャンペーンは引き続き効果があると思われる一方、「家で体験できない映画体験」はなにかを明確に発信していくことが必要になる。
「テネット」のような「#TENET脱出体験」などとすることだけでも、通常の感想とは一線を画す印象を受け、映画のイメージも「脱出」「体験」というワードから伝わるものもある。
映画の感想をただ発信させるよりも、「訴求ポイント」に触れさせ、うまく感想を誘導させ、見どころとなるポイントが拡散していくような設計が必要なんだろう。