一服しながら夜伽話
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moteの記事でお抹茶の話を読んでいたら、これがなんともいい設の写真と文章でした。
ふと、そういえばしばらく飲んでいなあと久しぶりに抹茶を購入して一服、美学を教わった陶芸家の茶碗を引っ張り出してきて悠久の世界に思いを馳せました。
陶芸家から聞いた話です。
その昔、師匠のところに内弟子に入った若かりし頃のこと
ある日、師匠を訪ねて文化人が何人かやってきます、その中にサムフランシスというピカソ亡き後、20世紀最大の抽象画家といわれ、海賊と呼ばれた男が最大のコレクターだったという人物もいました。
彼らは師匠の工房に入ると大皿に絵付けを始めます、他の文化人たちも遊び半分に制作に励みます。
師匠のところへはイサムノグチや魯山人も来ていたそうなので、その日も豪華なメンバーだったことでしょう。
数日間、泊まりがけで制作に励み窯焼きに入ります。
焼きあがって取り出してみると、発色が悪くサムフランシスの気に入る色ではありませんでした。
サムの色を出すには窯の温度が足りなかったのです、半世紀以上も前の窯では高温にできなかったのです。
あらまあ、残念と皆さん帰って行きました。
次の日、師匠は不完全な絵付皿を持って裏山に埋めに行きましたとさ。
さて私がこの話を聞いたのは2000年に入った頃、今では高温で焼ける窯も普通にあります。
「ねえ先生、半焼けの絵付け皿を掘り出して、今の窯で焼き直したらサムフランシスの色はでますよねえ」
「さすがだねえ、そうゆうことさ、皿は二、三十枚はあったな」
「先生は埋めた場所は知らないの?」
「心当たりは探ってみたがダメだったね」
と笑った。
サムフランシスの大作はサザビーズで10億で落札されたと聞く、絵皿は彼の作品には無い、完全な色が出たら一枚一億は下らないだろう。
時折山の中に眠るお宝の話を聞く、なんとも夢のあるお話ですね。