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400体の無縁仏を操る、女性住職に未来の行き方を聞きにいった

未来を見にゆく冒険 その2

20年以上前の話
私たちのような仕事をしていると、家相や風水のことで、さまざまな家相鑑定士、占術、易学の先生、神主様、お坊様を訪ねます。

お施主様は会社の代表、経営者、社会的地位の高い方、いわゆるアッパークラスの方々が多くみえます、自宅や社屋、店舗を手掛けるので自ずと家相や風水、見えない力を当たり前に使ってみえます。

成功者や大きな責任のある地位の方ほど見えない力を持つ人を訪ねる人が多くみえる気がします。ですから家や社屋の計画が決まると図面を持って一緒に先生にお伺いを立てにゆきます。

ある地方議員の家を設計した時の話です。ほぼほぼ基本計画が出来あがった時に、そこの娘さんと尼さんのお寺に図面を持って伺いました。
そこは都心から四十分程度の郊外にありました。農村風景を抜けたところにある閑静な住宅地の中の一軒です。お寺と聞いていたのですが古くからある和風住宅でした。

「こんにちは、お邪魔いたします」

彼女は慣れた様子でさっさと玄関から中へ入ってゆきます、後について入って行くとびっくり。

目の前に大仏様が現れた、2階の床を失くした部屋に4メートルを超える大仏様が私を見下ろしてみえた。

思わず手を合わせて南無阿弥陀仏と唱えた。

「よくいらっしゃいました」

奥から女性が現れた。

「先生、よろしくお願いします」
「よろしくお願いします…」

「あら、設計士さん、こんにちは」

先生は50代だろうか、ふくよかで優しそうだが、どこか凛とした強さが感じられる女性で、そしてどこか怪しさも感じ取れます。

先生は我々を部屋に案内して

「以前も東京の設計事務所の方が聞きに見えましたのよ、なんという事務所だったかしら、てんでダメだったので随分とご指導しましたのよ、2本の塔のような建物でね、大きかったのよ」と言われた。

「先生、その事務所は丹下事務所と言いませんでしたか?」
「そうそう、そんな名前よ」

東京都庁のことだ、丹下先生も風水を大切にするのだ、流石だ。

我々の設計はどう言われるのか心配であったが3点ほどの小さな訂正で素晴らしい家になると言われた。

まあ、自信はあったプランニングだ、ありがたいことだった。

その後、先生に聞いてみた。

「先生はどのようにして、未来を見るのですか?」

「私はね、子供の頃から目を閉じてお祈りをします、そうすると私は向こうの世界に行って童子になっています。入るときはそれは苦しい思いをします、向こうでは鬼のような大男がいて私はその大男と話すのです、そして未来やいろんなことを聞きます」

と言われた。

「大切なことを教えていただき、ありがとうございます」

「あなたはわかる人でしょ」と笑われた。

私はわかる人なのだろうか?

先生のところをお暇するときに、先生は娘さんに言われた。

「いつものところで、いつものようにお参りをしてくださいね」

私たちは先生の家から車で10分ほどのところへ向かった。そこにあったのはうずたかく積まれた400柱の墓石、30m四方にピラミッドのように積まれている。
無縁仏だそうだ。

驚いた初めて見た、彼女は慣れた仕草で鞄からポットを取り出すと右回りでピラミッドの四隅にお水を撒きながら手を合わせた、私も後をついて周り四隅で手を合わせた。

先生はさまざまな事情で縁がなくなり、手入れもされなくなったお墓をここへ引き取り供養をしています。その無縁仏の助けを受けて、頼ってくる人たちの願いを叶えてゆくそうです。

と娘さんが説明をしてくれた。

聞いただけでなんだか凄そうです。400もの霊魂が押し寄せ、それぞれの仕事をこなし瞬く間に願望を成就させるイメージが浮かんできました。しかし、本当にそんなことができるのだろうか。

設計は無事終わり工務店も決まり、工事に入るための地鎮祭が行われました、先生も来てくださり粛々と地鎮祭は執り行われます。

400体の無縁仏は来るのだろうかと、ぼーっと空を見ていると

「おーっ」と参列者の声がしました。

「みなさん、見ましたか。杖が踊りました、素晴らしい家になります」
と先生はおっしゃいました。

私は空を見ていて見逃した、とは言えず

「ありがとうございました」と頭を下げた。

先生は分厚いご祝儀袋を受け取って、お付きの人と帰って行かれました。

議員先生の家は無事完成し、先生のおっしゃられる通り素晴らしい家になりました。

そしてしばらくして、議員先生は議会の議長になりました、いわゆる地方大都市の市議会のトップということです。相当な権力ということになります。

議員先生は何年か前によその党から鞍替えして現政権の党に変わりました、上には何人もの先輩議員がみえます。そのお歴々を飛び越して議長になることは不可能です。

「議員になった以上、上を目指すのは当然。私は議長になりたい」
というお話は伺っていたのですが、それは無理だろうと思っていましたが、議員先生は議長になりました。

なぜかというと、その時に回し献金疑惑が日本全国で問題になりました、議員同士で献金をしあって税金逃れをするという小汚い行為です。
それに関わった議員は自粛して、役職を降りて謹慎することになりました。

議員先生は鞍替え議員なので回し献金の仲間にはしてもらえません、自分より上の議員が全て役職から降りて自粛となり議長が回ってきたのです。

そんなことがあり得るのだと驚くのと、400体の無縁仏の仕事の凄さにさらに驚きました。

娘さんに電話をして、お寺の先生にお願いしたのですか?と聞くと、

「そんなこと言えません。でもちょっと苦労しました」だって。

この世で人脈やコネを利用して仕事を進めてゆく人たちがいる、さらに一部の人たちはあの世の人脈も利用して仕事を進めてゆく、なんと働き者だろう。仕事が成功すれば、あの分厚いご祝儀袋もお安いことだろう。

それからしばらくして、お寺の先生から講演会の案内が来た、覗いてみると200人程の人たちが先生のお話を聞いていた。みんなそれなりの眼光が鋭い働き者だった。みなさんあの世の人脈が欲しい人たちだった。

さらに何年かすると議員先生の息子さんは国会銀になっていた。お寺の先生の力は偉大だった。

この話をガールフレンドにしたら

「なんでそんな人たちがあなたに設計を頼むか知ってる?あなたは運を呼び込む設計士なの、分かってないでしょ」

「酷い目にばっか遭ってるような気がするけど」

「あなたの創るものは運をよぶの、だからお医者さんや経営者が多い、あの世の力を利用したい人が多いの、分かってないでしょ」

「ちっとも分かってない気がする」

「それがなきゃ私もそばにいないよ、お嫁にして」

「えっ」

この頃、あの世とこの世が一つになろうとしています。それは20年も前から始まっていました。

次なる冒険はガールフレンドと波動を使うヒーラーを訪ねます。末期癌の人を何人も蘇生している不思議な宝石商の話です。

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