免疫住宅 80歳の女医先生のついの住処
二十年も昔のはなし
その頃けんちく家は寝る間も惜しんで仕事ばかりをしていました、家庭は無くなっていたので止めどなく仕事ができたのです。
もっと知ることがあったし、もっと極めないと、もっと進化しないとと思っていました。
でも、そのうち身体は悲鳴をあげます、十二指腸潰瘍と診断されて通院をしながらも仕事生活は変わりませんでした、そんな時代です。
下町の小さな医院はおばあさんの女医さんと看護師の娘さんと二人でやっていました。
行くたびにお腹をさわって、
「はいお薬です」
と言って手のひらにポンとお薬の袋を乗せてもらいます。
ある日
「あなたは建築家の先生でしょ、この設計図どう思う?」
と方眼紙に鉛筆で描かれた間取り図を見せて言われました。
「ああ、この土地の形なら、こうこうこんな感じで考えるといいですよ」
と鉛筆で方眼紙の上に書いてアドヴァイスをしました。
それから一週間後にお薬をもらいに行くと
「実はね、あなたが描いてくれたアドヴァイスがみょうに気になってしまってねえ。あなたが設計をしてくれないかしら」
とおっしゃられました。
「先にお願いした方がみえるので、後から来た私がお受けするわけにはいきません、アドヴァイスはしますのでいつでもおっしゃってください」
とお薬を貰って帰りました。
2〜3日して看護婦さんからお電話があり、ご相談したいことがあるので来院してくださいとのこと
「先の方にはキチンとお断りしました、先生に設計をお願いします」
と言われ、私が設計をすることになりました。
出来上がった平面図は最初のアドヴァイス通りのものです。
その土地にぴたりと合う建物は最初から決まっています、そこにあるべき建物は自然に決まっているのです、それを見つければ良いだけです。
ついの住処 最後の安住の地
80歳の先生は家を持つのは4軒目だそうです、これが最後の家になるでしょう。
さて、ついの住処、最後の家はどのようなコンセプトにいたしましょう
どうしてもついて回ることは 死 と向かい合うことです。
今までの家造りは、子供達の未来や今までして来たことへの賞賛、家族の幸せという、おめでたいことが前面に出ています、死は裏面に隠れていました。
さらに、以前は大家族で自宅でお葬式をする文化もありましたが、はるか昔となりました。
でも今回は裏面に隠れていた死を前面に出す計画になります、裏面が表になることで本当の家造りの意味が現れてきます。
枯れるように亡くなること、できれば自宅で
家から出なくても暮らしができること、できるだけ人と関わることなく
自分の内面と語り合い、自分の人生に満足する空間、いかなる人生であろうと
ついの住処はこんな感じでしょうか。
さてコンセプトを形にして行きましょう。
アプローチ
アプローチを進み木格子の門扉を開けると天井まである木の玄関扉です。
玄関を入り少し低い木の扉を開けると明るい中庭に出ます、
扉を開け放すと中庭まで一直線の風景が現れます。
このようなプランニングはそうそうありません、一直線で気持ちがいいアプローチです。
玄関
ほら外とガラッと変わる、帰るのが嬉しくなる玄関です。
床に敷いた白と茶色の石は、日本で一番ラジウムを含むといわれていて、これがあるとその場は安定した磁場になります。
例えば秋田の玉川温泉やゼロ磁場の分杭峠のような効果をつくりだして健康を維持する空間なります。(あくまで私見です)
健康で枯れるように亡くなる ためのひとつのアイテムです。
近年、石屋が八ヶ岳に出来たBill Gatesの別荘にも納品したとかしないとか、彼はこの頃ワクチンやら健康やらに大変興味を持っているようなので、私と同じような考えで同じ石を発注したかもしれません。
石屋曰く、他にも似たような石がたくさんあったそうです、たぶん日本中の健康になる石を集めたのでしょう、莫大な財を築いたら次は不老不死でしょうか。(あくまで私見ですが)
ぐるぐるねじれた木は何十年も木こりの倉庫で眠っていたものを分けてもらいました。自然は時としてすばらしいプレゼントをくれます。
こんな木は見たことがありません、まさしく自然が創る芸術、それが我々のために何十年も待っていてくれました。
そしてねじねじは右巻き、エネルギーベクトルに沿っています、マクロビ的にもいい巻き具合です。
自然にできたねじれが手すりにぴったり、年齢がゆくと玄関手すりはありがたい、それも自然のパワーを持ったものを毎日触ってパワーチャージできます。
ですからここでは、金属部品がほとんど現れないように配慮してあります、できるだけ自然のものに触れていられるように。
中庭
中庭の風景です、この写真をハワイのヒーラーに見せたら、
彼女はこの写真を胸に抱いてビューティフル、ビューティフル、ビューティフルと3回いいました。
「ここはとても波動が高く素晴らしい場所です」
彼女はクァンタムタッチというヒーリング療法のトップマスターです。気や磁場など目に見えないものも含めて健康空間をデザインしていたので、彼女のことばはとても嬉しかった。
ハワイは世界三大パワースポットを有する地域で、日本と同じように太古から自然と共に生きるHuna(フナ)という古代哲学があります、とてもホリステックな考え方です。それを建築に応用していたので、ハワイの美人ヒーラーに言われた時は私たちの造ってきたものは間違いではないと確信しました。
昔の日本建築は土地のエネルギーや浄化などにも気を使っていたけれど、戦後は経済と効率一辺倒で目に見えないものを大切にしなくなってしまいました、目に見えないものの方がはるかに多くて大切なのにね。
実態のない預金通帳の数字でお金持ちと信じるなら、土地の波動も同じくらい信じた方がマシな気がします。
中庭から階段を登って
中庭からは外階段を登って2階の屋上庭園へ行って洋室に入り、中階段を降りてリビングへ寝室も玄関へもどこでも行けます。
何なら家の中を1階から2階を廻って家内ウォーキングを楽しめます、外へ散歩に行かなくても運動できます。外よりも美しい風景を見ることもできます。
中庭のベンチで日向ぼっこもできます。
リヴィングダイニング
コンクリートと木は相性がいいんです。どちらも自然の材料だからね、使い方次第です。
もちろん床下には炭を敷き詰めて、磁場調整と湿気の調節がしてあります、見えないところの方が大切なことがあります。
いろりもテーブルもトチという美しい木で造ったら、とても喜ばれたました。
栃の木はひかり輝く美しい木理を持つ木材です、まるで100年前の光を光合成をする時に自分の中に蓄えたような木です、削った時に100年前の光がフワーッと解き放されたような輝きを放ちます。
美しいと思わず言ってしまいました。
機会がありましたら上質の栃をご覧ください、まるで木の宝石です。
障子はイタリアのステンド用ガラスを埋め込んで光を調節。
囲炉裏ばたですごす
椅子に座って使う囲炉裏、テーブルと同じ栃木で造りました。
新しい和風の家に似合います。
キッチン
キッチンからお風呂や物干し場、外庭にも行けます、バックヤードの拠点になります。
寝室
寝室は中庭からストレスなく光が入って、とても明るく気持ちのいい空間です。壁はもちろん塗壁で、匂いを分解したり、空気をきれいにしたり、遠赤外線を出したり、昔の日本建築の壁と一緒です。
洗面所とお風呂
トチの木で造ったオリジナル洗面台、見たことないでしょ、明るくてお気に入りの場所だそうです。
お風呂から裏庭に出て空を楽し無ことができるのとおっしゃってみえました。
お二人はここで暮らしはじめて、毎年行っていたお正月の旅行を取りやめたそうです。
理由を伺うと
「旅館で過ごすより、うちで過ごす方が快適ですから」
と言ってみえました。
ついの住処が出来て、しばらくして医院は閉められました。
90歳になったら洋裁を始めて、洋服をお友達にプレゼントされていると聞きました、病気もせずお元気にすごされているそうです。
もう100歳になられているはずですが、ご様子を聞くことがなくなってしまいましたが、何年かぶりに先生の家の前を通ると、夜も更けていましたが建物からは品の良い美しい光が漏れていました。
この家だったら自分のついの住処にしてもいいな
とニートなけんちく家は勝手につぶやく
でも先生も80過ぎで、この家を造るなんてすごい情熱だよね
情熱があれば幾つになっても老人ではない
という言葉を思い出しました。